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『スライ・クーパー』を開発したサカーパンチ社のクリエイター、ブライアン・フレミング&ブルース・オバーグ両氏が緊急来日! その情報をキャッチした我が電撃Online取材班は、さっそく発売元であるSCEに出向きインタビューを敢行! 2人が語る、本作の魅力とは?

●主人公・スライの誕生秘話
――:ついに日本版『スライ・クーパー』が発売されましたね。おめでとうございます!
ブライアン&ブルース:
ありがとうございます!
――:実際にプレイしてみて、アメリカンコミックの中で実際にプレイしているような印象を受けました。なんだか、アニメの中で遊んでいるみたい。
ブライアン:
そう言っていただけるとウレシイです。特に、DCコミック(※1)でマンガを描いていたデヴ(※2)というスタッフが聞いたら、きっと大喜びするなぁ。
――:主人公のスライはアライグマで、職業が怪盗。この設定がオモシロイですね。
ブライアン:
もともと悪役の中にアライグマを入れようと思っていたんですが、主人公の職業を怪盗にしようって決めたときに、アライグマこそ怪盗に合っているのでは? ということになったんです。
ブルース:さっきも名前が挙がったデヴが「このキャラクターでやったら面白いんじゃないか」と。それはなぜかというと……アライグマって目の周りに黒い模様が付いているじゃないですか。だから、「さぁ、これから盗みにいくぞ」というトコロで覆面を付けても、「おいおい、覆面を付けても付けなくてもお前、全然変わっていないじゃん」ってトコロがオモシロイからね(笑)!
ブライアン:内輪ウケのジョークとして彼がそれをやったら、スタッフのみんながすごく気に入って「それいいじゃん! ピッタリじゃん!!」ということになったワケです。
――:相棒やライバルも個性豊かですよね。聞くところによると、女刑事は、日本のアニメの影響を受けたとか?
ブルース:キャラクターの性格付けは私たちではなくて、企画の人間とメインのデザイナーたちがやったんですけどね。彼らは「このキャラクターはこうあるべきだ」みたいな話をずいぶん長いことやっていましたけど、机に向かってウンウン唸っているというよりは「あんなのはどうだ? こんなのはどうだ?」と楽しんでやっていたみたいですよ。何か特定のモノにインスパイアされたわけではなくて、ゲームのみならず、映画もそうだし、小説もそうだし。…さまざまな部分から影響を受けたというと"パクッた"みたいでアレですけど(笑)、様々なものから最終的にまとめて、煮込んで。最終的に出てきたものが、今回のキャラクターなんです。けっこう時間はかかっていますが、苦労したワケではなかったですよ。すごく楽しんでやったのがポイントですね(笑)


