電撃ドットコム > 電撃オンライン > インタビュー > 『世界樹の迷宮』

■ インタビュー ■

“3DダンジョンRPG再生計画”とは!?ディレクターが語る『世界樹の迷宮』のすべて!!

ダンジョンRPGのおもしろさを極限まで追求したDS用ソフト『世界樹の迷宮』。名作3DダンジョンRPGを数多くリリースしてきたアトラスが、「3DダンジョンRPG再生計画」をうたった本作の狙いとは!? ディレクター新納氏が、そのすべてを語る!! ロングインタビューの模様を、前後半の2回に渡ってお届けしていこう。

I はじめに

――この作品はどういった経緯で作られることになったんでしょうか?

新納一哉氏(以下新納、敬称略):
この企画の話が出たのは、2005年の5月頃ですね。その時はDSのタイトルでゲーマー向けのゲームが少なかったので、ゲーマーの方でDSを買っても「しっかり遊べるものがあんまりないなあ」という感想を多く聞きました。そういう状況でアトラスが黙って見ていていいものだろうか、という話はたびたび出ていました。

僕が関った『超執刀カドゥケウス』というのも幸いゲーマーの方には評価していただいたので、ちょっとこの流れを維持したいなというのがあります。そうやって考えていくと、アトラスが一番得意なジャンルである3DダンジョンRPGを出すのがスジではないかと。ほかのメーカーさんのRPGが出そろう前に作っておこうということでスタートしました。

今回ダンジョンRPGだったんですけども、ダンジョンRPGって実は開発からするとすごく作りやすいゲームなんですよ。マス目で管理されてるので、ゲームも組みやすくて、ユーザーも理解がしやすい。だから、ダンジョンRPGって無くなるには惜しいジャンルなのに、なぜかここ最近あまり出ていないんですね。

ただ、これまでに発売された3DのダンジョンRPGに、売れていない理由があったとも思うんです。この現状を僕なりに分析してみまして、この「売れていない要素」というのをできる限り取り払ったのが『世界樹の迷宮』なんです。

DSという機種で出すことで、新しい取り組みをしたいというのもありましたし、今後のダンジョンRPGを復活させたい…なんてって言っちゃあ大げさなんですけど(笑)「こういうダンジョンRPGはアトラスの得意技だ!」と世間に知らしめてやろうとか、そんな意気込みで、その第1弾作品として作らせていただきました。

実は、本作のウリである手書きマップのシステムに関しても、初めは心配していたんです。「今更手書きマップに戻るのもないでしょ」とか「オートマップが便利なのに、なんでわざわざ」のように思う事もありました。ですが、このアイデアを出した瞬間、いわゆるゲーマーの方とか、社内のゲーム好きの方は「それはいいね!」とピンと来てくれたみたいで、企画立案の支えになりました。

今回、このアイデアを一番推してくれたのは、金子一馬氏(真・女神転生シリーズの悪魔デザインなどを担当)なんですよ。「そのアイデアは絶対いいから、売り上げのことは脇に置いても作るべきだよ」と言ってくださったんです。そんなあと押しもあって、トントン拍子に開発実現へ近づいていきました。

本来このゲーム市場を考えてみると、ダンジョンRPGというのは「出すと失敗する」くらいになっていたジャンルなんですけれども、今回はDSというハードで、「アトラスとして」意義のある1本を作っていきたいなと。そういう流れで開発の許可が下りました。

II 系譜への意識

――ダンジョンRPGといえば、『Wizardry』に始まるような、またアトラスにおけるダンジョンRPGの系譜というか、流れみたいなものがあると思うんです。そのことに関しては意識して開発されたんですか?

新納:
そうですね……。今までの流れっていうのは、僕自身アトラスに入社したのが2004年のことなんですけど、開発長の橋野桂氏(ペルソナ3のプロデューサーを担当)に、君は『メガテン』と関係ない、まったく違う作品を作ってほしい、小さいラインを立ち上げて独力でチャレンジしてくれ、というお話を受けていました。なので、あえてアトラスの今までの流れを無視した作品にしたつもりです。ただ、アトラスのテイストは当然あります。ゲームに関しては攻略がしっかりできるものであるとか、ゲームとして遊び終えたとき満足感のあるもの、ですね。それ以外に関しては、なるべくこれまでのアトラスになかったものにしようと。

