●あの推理AVGの名作『神宮寺三郎』が、復活!
――:推理AVG『クロス探偵物語(以下、クロス)』を作ったメーカー=ワークジャム! そんな図式がユーザーのアタマの中に――少なくともワタシの中には――しっかり叩き込まれている昨今、ついに先日、ワークジャムさんが新作を発売いたしました! しかし! 『クロス』じゃなかった!!
神長氏:声、デカイっすよ(笑)。
――:スミマセン。でも、マジ驚いているんです。推理AVGは推理AVGだけど、『神宮寺三郎』シリーズの最新作とは、誰も予想だにできなかったハズですよ。
神長氏:お! 今日は『神宮寺』の取材ですね? つい先日まで『ドリフトチャンプ』のマスターアップに大忙しだったから、『神宮寺』のコトあんまり覚えてないかも。なんて(笑)。
――:2ラインがほぼ同時進行だったってコトですか。
神長氏:まぁ『神宮寺』はもうずいぶん前に出来上がってましたからね。今は、開発チームのメンバーも休みを取っていますよ。
――:あれ、じゃあ神長さんは今、何を……?
神長氏:自宅がリフォーム中だからしようがなく出社……じゃなくて(笑)、次回作『クロス2』のシナリオを執筆中で。
――:おぉ! すでに動き出してるんですね。
神長氏:まあ、そうなんですけどね。でも、トリックとかいろいろあるから。構想があれば書ける、というわけでもないんですよ。というか、トリックが一番時間がかかるので、まあ、何というか……トリックのネタちょうだい、みたいな(笑)。
――:ワタシが考えつくようなトリックっていったら「たぬき」とか「せんぬき」とかしかナイんですけど。…これってナゾナゾか。
神長氏:探偵モノを連続でやっていると、そこが一番タイヘンかもしれませんね。
――:そんなタイヘンな探偵モノをシリーズ2作も作るというのには驚かされます。いったい何故『神宮寺』を作るようになったのでしょうか? そもそも神長さんと『神宮寺』の出会いは?
神長氏:ボクにはゲームファンの弟がいて、そこに『神宮寺』があって。で、プレイさせてもらったのが最初ですね。もう15年も前になるのかな。とにかく『神宮寺』は取扱説明書の印象が強く残ってて。で、この間、実家を探してみたら見つかったんですよね〜。開くと神宮寺が自分のことを自己紹介しているみたいな感じで書かれていて「俺? 神宮寺三郎」って始まるんですよ。それから、新宿でどうのこうのって続くんだけど、「俺の街で悪さする奴は許せねぇ!」みたいなノリで、「もしキミが犯人ならぶっ飛ばしてしまうかも知れないぜ」みたいなことを書いているんですよ(笑)。「神宮寺って最初はこんなキャラだったのか」とか思って。ほかにも住み着いた猫を撫でている絵とかがあったりしてね。「好きなタバコはマルボロ、酒はカミュ」ってキャラが立っているのも印象的だった。あとは〜、あれを自力で解いた、というのもけっこう自慢だったりするし。だから『クロス』の1話にもね、黒須健のイメージする探偵は神宮寺、とかあったりするんですよね。で、データイーストの西山英一さんに会ったときも「実はこういうシーンがあるんですけどいいですか?」って許可をいただいたりもして。そんなこともあって『神宮寺』は好きでしたね。もちろん、まさか自分が書くことになるとは思ってもいなかったけど。
――:西山さんと言いますと、以前『神宮寺』シリーズを手掛けていた方ですよね?
神長氏:そうそう。そもそも西山さんとは、某誌で主催したAVGのクリエイター座談会でお会いしたことがあって、知り合いだったんです。で、データイーストさんがああいう形になって、どうしたのかなあ、とか思っていたある日、データイーストのHPで、『神宮寺』を作りませんか、みたいなことが載っていたので、とりあえず話だけでもしてみようと思って。データイーストまで何度か足を運んだんですけど、まあ、あちらもウチのことはご存じだったようで、「良質のAVGを作れる会社」だとご理解をいただき、「ワークジャムにだったら、『神宮寺』の権利を譲ってもいいよ」ということになったんです。
――:それはいつ頃のお話です?