●プレイヤーの爽快感を第一に考えられたシステムから
  誕生した『スライ・クーパー』
――:スライのアクションが、この独特な世界観に上手く溶け込んでいますよね。まったく違和感がない!
ブライアン:我々は最初からアクションゲームを作ろうと決めていたんです。とはいえ、大勢の敵に向かって、プレイヤーキャラクターがデッカイ銃を持って撃ちまくるだけ、みたいな、アクションに必然性がないゲームは作りたくなかった。そこで、主人公を怪盗にすれば、イロイロなアクションに必然性が生まれてくるのではないか、と考えたのです。たとえば、「堅牢な場所に侵入しなきゃいけない」とか、ですね。目の前に巨大な刃物が回っていたりしても、その仕掛けは「侵入者を防ぐ」という目的があるから、世界観を壊すモノではないワケです。こうして、「怪盗が活躍する」という設定を踏まえた上で、どんどんアクションのアイデアが生まれてくる。こうして作っていったから、主人公のアクションは、ストーリーと整合性がとれているのです。
――:とにかくこのゲームは、「操作して面白い」というアクションのベーシックな部分がすごく強調されている久々の作品かな、と思いました。
ブルース:ありがとうございます! 一生懸命プログラムを組んだ甲斐があったよ(笑)。我々が目指していたモノは、「インビジビリティ=透明になる」ということでした。このゲームは60フレームで動いているのですが、操作したらすぐに反応があるように頑張りました。ボタンを押してからのギャップ、タイムラグを感じさせないように、最終的にはプログラムの存在をも感じさせないようにできたら、と。
ブライアン:キャラの動きには2つの側面があるんですよ。1つは"入力"に対して。例えば、スティックをすごく傾ければ走るし、ちょっとだけ傾ければ抜き足差し足みたいな、ね。ジャンプボタンを押す強さだとか、長さだとか、そういったものにダイレクトに反応する、と。2つめは、"リアクション"。ジャンプしたあとの着地、といったようなアクションがあるじゃないですか、ゲーム中では、ある程度操作が違っていても自動的に補正が働いて必ずそこに着地できるようになりますよね。「プレイヤーがこうやりたいんだな」ってわかっているときはシステム的に嘘をつかせて、一番プレイヤーにとって気持ちのよいリアクションを返してあげる。その嘘も含めて、全体的にキャラクターがコントロールしていて「気持ちいい」と感じてもらえるようにチューニングしています。このシステムは、ゲーム作成作業の中でも特に力を注いだ部分でした。
ブルース:プレイヤーが完全に360度自由に動かせるようにせず、ある程度道のりを決めています。そうすることで、「ここでプレイヤーにさせたいこと/学習させたいこと」という意図を途中に組み込めるんです。例えば、「フックに掴まる」というフィーチャーを最初に学ばせたいときは、フックがあってそれに掴まらないと先に進まないようにしておく、みたいなね。まぁ、掴まらないと、ちゃんと音声でヘルプが入ったりしますけど、まずは学習させる。だけど、学習させることをゲームにするのではなくて、それをプレイヤーに学習させたあとで、ジャンプとフックに掴まるタイミングを合わせるみたいな、そういう複合技を使って初めてゲームとしてプレイヤーに遊ばせよう、と考えていました。
――:アクションや怪盗アクションなどを、ボタン1つでできるトコロがまたイイですよね。
ブライアン:最初は「掴む」とか「隠れる」とか、全部違うボタンでやっていたんです。ちょっと話は前後しますが、「モンスターパニック」というステージで逃げるシーンがあるじゃないですか。最初は「△=掴む」で「○=レールウォーク」、「×=ジャンプ」…ってやっていたら、誰もプレイできなくなったんです(笑)。そういう経緯もありまして、ボタン1個にしたんですけど、結果的にはそれが非常によかったと思いますよ。誰もが遊べるようになったんでね。とはいえ、実際ボタンを1つにするまでには、かなり苦労したワケなんだけど(笑)。


●「怪盗」という設定にもこだわりアリ!
――:そういえば、スライは飛び道具を持っていませんよね。主人公が飛び道具を持っていないって、最近のゲームとしては風変わりでオモシロイと思いました。「スライはここで、直接攻撃をどう仕掛けるんだろう?」なんて考えながらプレイするのもまた楽しいんです。
ブライアン:企画段階では銃のような飛び道具を持たせることも考えていました。でも「いかに華麗に盗み出すか」っていうことが、主人公のキャラクターの重要な部分であるので…。そうすると、デッカイ銃でバリバリやるのって、このゲームのスタイルには反するのではないか、と。例として、映画「スターウォーズ」のなかではみんなブラスターを持っているけど、ライトセイバーはジェダイ騎士じゃないと持てない、みたいな。剣術1つをとってもやっぱり、あの剣術そのものが映画のなかでも重要なエレガンスを見せる部分だと思うんです。ですから、怪盗というキャラクターを考えたら、飛び道具でバリバリ進むよりかは異なる種類の敵に対して、うまく直接攻撃を狙うほうが楽しいのでは、と思いまして。
ブルース:ご存知の通り、どのキャラもアイドリングアニメーション(=放っておくと勝手に行う、いろいろな動き)を見せるじゃないですか。当然、それぞれのキャラクターが違う攻撃方法を持っていたりして、敵にもそれなりの個性を持たせているんです。そんな敵を銃で遠くから倒しちゃったら、もったいない。せっかく作ったんだから、たくさん見てよって(笑)。やっぱり、クリエイターとしては、遠くでアッサリと片付けられちゃうと寂しいですよ。ね、ブライアン?
――:(笑)そういえば、スライを倒した敵のリアクションもキャラごとにすごく作り込んでありますよね。そういうリアクションも、敵をすぐに倒して先に進んで行っちゃった人にはわからないでしょうね。もったいない!
ブライアン:基本的には「キャラクターがやられる」ことは、プレイヤーにとってストレスに感じるじゃないですか。だから、そういったユーモラスなものを入れることによって、プレイヤーがあまりイライラしないでニコッとしてくれればいいかなぁ、と。とにかくアニメーター達がすごくがんばってくれたんです。彼らのクリエイティビティ、オリジナリティを発揮する絶好の場ですしね。ちょっと間抜けなダンスをするキャラだったり、ちょっと頭の悪そうなキャラには、スライを倒したことを理解できないで「あれ? なんでだ? なんでだ?」みたいなリアクションをさせたりとか。このキャラだったら、こういう行動をするだろうというものをアニメーターなりに考えて、どんどんつけていく。こうして、たくさんのバリエーションが生まれたんです。

