大人のためのエンターテイメント
「お姫様を助ける」「世界を救う」といった目的のゲームもいいですが、さすがに歳が30前後になってくると、あまりにも子供らしい設定に興ざめしてしまうところもあるわけで……。まず舞台が2005年12月の東京という現代劇になっているところに、かなり共感が持てました。プレイした人の中には同じように共感してくれている人も多いと思います。この辺りに関しては、「ゲームなんだから、SFやファンタジーもいいだろう」という意見の人もいるハズなので、賛否両論あるところだと思います。ただし物語で伝えたいことがある。そのためには、商業的に万人に受け入れられやすいSFやファンタジーではなく、現代劇でないといけない。だから、現代劇にしているというこだわりと英断には、とにかく大きな拍手を贈りたいです。
そんなメッセージ性の強い物語が『龍が如く』のキモなわけですが、クリアまでひと通りプレイして感じたのが、圧倒的なクオリティの高さ。物語に関してはぜひ自分の目で確かめてもらいたいので、一切具体的に語りませんが、とにかく既存のゲームにはない重厚で熱いドラマとだけ言っておきましょう。わかりやすい物語もいいですが、先の展開が簡単に読めてしまうと、やはりプレイのモチベーションが下がってしまいます。でも、『龍が如く』の場合はいい意味での裏切りの連続で(特に後半)、先が見たくて一気にクリアしてしまいました。プレイ時間は約20時間。これだけの間、モチベーションを維持させる物語の濃さは、かなりのパワーだと思います。既存のゲームとは物語の質の違いを見せつけられた感じです。ただ注意点が1つあります。劇中には難しい表現があったり、複雑な人間関係を把握する必要があったりしますが、それに対して、説明的なセリフが極力はぶかれています。そのため、ある程度の年齢以上でないと物語が読み取れず、十分に楽しめません。表現的な部分で18歳以上推奨となっているので、問題ありませんが、プレイするのなら、最低でも高校生以上。できれば20歳以上の人がいいでしょう。
●映画ではなくて、あくまでもゲーム
「物語を見せたいのなら、別にゲームじゃなくて本や映画でもいいんじゃない?」 そう考える人も中にはいると思います。私も分岐のほとんどないアドベンチャーゲームは、ゲームである必要はないんでは? なんてよく考えてます。『龍が如く』は、小説家の馳星周さんがシナリオに関わっていますが、執筆ではなく監修。シナリオ自体はゲームの開発陣が担当し、“ドラマとしておもしろいシナリオ”であり、さらに“ゲームとしてもおもしろい”ものを目指して書いたそうです。つまり、目指しているのはあくまでもゲーム。そのため、ただひたすらムービーで物語を追うのではなく、要所要所でバトルが挿入されるなど、適度にゲーム的な要素が盛り込まれています。しかも、ゲームとしてのテンポも踏まえてシナリオが書かれているため、物語とゲーム的な部分が非常にバランスがいいです。よく説明的なムービーを長々と見せられて、知らないうちに寝ていたなんて経験がよくあるんですが、そんなことはなかったです。この辺りのバランスの調整は、かなり苦労されたとの話ですが、さすがにゲームメーカーのセガといったところでしょう。
●1本のソフトとして楽しめる内容のバトル
バトルシーンもただとってつけたようなレベルのものや、時間稼ぎ的に入れたようなものではなく、かなりクオリティが高いです。開発には『バーチャファイター』や『パンツァードラグーン』シリーズ、『ジェットセットラジオ』シリーズを手掛けたチームが参加していると聞けば、ゲームファンならすぐ納得してもらえると思います。痛さを追求したというバトルシーンは、バトルというよりも喧嘩。スタイリッシュさはないけど、無骨で重みのあるバトルが楽しめます。若干視点がみづらい、敵を捕捉しづらい(いさぎよくロックオンなどのシステムの方がよかったのでは?)などの難点も正直ありますが、誰でも強くなった気分が味わえると思います。成長要素もあり、バトルなどで稼いだ経験値で強くできるのですが、最強になると、まさに「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」状態。相当気持ちいいです。また一定の条件で繰り出せる“ヒートアクション”も独特でおもしろい。いわゆる必殺技のような攻撃なのですが、壁に顔面を叩きつけたり、馬乗りになってパンチしまくったり、池に敵を投げ込んだり、ビールケースをかぶせてなぐったり、火のついたストーブに敵を座らせたり、そのバリエーションが豊富。特定の場所でしか出せないものもあり、それを探すのがかなり楽しいです。ちなみに、よくこういった必殺技的な攻撃は演出やエフェクトが派手なのはいいが、スキップできず、何度も見ているとかったるくなる……なんてことも多い。しかし、とにかく演出も短時間でテンポがよく、連発してもまったく苦になりません。この辺りもアクションゲームを多く手掛けているセガならではの配慮でしょう。バトルでは敵を倒したときにしか経験値は入らないが、ヒートアクションを決めると経験値が入るなど、ゲームシステム的にもうまく絡めている点もさすがといったところです。
