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『Battlestations: Midway(バトルステーションズ:ミッドウェイ)』兵器資料室:伊号第16潜水艦

伊-16

  戦争の勝敗は多数の戦艦を含む大艦隊同士による1回の大きな戦い、艦隊決戦で決まる。当時の日本海軍はこう考えていた。ならば、アメリカに比べて国力の劣る日本は、艦隊決戦が始まる前にアメリカ艦隊を痛めつけられるだけ痛めつければ、戦艦対戦艦の最終決戦を少しでも有利に進めることが可能となる。この構想の名を「暫減邀撃(ざんげんようげき)」という。アメリカと戦争になった場合にはこの「暫減邀撃」という構想に基づいて戦争を戦い抜くつもりだった。日本海軍の潜水艦は、この構想の中で、敵の動静を探る目としての役割と、アメリカ軍を痛めつける暫減の役目の2つを持つこととなった。

伊-16

 「伊号第16潜水艦」は、外洋での長期間の作戦行動が可能な大型潜水艦として建造されたものである。艦のタイプ名としては「伊16型」とも「巡潜丙型」とも呼ばれる。当時の潜水艦の潜水能力は、搭載された電池が持つ間はどうにか潜ることができる程度のものであり、基本的には浮上して水上を航行している時間のほうが長かった。そのため、このサイズの潜水艦でも浮上した状態での速力を重視した設計になっている。
  また、当初の計画では、艦隊の目という役割を果たすためのフロート付き水上偵察機が搭載される予定となっていた。しかし、諸般の事情により実際の建造時にはこれは取りやめになり、代わりに6門搭載予定だった魚雷発射管を2門増設して8門搭載している。
  艦首に魚雷発射管を集中して装備しているので、敵艦を襲撃する際により大きな攻撃力を発揮できる、船体が外洋の荒波のなかで運用されることを前提として設計されている、電池を充電する能力が高いなど、非常に優れた設計の潜水艦であった。

 しかし、「伊号第16潜水艦」は2人乗りの超小型潜水艦「甲標的」の母艦としての任務、各地への輸送任務を主に与えられ、戦争末期には人間魚雷「回天」の母艦として運用されるなど、能力を発揮する機会に恵まれないまま消耗していった。より大きな活躍の場が与えられなかったことが悔やまれる。