●音と光を操作する3Dシューティング?
水口:そんな時期にたまたまスイスへ行って40万人の若者が参加する音楽の祭典を目撃したんです。集まった人たちが、ハウスとかテクノの音楽を聴きながら踊り狂っているんですよ。40万人が一同に集まるカルチャーなんて知らなかったから、すごく驚きましたね。それに、彼らは照明や光にもすごく凝るんです。それが音楽にあわせて一緒になって動いている光景を見て、自分の構想しているゲームにミートするような気がした。もし、自分がプレイヤーになって、この音や光を操作できたら、気持ちがいいかもしれないと思ったんですよ。
それで、漠然とゲームのイメージを描き始めることになるんですが、そんなときに友人のミュージシャンがたまたまアフリカで撮影してきたビデオを見せてもらう機会があったんです。道端で何人かが酒を飲んでいて、突然盛り上がって大合唱になるんですけど、最初は手拍子だけだったのが、しだいに歌が入ってきて、最後には立ち上がって踊り始める人まで出てくる。でも、こういう光景というのは、国境も世代も越えて、いろいろな場所でいろいろな時代に見られるよな、って気づいたんですよ。日本の祭でも和太鼓のリズムにあわせてみんなが踊るわけですし。グルーヴ感というか、これをゲームにすればいいんじゃないかって思ったんですよね。
――では、いざプロジェクトを発足させようというときに、水口さんからゲームのイメージをスタッフにはどのように伝えたんですか?
水口:まず2人のスタッフを集めて、彼らに説明したのは「すべてのものに音と動きと光があって、自分がうまくプレイすると音楽が構成され、同時に映像のエフェクトも世界を構築していく。そういうシューティングゲームがあったら気持ちいいと思わない?」ということでした。
――そのときのスタッフの反応は?
水口:「それはおもしろそうですね」って。だから、僕も「じゃあ、やってみる?」とか言って。「やりましょうよ」「やろうか!」となったんだけど、どうやっていいのかわからなくて(笑)。しばらくは、少数のスタッフでプログラムをつくっては「あーじゃない」「こーじゃないよね」という試行錯誤を繰り返していましたね。そのときには、グラフィックと音の装飾を禁止して、どうすれば純粋にゲームとしておもしろくなるのかを何よりも探っていました。ちょうど「スーパーテレビ」(※4)で放映されたのがこの時期ですね。
今までのシューティングだったら、単純にエネミーをどう出現させるかを考えればいいだけですが、このゲームには音と光で気持ちよさを構成していくという別の仕掛けが入っているわけです。そのプログラムを完成させるのに、じつは膨大な時間がかかっているんですよ。ゲームを構成するのに不可欠な要素が何か常に足りない状態か、思いっきり何かを勘違いしている状態がお互いに続いたりして、なかなか思うようにいかなかった。それでも、少しずつつくっては壊し、つくっては壊しの連続で完成度を高めていくしかなかったんです。自分が求めている気持ちよさの感覚が、なかなかスタッフに通じなかったということも原因のひとつなんですが、その感覚というのは言葉で伝えられるものではないですからね。スタッフとニューヨークにミュージカルを見に行ったり、佐渡島まで太鼓の演奏を聞きに行ったりとかして、お互いに何とか理解しようとしていました。
――挫折しそうになったことはなかったんですか?
水口:ないと言えばウソになるかもしれませんが、あきらめなければと絶対にいいものができると思っていました。まだ完成してはいませんが、正直よくここまで来たな、と思います。言葉にできない感覚をゲームとしてデザインしていくのはしんどいことだとわかっているんだけど、誰もが一度はトライしたいと思うはずなんですよね。クリエイターだったら。
●PSユーザーについて
――『セガラリー』(※5)で初めてドリフトってどういう感覚なのか、ずるずる引っ張られる感覚が気持ちいい、ということを知った人は多いと思うんですよ。でも、その感覚を言葉で伝えるのは難しいかもしれませんね。
水口:『セガラリー』で僕や佐々木(※6)がこだわったのは、女の子でもドリフトが楽しめるゲームをつくろうという一点だけだったんですよ。でも、ドリフトがただオマケ要素でしかないというのではダメで、ドリフトを使うことで1秒でも早く走れるようなシステムを構築すればいいと考えたのが『セガラリー』だったんです。『Rez』をつくったのは、もちろん自分がすごくやりたかったというのもあるんですけど、ゲームを本当に愛してた人というか、「ゲームは好きなんだけど最近のゲームはちょっと……」と思っているユーザーのことがすごく頭にあるんです。ゲームから離れそうになっている人にぜひやってもらいたい。
――水口さんのPSに対するイメージは?
水口:僕は、すごく好きですよ。今まで会ったソニーの方たちというのは人間的にもすばらしいし、意志の疎通がうまくいっていますから。PSユーザーに対しても、いいイメージを抱いてます。つまんないことをやったら徹底的に無視されそうだけど、おもしろいことをやったらすごくいい反応をしてくれるんじゃないかと。だから、『Rez』にはハマってくれるんじゃないかって期待してるんですけどね(笑)。ただ、僕はDCユーザーに限らず、PSユーザーを含めたカジュアルなユーザーをいかに呼び込んでいくかということを考えてゲームを制作しています。その流れで『スペースチャンネル5』(※7)をつくったりもしましたが、それは『Rez』でも同じことなんです。だから、PS2でやることに違和感はないんですよ。そういうタイプのユーザーたちを見ながら、ゲームをつくってきたわけだから。
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| 脚注 |
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(※4)2001年2月12日に日本テレビ系列で放映された「スーパーテレビ情報最前線 激震!TVゲーム界一兆円産業の舞台裏」という番組。『Rez』の開発スタッフたちが試行錯誤を繰り返し、ひたむきな情熱によって新しいゲームを完成させていく過程がドキュメンタリータッチで描かれた。もちろん『Rez』開発初期の貴重な映像の数々も見ることができる。
(※5)『セガラリー・チャンピオンシップ』(1994年/セガ)。ラリーにおけるドリフトの感覚を初めて再現したアーケード用レースゲーム。初級、中級、上級、超上級という全4コースを疾走する。CELICA
GT-FOUR ST185をモチーフにしたカストロールカラーの筐体も秀逸だった。余談だが、チャンピオンシップモードを選び、ミッション選択時にギアを1→2→3→4と入れるとエキスパートモードになる。
(※6)佐々木健仁氏。1994年セガ入社。第三AM研究開発部に配属され、水口氏とともに『セガラリー・チャンピオンシップ』を制作。以後も水口氏とともに、1996年『セガ・ツーリングカー・チャンピオンシップ』、1998年『セガラリー2』をリリースする。AM研究開発本部分室、第十二AM研究開発部、第五ソフト研究開発部を経て、2000年セガ分社化とともに、株式会社セガ・ロッソの代表に就任。
(※7)時は25世紀、宇宙放送局の新人リポーターである「うらら」を操作して、地球に侵略した「モロ星人」という宇宙人と「踊り」で戦うことになるリズム&アクションゲーム。モロ星人によって恥ずかしい踊りをさせられた地球人を解放し、そして解放した地球人を音楽でノリノリに引き連れつつ、その侵略の秘密を暴きながらニュースとしてレポートしていくという独特のノリが、多くのユーザーのツボを刺激した。
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