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電撃オンライン編集部がオススメするソフトを個性的なレビュアーがアツく語る!
タイトル the FEAR(ザ・フィアー) レビュアー 傭兵


この夏涼しくなりたかったら、ホラー映画なんか見てないでこれをやるべし!(3,522文字)

●エニックスがまたまたやった! やってくれました!
 PSの『ユーラシアエキスプレス殺人事件』、PS2の『0STORY(ラブストーリー)』と、実写ゲームを意欲的に出し続けているエニックスの実写ゲーム第3弾! それが、この『the FEAR(ザ・フィアー)』なのです。実写ゲームという聞くと、「どうせプレイヤーがほとんど何もすることがないインタラクティブムービーだろ!」とか思うゲームファンの人も多いと思われますが………このゲームは違います!

●実写がホラーAVGに新たな旋風を巻き起こすか?
 実写ゲームというと、売り出し中の美少女タレントを起用して、その話題性だけで売ろうとしていたのがこれまでの流れでした。しかし、エニックスはその流れを変えようとしています。そんな意気込みが彼らの作った作品からはビンビン感じられます。
 その流れは、実写AVGの第1弾『ユーラシアエキスプレス殺人事件』から感じることができました。あのゲームの場合、どうしても榎本加奈子チャンや深田恭子チャン、加藤あいチャンなど、出演者のほうに目が向いてしまいがちですが、ちゃんとして推理AVGとして楽しめるものになっています(高田淳次が出てたのも、ポイント高いですね)。ただ、容量の都合上なのか、展開がイマイチ淡白な感じが否めませんでしたけどね。
 そのあとに続く『0STORY』では、DVD-ROMの大容量を生かして、とにかく映像をぶち込んでいくという手法にチャレンジ! 選択肢ごとに映像が用意されていたり、画面がキレイだったりと、実写ゲームとしては革新的なタイトルだったのですが、PS2ユーザーは振り向いてくれず……。非常に惜しいタイトルでした。ゲーム好きな人にとって実写はダメなのか? やっぱり目が顔の1/3を占めていて、髪の毛が青色やピンク色じゃないとダメなのか? とか思っちゃいました(ちなみに、自分は2本とも買ってます。しかも発売日当日に)。
 そして続く第3弾の『the FEAR』は、『ユーラシア』と『0スト』で培ったノウハウを活かし、AVGとして遊べ、なおかつキレイで美しいビジュアルが豊富に用意されています。ゲームの基本的な流れは、ヒントを見てそこに示された場所に移動、そこで何らかの行動をして次の場所に進む、みたいな、オーソドックスなタイプのアドベンチャー。しかし、全編に実写を使用(館の中を移動するシーンがあるのですが、その移動画面も実写取り込み)。血まみれの人が出てくるわ、首チョンパはあるは、上半身と下半身が2つに分かれている分割死体(?)はあるはと、コンヒューマハードでよくここまで! と思えるくらいエグイ映像で恐怖を演出しています。いわゆる『バイオ』系の怖さと違って、まるでお化け屋敷を探索しているような、そんな気分にさせてくれるゲームです。やはり、CGよりも、実写のほうが説得力はありますよね。いろんな意味で。ホラーAVGの新しい路線を開拓したかな?と感じさせてくれる。そんなゲームに仕上がっています。