●ステージの構成も『スライ・クーパー』の隠れた魅力の1つ
――:ステージの構成が面白いのも、このゲームの魅力ですよね。例えば、スタート直後にゴールが横に見えているステージとか、高いところに登ると苦労して通ったルートが見えるステージとか。ズバリ、お気に入りのステージはどこですか?
ブライアン:好きな場所はいろいろあるけど、思い出も含めて一番好きな場所は、最初のステージで坂を上っていくと飛行船が見えるシーンかな。そこにたどり着くまでは、どんなステージなのかわからずにただ移動しているだけなのに、あそこで初めて「これから自分が攻めるステージはココか!」ってはっきりステージの全貌がわかる演出になっているんです。あの船のモデルももちろん、演出も含めて一番好きです。
ブルース:ボクは、ワールド1のなかの「ウォーキングバレル」っていう図書館のステージかな。樽のなかに入ってテケテケテケテケ…って歩いて進んだりといった、樽の見た目がひょうきんでイイんだよね。でもそれよりも、カメラを演出的に使うという意味で様々な工夫が凝らされている点が気に入っています。特定の本棚の上に乗るとカメラがガァーッと上がって、「そこからジャンプしてその下にいるガードをブン殴ればいい」って示唆してくれる、みたいな。


●プレイを妨げないこだわりのカメラワーク
――:今、話に出たカメラワークなんですが、いろいろとアクションゲームをやってきたなかでもプレイを妨げない工夫がすごいですね。
ブライアン:先程、一番苦労した点・力を注いだ点はキャラクターの動きだと言いましたが、次に苦労したのがカメラワークだったんです。とくに「このゲームを参考に」というのは無かったんですが、たくさんのゲームをプレイして「ここが見たいのに」と思ったり、カメラの動きのせいでちょっと3D酔いになったりするじゃないですか。そういうものをたくさん経験していたので、我々のゲームではそんな風にならないよう努力しました。プレイヤーが気付きそうにない方向に重要なモノがあった場合、それを映そうとすることがあるんですけど、カメラの動きをプレイヤーに気付かせず、ストレスを感じずにゲームをプレイしてくれることができたら…。さっきも言ったように「インビジブル=透明」であることができたら、…そう思って作りました。
ブルース:カメラをどう動かすか。それはただ単に技術的に大変だったのではなくて、ゲームデザイナーとステージ構成を密接に、一緒にやらないとここまではできなかったと思っています。
――:日本のユーザーって、ほかの国に比べて3D酔いに対する許容量が低いというか、酔いやすいって部分がありますよね。
ブライアン:そうなんですよね。日本語版のディレクターであるSCEの長谷川氏から「日本人はすごいカメラに酔いやすいんで、激しい動きとか、プレイヤーの予期しない動きは止めてくれ」みたいな話をずいぶん聞かされていましたよ。だからカメラ酔いに関しては日本もそうですし、アメリカ、ヨーロッパのSCE側のディレクターと綿密な話し合いをして、注意深くチューニングをしました。
ブルース:カメラの話もそうですが、ライティングや光源にもこだわっているんですよ。テクテク歩いていてもちょっと暗くなったり、すごく明るくなったり、またすぐに暗くなったり、みたいな。キャラに光が当たる量も、ただ単に廊下を歩いているだけでも変わったりとか、様々な視覚的エフェクトも追加されているんです。それらエフェクトは、「こういうシチュエーションを描きたい」というCGアーティストのリクエストを受けて、誰でもコントロールできるカメラ制御プログラム「ビューティーショット」を作ったプログラマーのおかげでできたといっても過言ではありません。この「ビューティーショット」は、見た目にバーンとすごいものを見せる、かっこいいものを見せることができるというものです。これによって、例えば、つららが落ちてくる場面では、いきなりカメラがグワッと下がって、上から落ちてくる様子を捉えるとか、すごく高い場所に移動するとカメラが上がって、自分が今どれだけ高いところにいるかを演出できるようになったんです。このプログラムを作るのに相当苦労しましたが、おかげで視覚的な演出のとても楽しいゲームになったと思います。


