News

2008年3月31日(月)

FTG『アルカナハート2』を制作したエクサムのさくらいとおる氏にインタビュー

 現在アミューズメント施設で稼働中の格闘ゲーム『アルカナハート2』の開発スタッフに、インタビューを行った。

 『アルカナハート2』は、登場キャラクターが全員女性であることが話題となった業務用FTG『アルカナハート』から1カ月後の世界を舞台にした作品。新規のキャラクターやアルカナが追加されている他、新システムも実装されている。
 今回インタビューしたのは、本作の企画・監修を行ったエクサム企画統括・さくらいとおる氏。開発にいたった経緯や、現在の心境などを語っていただいた。




――1作目の『アルカナハート』が稼働し、『アルカナハートFULL!』がリリースされて、PS2版が発売されるという経緯をたどってきたこのシリーズですが、『アルカナハート2』の開発が動き出したのはいつごろだったのでしょうか?

さくらい氏:去年の2月か3月ごろですね。『アルカナハートFULL!』の裏でこっそりと動いていました。でも僕としては、『アルカナハート2』に自分がかかわるとは思っていなかったんですよ。悠紀エンタープライズの格闘ゲーム開発チームは『アルカナハート』の開発終了時に解散していたので、仮に続編が出るとしたら自分の知らないところで「誰か別の人がやるんだろうなあ」くらいの気持ちでしたね。ところが何かの因果か、いつの間にか開発ラインに加わっていました。不思議なこともあるものですね(笑)。

――では、『アルカナハート2』の開発決定後はどこから手をつけたのでしょうか。キャラクターですか? システムですか?

さくらい氏:キャラクターを増やすことからスタートしました。最初は3人ぐらい増やしてシステムを足す、くらいに考えていたんですが、いろいろな人が「もうちょっと増やそう」と言うんですね(苦笑)。スケジュールを考えつつ、クオリティを上げることを考慮したら、あまり多くは増やせないんですが。そんな中でスタッフが一丸となって、6人の新キャラクターを登場させることとなりました。

――キャラクター数を決めて、その後にキャラクターの詳細を構想する方式ですか?

さくらい氏:そうですね。キャラクターの数を決めて、前作のキャラクターを踏まえながら、どんなキャラクターを増やすのかを検討しました。前回は「御苑女学園」を舞台にしていたので、日本人の子ばかりでした……まあ海外枠もいますが(笑)。だから、最初から外国人枠を増やそうと考えていました。世界観の拡張にもつながりますしね。
 次に、女の子のコスチュームの検討ですね。最近の流行を入れつつ、本作独自の設定である「聖霊庁」という設定を生かすために、こういう性格のキャラクター、こういう目的のキャラクターを入れたいというのを話して、それに合うコスチュームを決めていきました。
 あとは、前作でもそうだったのですが、なるべく「見た目でどういう格闘をするかわからせたい」というのが、古い格闘ゲームの作り手の理論でして(笑)。それらを踏まえ、スタッフ全員の意見を取り入れてキャラクターを固めていくのが、本作における「キャラクターの作り方」です。

――デザインする上で、苦労したキャラクターはいますか?

さくらい氏:今回は最初にしっかりコンセプトを決めてデザインをお願いしたので、デザインで難産だったキャラはいません。難産といえば“ドロシー”のコンセプトですね。“ペトラ”はお姫さまだからガーター。そしてお姫さまといえば縦ロールということで、すんなりいきました。むしろデザイナーからデザインが上がってきた時に、ドリルのような長い縦ロールに驚きました、「これを動かすのか?」って(一同笑)。“ゼニア”は、かっこいいキャラクターで行こうと。最初はガチ格闘キャラクターだったんですが、ある日から「パイルバンカー」がついていまして(笑)。“ペトラ”の二挺拳銃のようにそれで“ゼニア”の格闘スタイルが一目でわかる格闘ゲームの表現として正しい進化でしたから、担当デザイナーには感謝しています。

――“エルザ”と“クラリーチェ”はシスターのイメージですよね?

さくらい氏:そうですね。シスターはあまり大きくいじると「らしく」なくなるので、わりとストレートにしています。“キャサリン”も最初から“きら”を超えるデカキャラを作ろうというコンセプトでした。でも、女の子を大きくすると怖いから、デカいロボットに乗って戦うと。そして「ボクっ子」の“ドロシー”は悩みに悩んだのですが、卒業シーズンの時に並んでいる子どもたちを見て、キュロットスカートを履いた「ボクっ子」スタイルが固まりました。その後、格闘ゲーム的なギミックとしてマジシャンで設置型の必殺技を使うという形ができました。

――“エルザ”と“クラリーチェ”は、デザイン的に近いですし、設定でも絡みがありますが、コレは何か意図するところがあるのですか?