特に今回それが現れているのはビジュアルで、キャラクターにしても、背景にしても、明るめで。現在のゲーム市場を見直してみて「これが今一番受け入れやすいはずだ」というものを打ち出してみました。

――たしかに、ダンジョンRPGではありますが、『Wiz』とはぜんぜん違うシステムを多く搭載していますね。

新納:
そうですね……今、『Wiz』をやり直してみると、意外とあらっぽい作りだな~と思うんですよ(笑)。あらためてプレイしてみた感想はというと、操作系統とかインターフェースが雰囲気モノというか、TRPGを知らない人にはわかりづらいなとか。本作の制作前に「かつて『Wiz』がありました」という既成概念を捨てるべきだと思いました。逆に、「新しい『Wiz』を作るんだ」という考えのもと、この作品が作られていきました。

それは、ダンジョンRPGがゲーム市場で売れていないことに対する対応策でもありましたし、最近では、別のゲームジャンルで進歩してきたインターフェースなどもあるので、それを入れ込んでみようと。例えば、『Wiz』にしばられる開発をせずに、「キャンプが開きづらい」とかそういった部分も払拭して。とにかく遊びやすいものを作ろうと。

『世界樹の迷宮』はシンプルに、わかりやすく作るということには注力していますね。メニューまわりもシンプルで、行きたいところに行くのはカンタンにしてあります。最後の調整で色々追加したりしたせいで、不満足な部分もちょこちょこ残ってしまいましたが(笑)

――新納さん自身のダンジョンRPGのプレイ遍歴とはいうのは?

新納:
ダンジョンRPGは相当やっていますが、古めのものが多いですね。PCゲームユーザーだったので、PC版の『ザ・ブラックオニキス』とか『マイト・アンド・マジック』とか。スタークラフトのゲームが好きでしたね。そういうダンジョンRPGが星の数ほどいろいろ出ていた時期を学生時代に経験しました。そのあと、ファミコンが出て、『ディープダンジョン』、『Wiz』、『メガテン』…メガドラの『シャイニング アンド ザ ダクネス』なんかもなつかしいですね。SFCまではダンジョンRPGがたくさん出ていましたから、それまではほとんどのものをさわっていたと思います。PS2になってからは、『BUSIN』……くらいですかね。ちょうどRPGが触れない忙しい時期だったのもあります(笑)

――どんな人にプレイしてもらいたいですか? DSのライトユーザーですか?

新納:
DSはメジャー機になりましたし、ライトユーザーの方にもプレイしてもらいたいゲームでにあるんですが、メインターゲットは、ゲームを普段からよくする、年間5~6本はゲームを買う人向けですね。ゲーム機を立ち上げるのが面倒くさいという人が、DSでけっこう戻ってきたんです。これはチャンスだと感じているので、その人たちに強くアピールしていきたいですね。30代くらいの「ゲーム買っても積んじゃうなー」とか「昔はけっこうゲームしたのになー」とか、そういう人には是非プレイしてもらいたいです。

――携帯機で手軽に遊べるのが魅力の作品なのですね。

新納:
長いチュートリアルが終わったと思ったら、その後に長いイベントシーンなんかが始まる…なんてなると、もう今日は寝るか、という気持ちになります(笑)。こういうと自分が歳とったなあと思うんですけど(笑)、そういう社会人の人も結構いるかなと。チュートリアルは親切だと思いますし、別にイベントシーンを否定しているわけではないんです。ただ、そういうのを省いたゲームが無いっていうのもおかしいだろうと。実験的な意味合いもあって、なるべくそういう所にストレスを感じないようにしているつもるです。

――サクサクとストレスなくプレイを進められる印象です。

新納:
リズム、というかゲームのテンポは大事にしています。先日、とあるDSのビッグタイトルをプレイしていたんですが、とにかくゲーム展開が遅くって。これはきっと多くのユーザーが理解しながら遊べるスピードを狙ってるんだろうな、とは理解できたのですが、自分はつらかった(笑)このゲームは自分が辛くないゲームを目指しました。

『世界樹の迷宮』では、ゲームを始めたら、街に出て、キャラを作って、すぐにダンジョンにもぐれます。この流れでわからなくなることはありませんし、もしダンジョンで死んでしまっても死んだ理由はすぐわかるようにしています。それくらいが丁度いいと思う人もいるはずだと思ってます。