●アドベンチャーゲームとしての『the FEAR』
 上でも触れましたが、このゲームはオーソドックスなタイプのアドベンチャー。それも、かなりシンプルな作りになっています。
 アドベンチャーゲームというと、いろいろな場所をクリックしてアイテムなどを探したり、会話の選択で何かヒントを登場人物から聞き出すなど、謎解きの要素というものが非常に大きいです。しかし、このゲームはほとんどそういったものがありません。アイテムなどは目的のものを調べれば自動的に使ってくれるし、人との会話も基本的に相手から話しかけられる形式。たまに選択肢が出ても、「○」と「×」の2択で、それによるストーリーの分岐はありません。しかし、ヒント映像を基に次に進む場所を考えたり、館の部屋の中など、いろいろな場所を調べてアイテムを探すなど、アドベンチャーの基本は押さえているので、実際プレイしてみると、やっぱりアドベンチャーだなぁーと漠然と感じてしまいます。
 言い換えるなら、館の中を探索してさまざまなモノを調べられるアドベンチャー色のすごく強い『やるドラ』かな。ただ、あっちのようにちょっとしたことでバッドエンドになるようなシビアなところはないです(ただし、化け物に襲われるなど、ゲームオーバーになるシチュエーションは存在します)。
 ちなみに、移動シーンは『ミスト』や『クーロンズゲート』タイプの移動ポイントがあって、そこで行きたい方向に+キーを押すと自動的に次の移動ポイントに移動(その間移動中の映像が流れる)するタイプ。×ボタンを押しながら移動すると"走り"状態になるので(移動速度は通常の2倍くらい)快適にプレイできます。
 あと、会話の選択肢などがあるのですが、どう答えたかでちゃんと登場人物たちのリアクションが変化するので(もちろん、すべて映像で表現)、臨場感というか、ライブ感はバッチリです。あと、ミニゲームもちょっと入っているんですが、ゲームが単調にならないのでイイ感じです。ちょっと難易度が高めかなとも感じましたが……。まあ、2、3度プレイすれば慣れるでしょう。ゲーム全体の作りとしては、いわゆるコアなゲームファンやアドベンチャー好きにはちょっと物足りないと思いますが、ライトユーザーなら十分楽しめる作りになっていると思いますよ。
 このゲームですごく親切だな、と思ったのは、一度ゲームオーバーになる、もしくはセーブクリアしてそのデータをメモリーカードに記録すると、次のプレイから一度見たイベントは飛ばせるようになることです。ムービーなども飛ばせるので、2周目以降はサクッと物語を進めることができます。攻略で何度もプレイするゲームライターにとっては、非常にありがたい機能ですね。
 ちなみに、ゲームプレイ時間は、余計なことをしなければ1ゲーム4~5時間で終了。時間の少ない社会人にもピッタリです。

●登場人物たちも要チェック!
 今回登場する美少女タレントは全部で5人。ここで簡単にその女の子たちを紹介しましょう。
■上原まゆみチャン
2000年の日テレジェニックの1人。去年のTGSで配った「電撃ワンダースワン」の表紙を飾ってます
■加藤夏希チャン
新ロボコンのロビーナちゃん役です。ニュー「エコエコアザラク」の黒井ミサ役でも有名っすね。日本を代表するゴス系女優になりそうな予感。
■金田美香チャン
「3年B組金八先生」の最新作で学級委員役を演じてます。正統派美少女って感じ。女優業メインで仕事をしてます。
■野村恵里チャン
セブンイレブンのCMに出てる女の子。最近はバラエティ番組とかへの露出も多く、明るいキャラが受けてるみたいですね。
■福井裕佳梨チャン
やはり2000年の日テレジェニックの1人。声優としても活躍していて、「フリクリ」とか、「彼氏彼女の事情」など、ガイナックス系の作品に出演してました。

 と、これから注目の女の子たちが出演してます。今回演技が初めてって人もいましたが、結構がんばってます。演技がヘタヘタで笑えるってことはないと思いますよ。ほかにも宮川一郎太氏(現在、昼ドラでコンビニの店長役をやってます)や、長谷川初範氏(ウルトラマン80で主人公をやってます)、岩崎ひろみサン(NHKの朝ドラの主人公やってましたね)などなど、脇を固めるベテラン俳優陣も演技のうまい人がそろっているので、たかがゲームとはいえあなどれません。

●ぶっちゃけた話『the FEAR』ってどうなのよ
 最後に、個人的な印象を1つ。最近凄惨な事件が多いせいか、じっくり落ちている生首を調べられるとか、内臓が死体から飛び出しているとか、そういったモロな描写はないのが残念でした。ガキの頃から「死霊のはらわた」とか「13日の金曜日」とかホラー映画を愛好していた自分にとっては、恐怖シーンの演出はちょっと軽めに感じてしまいました。多分、ここがコンシューマハードの限界なんですね。でも、こういうのに免疫のない人とか、普通のホラー映画で怖がれる人なら、存分に恐怖を味わうことができると思います。
 また、けっこうビクッとするシチュエーションもあるので、夏の夜を涼しく過ごしたい人にはオススメ。あと、邦画ホラーファンにもピッタリだと思います。少なくとも「○路」よりかは面白いよ。「回○」は何が怖いのかわけわかんなかったもん。あと、PS2がDVDプレーヤーと化している人にもいいかな? すごく難しいわけではないので、初心者でも十分遊べると思います。究極なのが、DVD4枚組で7,800円! リーズナブル!! 
 邦画のダメダメホラー映画を見るよりは、こっちをやったほうがお得かも……。


(C)Digital Frontier Inc.・TAO COMMUNICATIONS CO.,LTD.・INATEC tri-Crescendo Inc.・ENIX 2001
レビュアー紹介
傭兵
 女性広報さんが担当しているタイトルには、全力で攻略する男。あわよくば女性広報さんまで攻略しようと目論んでいる。アイドルが出ているゲームには目がない。


●好きなソフト
『ドラクエ』シリーズ
『エコーナイト』