さくらい氏:世界観の演出的に、シスターが多いほうがいいかなと。確かに見た目は似ているんですが、かなり動きは違いますよ。“エルザ”はいわゆるエクソシストのような感じで、十字架や聖水、鞭を使って戦うスタイル。そして“クラリーチェ”は、昔“エルザ”と対立していた魔族にしようと。“リリカ”はハーフなので羽が小さいんですが、魔族の要素が濃いために羽を大きく描いていますし、耳の尖り方も鋭いです。"エルザ"と"クラリーチェ"が二人で並んでいるだけでそこにストーリーを感じてもらえればと思います。

――前作のエンディングで、キャラクターの成長が描かれていたと思うのですが、本作でも成長は見てとれますか?

さくらい氏:各キャラクターとも成長はしていますが、あまり出しすぎると、前作をやっていない人が置き去りになってしまうので、そこはやりすぎないように注意しています。

――「アルカナ」がキャラクターの数だけ増えていますが、制作上はキャラクターを作ってから、そのキャラクターに見合ったアルカナを足していくという手法ですか?

さくらい氏:ええ、アルカナは四苦八苦しましたねえ(苦笑)。みんなで「アルカナに使えそうな属性って何がある?」と会議をして、格闘ゲームとして表現しやすいものをピックアップしていくんですね。性能面で表現しやすいものと、グラフィックとして表現しやすいものがあるんですが、それらが候補として残ります。例を挙げますと、「磁」は性能的に想像しやすいし、「氷」はグラフィックとして表現しやすい。それ以外には、キャラクターに似合いそうなもの、例えば“ペトラ”には「聖」が似合うとか、そういう方向から決めるものもあります。

――「鏡のアルカナ」はてんとう虫ですね。これは、他の「アルカナ」とは違った印象を受けました。

さくらい氏:「鏡のアルカナ」をどう表現するか話していた時に「万華鏡がキレイだ」っていう意見が出たんですね。それで、昆虫が群を成してキラキラしているという設定にしました。基本的に、これまでの「アルカナ」は単体だったので、スタッフの間でも最初は入念に話し合いをしましたね。

――システムについてお聞きします。今回、「アルカナブラスト」、「アルカナホーミング」、「クリティカルハート」が追加されていますが、これらのシステムを考えた経緯について、それぞれ教えてください。

さくらい氏:前作にもガードキャンセルホーミングを軸とした防御システムはありますが、基本的に「攻撃が強い」ゲームなんですよ。本作でも、『アルカナハート』ならではのコンボを狙う意味は残したいが、コンボに入る前の駆け引きを増やしたい。防御側に切り返しの選択肢を増やしたい。切り返しに有効な必殺技を持っているキャラクター以外でも防御から攻撃に転じやすいシステムを追加したい。――と考えて生まれたのが「アルカナブラスト」です。付加されるパワーアップの要素も重要ですが、切り返しができることをメインにしていますね。そこから攻めに転じるときに「アルカナ」ごとのパワーアップ要素が生きてくると思います。

――「アルカナホーミング」は、前作にあった「ホーミングキャンセル」から発展させたものでしょうか?

さくらい氏:「ホーミングキャンセル」は、キャラクターが直接出した攻撃にしかキャンセルがかからなかったので、アルカナが使った技は「ホーミングキャンセル」できなかった。そこで、アルカナの技にホーミングをつけようと考えたのが、このシステムです。発表した当初「コンボがまた伸びてしまうのでは?」という意見もありましたが、実際に意図しているのはそこではなく、弾を撃ってその弾をホーミングして波状攻撃を仕掛けるような「立ち回りの幅を広げる」ためのシステムです。これを使うと前作とは根本的な立ち回りが変化すると思います。もちろん、コンボを伸ばすためにも使えますが(笑)。

――この「アルカナホーミング」で、前作にあった人気の組み合わせは変わるかもしれませんね。

さくらい氏:そうなると思います……と言うか、そうなってもらわないとせっかくの新システムの意味がないですよ(笑)。例えば前作では「安定」と言われていた「愛のアルカナ」は使いやすく、しかも強くなっていると思いますよ。

――「クリティカルハート」は、超必殺技の上という位置づけですね?