神長氏:2年くらい前かな? とはいえ、やっぱり『神宮寺』を開発した経験者がいないと、これまでとは違う『神宮寺』になってしまうような気がしたもので、西山さんに連絡を取って、急遽『神宮寺』の開発者の方々を集めることになったんです。といっても、しばらく捕まらなかったんですけどね(笑)。で、皆さん1人1人に直接会って、ウチが『神宮寺』を開発する、というのを説明したら、えらく喜んでくれて。正直、『神宮寺』はもう終わりだと思っていたらしく、「どうもありがとうございます」なんて逆に言われたりしてね(笑)。で、「できれば協力してほしい」とお願いしたところ「ぜひ」と。そんなわけで、西山さん経由で当時のスタッフを集めたんです。結局、今の『神宮寺』スタッフの大多数は昔からの『神宮寺』スタッフですね。
――:(じーん)泣かせるエピソードだ…。
神長氏:ただ、シナリオがね。もちろん、『神宮寺』を手がけていた方にお願いしたかったんだけど、その方が別の仕事に入っていて、「中途半端な形で今の仕事をやめたくない」とおっしゃるから、ならばウチでやるしかないな、と。そうなると、ウチには書けるのボクしかいないですからね(笑)。だから、ボクのシナリオで『神宮寺』を作ってみました、という感じなんですよ。
●今までと違う、神長氏自身の"神宮寺"像を活かしたシナリオ
――:すでに主人公のキャラが立っている『神宮寺』のシナリオを書かれるのは、苦労したのでは?
神長氏:そりゃあ、一番苦労したトコロですよ〜。自分で書いてきたものなら、何から何まで自分で決められるし、わかってもいるから楽なんだけど、『神宮寺』ってそういう意味では"他人"じゃないですか。で、この男は私に何も教えてくれないんですよ(笑)。「こういうときどうするの?」というのを、ボクがわかっていないとストーリーが書けないんです。少なくとも、「何となく」というのでは書けなかった。ってわけで、シナリオを書いていた時間の7割は「神宮寺三郎」という人間を知るために使ったかも。ちなみに、『神宮寺』って今まで4人くらいの方が書かれていたって知ってます?
――:え? そうなんですか?
神長氏:で、それぞれの書き手によってちょっとずつ神宮寺像が違っていたりするんですよね。ボクはシナリオを書くとき、どうしても整合性を高めようとしてしまうだけに、それがけっこう許せなかったり(笑)。で、整合性をとろうと試しても、どの神宮寺像ともずれてきちゃう。ボク自身の考えというのもそこには入ってくるわけだし。
――:神長さんの考えというのは?
神長氏:今までの神宮寺って、ボクの中では「スーパーマン」的な印象だったんですよ。生活感がなく、弱いところもほとんどない。いつもカッコいいままに事件を解決していく、みたいなイメージのキャラだった。でも、ボクが考える神宮寺三郎という男はあくまで1人の人間であって、悩むこともあれば葛藤することもあるだろう、と。今までのファンに「こんなの神宮寺じゃない」と思われるのは不安だったけど、ぜひ挑戦してみたかったしね。今のところシナリオに関しては「良い」か「悪い」の両極端で(笑)。でも、だいたい7?8割くらいの方が「良い」と言ってくれてますよ。
――:そのシナリオですが、実際に着手されたのはいつ頃からですか?
神長氏:そのころは『ドリフトチャンプ』にかかりきりで、並行作業みたいになっちゃったんですよ。で、結局本格的な作業に入ったのは去年の秋くらいからかな。今年の4月くらいまで書いていましたね。本当は2月のところを3月、3月が4月と……(笑)。
――:そんなカンジでシナリオが押し押しになっちゃうと、ほかのスタッフの作業が進まないのでは…?