●遊び心満載のおまけモードつき
――:タイムアタックモードをクリアすると、そのあとに開発者の苦労話が聞けますよね。これまた変わった試みですね。今はそれをBGMにしながらプレイしているんですけれど(笑)。
ブライアン:映画のDVDソフトの特典の中に、よくこういった開発者のこぼれ話みたいな解説が入っているじゃないですか。そんな解説をゲームでも入れてもいいんじゃない? ということで。プレイヤーに受けるかどうか心配でしたけれど…。
――:それは大丈夫だと思います。ここに1人、大ファンがいますから(笑)。そういう話を聞きながらプレイしたほうが、新しい発見があって良かったですよ!
ブライアン&ブルース:(笑)

●世界中に羽ばたく『スライ・クーパー』
――:このゲームのファンとしては続編が気になるんですが、設定上、このまま次回作へ移行するのは難しいと思うんですけど…。
ブライアン:そうかもしれませんねぇ。でも、とりあえず今の段階では開発を終えて、とてもハッピーなところなので、あまり続編のことは考えないようにしています(笑)。そういえば2カ月前、3週間ほど休暇で南極に行っちゃいましたよ(笑)。
ブルース:実は『スライ・クーパー』って、全部で7カ国語別のバージョンがあるんです。ヨーロッパとアメリカ、日本と韓国が出てるんですけど。もちろん韓国版は全部ハングルですし、そういったフォントを表示するプログラムを7カ国やっただけでもういっぱいいっぱいだったので、今はもう終わってよかったとしか言いようがないです。ですから続編の話は、今度来たときにお話ししますよ(笑)
ブライアン:ちなみに、ヨーロッパ版の『スライ・クーパー』をプレイすると面白いですよ。カルマリータがフランス語をしゃべっているのを聞くと「おぉー」って思うし。クロックベルクっていうラスボスがドイツ語だとバッチリハマるんですよ。めちゃめちゃ悪く聞こえるんですよ。なので、ファンの方には、ぜひヨーロッパ版も買って遊んでいただきたいな、と(笑)。
――:ぜひやってみたい! …でもその前に、日本語版をクリアしないと。まだプレイされていない方は、ゴールデンウィーク中にぜひぜひ! といったところで、このインタビューをシメたいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました!

ブライアン・フレミング
(Brian Fleming)
ブライアン・フレミング 氏
サカーパンチ社取締役で、共同設立者の1人。
大学では物理学を専攻。卒業後はマイクロソフト社に入り、ウインドウズの開発、MSメール、初期のインターネット関連プロジェクトなどに携わる。10年間勤めたあと、ブルースともう1人を加えた3人でサカーパンチ社を設立し、現在に至る。
ウイリアムズ社が1982年に業務用でリリースした「Robotron 2048」というゲームをこよなく愛している。このゲームもレバーを2本使って遊ぶタイプのもので、『スライ・クーパー』のなかに出てくる「左スティックで移動、右スティックで攻撃」という操作は、このゲームを参考にされている。

ブルース・オバーグ
(Bruce Oberg)
ブルース・オバーグ 氏
サカーパンチ社共同設立者の1人であり、数学とコンピュータサイエンスの学位を持つ。『スライ・クーパ―』ではメインプログラマーを務めている。ベル研究所で4年間、通信技術者として働き、その後マイクロソフト社に移籍。マック用MSメールの開発に3年間携わり、ブライアンとはこのときに知り合った。さらにMSワードのプログラマーとして5年間働いていたおかげで、あらゆる言語の仕組みに関する造詣に深く、『スライ・クーパー』の日本語化が決定したときは、頼んでもいないのにテキストウインドウを縦書きで表示する準備までしていたらしい。


怪盗スライクーパー
画面写真
■メーカー:SCE
■対応機種:PS2
■発売日:2003年3月6日
■価格:5,800円
■関連リンク:SCE
(C)Sony Computer Entertainment America Inc.
Developed by Sucker Punch productions, LLC.

※1:長い歴史を持つ、アメリカの最もポピュラーなコミック誌。スーパーマ
ンやスパイダーマンなどもここから生まれた。
※2:「ムービー鑑賞モード」
の「スタッフ・インタビュー」にも出演している、デヴ・マダーン氏のこと。
残念ながら、今回のインタビューには不参加だった。


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