さくらい氏:そこは全員一緒ですが、キャラクターによって、一瞬で3ゲージ使うキャラクターもいれば、“舞織”や“美凰”のように1ゲージずつ消費する技もあります。他にも、いつでも出せるものや、特定のタイミングでしか出せなかったり、追加入力が必要だったりと、ちょっとクセはありますね。でも、「クリティカルハート」の威力は保証しますよ。
 「クリティカルハート」は攻撃の強化、「アルカナブラスト」は防御手段の強化、「アルカナホーミング」は立ち回りの強化です。格闘ゲームに必要な要素をまんべんなく強化しています。

――前作をプレイしている人に、新システムを使う上でのアドバイスをいただけますか?

さくらい氏:追い詰められて危ないと思ったら「アルカナブラスト」を早めに使ったほうがいいかもしれません。前作では守る側の選択肢は「ガードキャンセル」の→+Dか←+Dがあって、ダメージをくらった時に「アルカナフォース」を発動させるというものでしたが、そうなる前に使ったほうがいいかなと。「アルカナフォース」はゲージもなくなってしまいますし、「アルカナブラスト」も使えなくなってしまって、その後が不利になります。「アルカナフォース」はゲージがなくても発動できますから、その前に「アルカナブラスト」で1ゲージずつ消費して切り返しを狙っていったほうがいいですね。

――初心者のプレイヤーにオススメの組み合わせはありますか?

さくらい氏:「アルカナブラスト」という切り返しの手段が増えたために、防御に難があったアルカナもかなり使いやすくなっているので……今の時点でどれというのは難しいですが、普通に“はぁと”と「愛のアルカナ」を選んでおくのがいいと思います。彼女の「クリティカルハート」はすごく使いやすいですしね。

――こうして『アルカナハート2』が完成した今の状況を振り返ると、やりたかった要素はすべて入っていますか?

さくらい氏:プランナーとしての見解ですが、『アルカナハート2』ですべて入っていますね。前作では、足りなかったけど仕方ない、というものもあったので、今回はもらさず入れられてよかったです。それでも納得の範囲であって、満足しているわけではありません。

――『アルカナハート2』が稼働した直後に、次の展開を聞くのも気が早いかもしれませんが、今後『アルカナハート』がらみで、何か予定されていたりするのでしょうか?

さくらい氏:そうですね……何か楽しいことをやれたらいいですね。水面下で何か動いているようですが(笑)。

――移植が気になっているファンも多いと思うのですが。

さくらい氏:移植……できるのかな?(苦笑) 前作に比べて容量をはじめとしてハードスペックがかなり跳ね上がったという問題もありますから……。

――楽しみにしています!(笑) ではファンの方々へ、メッセージをお願いします。

さくらい氏:月なみですが、スタッフ一同本当に頑張って作ったので、多くの人に遊んでもらえたらうれしいです。

――少し話は変わりますが、今年は格闘ゲームが多くリリースされますね。

さくらい氏:格闘ゲームラッシュな時期にリリースすることになってしまいましたね。参ったなあと(笑)。長らく続編が多かった格闘ゲームに突然顔を出した『アルカナハート』が、大勢の方にプレイしていただけたおかげで、続編の開発・リリースにたどり着きました。次は格闘ゲームの1ジャンルとして確立できれば……と思います。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

――本日はありがとうございました。


「楽しんでもらえたら幸いです」と語っていたさくらい氏。同氏が手がけた『アルカナハート2』は、全国のアミューズメント施設で現在稼働中だ。


(C)EXAMU Inc.

データ

▼『アルカナハート2』
■メーカー:エクサム
■対応機種:AC
■ジャンル:FTG
■稼働時期:稼働中(2008年3月21日)
■関連記事
2008年3月20日
新システムをどっかーんと紹介だよ☆ ハートフル2DFTG『アルカナハート2』明日稼働
2008年3月15日
稼働直前の『アルカナハート2』新情報は魔界公女と悪魔っ子、そしてオカルトマニア♪
2008年3月8日
えええ~!! 稼働日が3月21日に決定!? 『アルカナハート2』キャラクター2人も紹介☆
2008年3月1日
『アルカナハート2』の新情報が公開だって! 今回は冴姫ちゃんとフィオナちゃんだよ♪
2008年2月23日
ボクのステージにようこそ! 『アルカナハート2』新キャラはマジシャンで怪盗だ☆
2008年2月21日
『アルカナハート2』のプロモーション映像を公開だよ☆ 週末にはロケテも開催だって♪
2008年2月15日
『アルカナハート2』の新キャラクターは露国出身にしてフリーランスの傭兵!?
2008年2月14日
『アルカナハート2』新情報が公開! 新キャラクターは美少女と巨大メカの組み合わせ!?
2007年10月17日
前作から1カ月後を描いた『アルカナハート2』今冬稼働! ストーリー&キャラを紹介

■関連サイト
『アルカナハート2』公式サイト
アルカナパーティー
エクサム