神長氏:完全に仕上がったのが4月なんだけど、それまでにはかなりできていたんですよ。ボクの書き方って、頭の中でできたものをメモっていくという感じで、途中で書き換えたり、入れ替えたり、というのはないんですよね。だから、シナリオと絵の作業は並行して進みましたよ。ただ、上がってきた絵がイメージと違ってたりすると、「この絵の方がいいから、絵にあわせたセリフにしよう」とかそういうのはありました。まあ、今まで横柄だった言葉使いが丁寧になったとか、そんな感じですけど。
――:どのくらいの文章量になるものなんですかね? まったく想像がつかないんですけど……。
神長氏:記者発表の時に「どのくらいですか?」って聞かれたとき、「文庫本2〜3冊分はありますよ」って答えたんですけど、あとで西山さんに「もっとあるよ」って言われたくらい(笑)。AVGは脇道に外れたときのセリフとかもありますからね。そういうのを含めると、文庫本10冊にはなるんじゃないかな。物語に関係のあるストレートな文章だけでも、やっぱり数冊分にはなるので、小説の話が来たらどうしよう、とか考えちゃいますよ。
●システムはシンプルかつ新鮮。シナリオの邪魔をしないものを
――:今、プレイさせていただいているのですが、本当にAVGの王道ってカンジですよね。いかにもAVGらしい、シナリオ勝負というところがいいなぁ。
神長氏:ボクには、システムはシナリオを邪魔しなければいい、という考えがあるんですよ。システムで人を引き込もうと思わないし、ゲームの面白さを引き出そうとも思っていないんです。プログラムやシステムというのは、シナリオに没頭させるために、いかに快適にプレイできるか、というものだと思っているので、なるべくシナリオを邪魔しないようなものを作ってくれ、とはお願いしているんですね。『クロス』にあった高速読み込みシステム「マッハシーク」にしても、そういう意味で作ったんです。で、『神宮寺』は今までの歴史があるので、コマンド1つにしても歴史やスタッフの方々のこだわりがある。昔ながらの、ということになりますが、そういうのが今あってもいいと思うし、逆に今の若いユーザーはファミコンの時代とか知らないですから。で、スーパーファミコンの頃はこういうAVGってなかったし、そう考えると同じようなシステムを使ったゲームってあまりないんですよね。だから、シンプルかつ新鮮、ってことにならない?
――:『神宮寺』を知らないユーザーも多いでしょうね。ファミコンからプレイしているボクら20歳後半〜30代ならド真ん中なんですけど。
神長氏:そうだねぇ。ディスクシステムの話なんか若い子にしてもね、それ自体知らなかったりするしなぁ(笑)。でも、今一番ゲームをやるユーザーは高校生とか大学生じゃないですか。そういう人たちは『神宮寺』をPSなどの32ビット機以降のものしか知らないんですよね。
――:なにしろ最初に出たのは15年前ですからね。神宮寺が2等身で街中を歩いていた、なんていうイメージはないでしょ、きっと(笑)。
●そんなこんなで次回作は? 『クロス』? それとも『神宮寺』?
――:次回のワークジャム作品は『クロス』、ですかね?
神長氏:記者発表でも言いましたからね。まあ来年度中には。
――:もうだいぶ進んでいるんですか?
神長氏:まだまだ(笑)。
――:『神宮寺』も今後続けていかれるんですよね?
神長氏:予定としては。ぶっちゃけたことを言うと、『神宮寺』の方が『クロス』より手がかからないですからね。『神宮寺』はシナリオさえあれば西山さんが仕切ってくれて、ノウハウのあるスタッフが頑張ってくれるので。でも、『クロス』は何でもかんでもボクがやっているので、時間がかかる。『神宮寺』は『クロス』の3分の1くらいで済みますから。だからもしかしたら、『神宮寺』の方が先に発売されるかもしれませんね。
――:なるほど。『神宮寺』ファンにはウレシイ言葉ですね。最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします!
神長氏:今回の『神宮寺』は「人間・神宮寺」にスポットを当ててシナリオを書いたので、そこを楽しんでほしいですね。神宮寺の考え方や人となりが、過去シリーズ作品よりも鮮明にわかるハズなので。
――:『神宮寺』を知らない方でも楽しめます?
神長氏:今回はワークジャムの新生『神宮寺三郎』第1弾ですから、まったく予備知識がなくても楽しめますよ。もちろん、知識があればニヤッとするような場面があるとは思いますが、基本的には取説にあるようなことを知っていていただくだけで十分楽しめます。まだプレイしていないAVGファンは、ぜひ手に取ってみてください!
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神長
豊氏
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| 株式会社ワークジャム取締役副社長。『ゼロヨンチャンプ』シリーズや『クロス探偵物語』といった代表作を持つ。ちなみに、某DC専門誌の読者コーナー・「えりりんとネット対戦」の企画・監修を、今回のインタビュアー・おぎのっちに頼まれ、いやいやながら担当した過去を持つ。この事実を本人は忘れてしまっているようなので、この場を借りて公表しておく。 |
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探偵
神宮寺三郎
Innocent Black
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■メーカー:ワークジャム
■対応機種:PS2
■発売日:2002年10月26日
■価格:6,800円
(C)2002 Work Jam/Saburo Jinguji
Project
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