●歓楽街を遊びつくすという楽しみ
本編は緊張感の連続で進みますが、息抜きも存在します。舞台となるのは、神室町(かむろちょう)と呼ばれる歓楽街。娯楽施設がいっぱいなわけです。クラブセガでUFOキャッチャーをしたり、バッティングセンターでホームランをかっ飛ばしたり、パチスロ屋でスリーセブンを狙ったり、いろいろな遊びができます。また秘密の情報を得ると行くことのできる、賭場やカジノといったアンダーグラウンドな施設も。サラシを巻いたツボ振り師やバニーガールがいたり、かなり怪しい雰囲気ムンムンです。あとキャバクラも2軒あり、女の子が口説けたりします。キャバクラは選択肢を選んでいき、女の子の好感度を上げていくといった恋愛アドベンチャー的なシステムになっているのですが、女の子を口説くというところでかなりリアルです。調子のいい選択肢ばかり選んでいても、なかなかうまくいかなくて、相当歯がゆい気分を味わいます。本編そっちのけで、キャバクラ通いなんて人もチラホラいるらしいのですよ。実際にキャバクラ行ったことのある人は、そのリアルさ。行ったことのない人は、社会勉強をしてみてはどうでしょうか?
あとそういった施設での遊び以外に、サブストーリーと呼ばれるちょっとしたイベントも随所に用意されています。基本的には一切見なくてもクリアできますが、これらを探すのが実に楽しいし、繁華街に暮らす人々の人間模様を見るのがおもろしいです。怪しい男から銃を買った。美人に誘われてついって行ったら、実は○○○だった。……などなど、興味深い内容のものばかりです。ちなみに初めてのプレイでは、半分見るのがやっとでしょうが、全部で約70近くあります。全部見ると、とんでもないことになりますよ。
●リアルさの本当の意味って何でしょう?
ゲームにおけるリアルさって何なんでしょうか? 言葉を置き換えれば、ゲームのどういった部分にリアルさを感じるかでもいいでしょう。その質問に対して、まず大半の人が「グラフィックがキレイだからリアル」と答えると思います。でも、それって本当のリアルさなんでしょうか? 私はゲーム暦も20年近くなる、いわゆる往年のゲームユーザーと言われる部類の人間です。ファミコンやメガドライブ時代には、グラフィックも今に比べればつたなく、オープニングの数分程度のアニメーションを「おぉ、すげぇー」なんて、感嘆な声を上げながら食い入るように見たものです。そういった時代では、グラフィックがキレイ=リアルさという方程式は十分なりたっていたと思います。ですが、実写とみまごうばかりのCG映像がふんだんにゲームに盛り込めるようになった昨今。もちろんグラフィックがキレイにこしたことはありませんが、グラフィックがキレイ=リアルというのは、もう古臭いんじゃないでしょうか。そう、ここ2~3年頃から感じてました。
そして『龍が如く』のキャッチコピーの1つは“リアルの意味はきっと変わる”。正直、最初に映像を見た発表会では、あまりピンときませんでした。ただ実際にゲームに触れてみて、そのキャッチコピーの意味がわかりました。それは歓楽街という独特の空気感や雰囲気だったり、街を行きかう人々の言葉遣いだったり、悲しみをこらえての笑顔、何かを懇願するような瞳などの登場人物の微妙な表情だったり、ひと言で「これがこうだからリアル」と語れるようなことではなく、あらゆる細かな要素が総合されて、このリアルさが生み出されているといった感じです。濃厚なドラマはもちろん、プレイして、とにかくこの未体験のリアルさを体感してもらいたいですね。
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レビュアー紹介
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いぐちじゅんや
メガドライブのソフト全タイトルを所有している、かなり偏ったゲームライター。そんなワケなので、トレジャーとかが大好き。なんか、見た目にも人とはちょっと違った変な人。
●好きなゲーム
『ジェットセットラジオ』シリーズ
『塊魂』
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龍が如く
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●機種:PS2
●メーカー:セガ
●ジャンル:A・AVG
●価格:7,140円(税込)
●発売日:2005年12月8日
●CERO年齢区分:18歳以上対象
(C)SEGA, 2005
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