それと、ゲーム起動時もできるかぎり最速でゲーム開始までいけるようにしたつもりです。1つ面白いエピソードとしては、DSも優れたミドルウェアが沢山あるのですが、そういったものを使うとライセンスロゴを表示しなければいけないので、そのロゴの表示時間がもったいないから使うのをやめよう、なんて話をした事もあります(笑)

III 『世界樹の迷宮』のこだわり

――実際にゲームをプレイして感じたのですが、ダンジョンへ出て、戦闘を繰り返していくうちに新しいスキルを覚えて宿に戻ると、またダンジョンに行きたくなるんですよね。

新納:
強くなれば、ダンジョン内の強敵を倒すこともできますし、さらに先へ進むとそれより強い敵がいる。どんどん深みにハマっていくおもしろさは意識しています。

――登場モンスターについてうかがいますが、1フロアに出るモンスターはそれほど種類はありませんよね? 

新納:
モンスターって、種類が多ければ面白いというわけではないと思うんです。あるモンスターが登場したあとに、また同じモンスターが出た場合、前回の行動より効率よくモンスターを倒そうとしますよね。新規で登場するモンスターばかりいると、攻略法が見つからないので「戦っている」気がしないんですよ。ましてや、自分が強いのか弱いのかさえわからなくなってくる。そうなるとモンスターとして登場させる意味がなくなってしまいますから。何度も出会った敵と、新しい敵がほどよくまじってこそ想像がつく攻略法がRPGの醍醐味ですね。個人的には、数はちょっと多かったかな?と思っているくらいです。

また、敵の登場のさせ方も工夫しています。迷宮の1階では、毒を持つモンスターが3体あらわれるイベントがあるのですが、このイベントが終わるとザコとしても登場するんですね。ただザコとしてわらわら出るより、イベント戦闘で苦戦したことが、プレイヤーの記憶に鮮烈に残るわけです。こうやって、モンスターの個性を出しています。

――3階では、あきらかに勝てない敵がマップ上に存在しますが、これはあえて登場させたのですか?

新納:
社内でも「マップにいる赤いヤツに勝てない」と同じ感想がありましたが、そのとおりです。勝てないのが基本です。もちろん、レベルを上げれば勝てる相手ではありますが。フィールド上をプレイヤーと同じように動くこれらは「F.O.E.」(ダンジョンの中を歩き回る敵)といいます。

戦闘を繰り返して、スキルを入手していくと、キャラはどんどん強くなっていくんですよ。やり込むプレイヤーにいたっては、開発陣の僕らでも想像できないほどに強化していくハズで。ただ、キャラが強くなるのと同時に敵も強くなっていくと、自分が強くなったことを実感できません。こういった事態は、最近のゲームでは顕著ですね。例えば、クリア直前のダンジョンに入ると、格段に敵が強くなってしまい、攻略することが面倒になったりすることがありますよね? 根性が続かない社会人向けと考えると、そこは工夫して、ゲームが後半になるにつれ難易度をゆるやかに下げてみました。山を登り続ける苦しさだけでなく、頂上についたあと降りながら楽しむさわやかな汗というか…。

買ってきて「よーしやるぞー!」と一番がんばりたい時が一番キツい難易度で、「いやーそろそろ満足したからエンディングが見たいな」という段階に来たら、最初程の苦労なくそこにたどり着けるようになっています。そういう意味では、1階はゲームが始まって「辛いのが楽しい」ところですし、難易度は高めに設定しています。ただ、これはテストケースなので、次回作を作れるのなら、ユーザーの意見を聞いて反映させたいところですね。もしかしたら最後まで苦しい思いをして山を登り続けたいユーザーのほうが多いかも知れないですし、是非聞いて見たいです。

――パズル要素についてうかがいます。3階に到着すると、F.O.E.にはさまれる部屋がありますよね。ここの先にある宝箱を開けるのには苦労しました。こういった仕掛けはほかにもありますか? 

新納:
はい。F.O.E.の動きにどう合わせるかというのがマップ攻略のカギですね。3階のF.O.E.に関しては、F.O.E.の動きをよく見てみてください。これらの動き方には、特徴があって、こちらが2歩移動するごとに1歩移動しています。これを理解すれば、部屋の宝箱も開けられますよ。ひとえにF.O.E.といっても、こっちに襲いかかってくるものばかりではありません。プレイ次第で、F.O.E.とほとんど戦わずにクリアすることも可能です。

RPGというのはレベルさえ上げていけば、大抵誰でもクリアできます。でも、それをしたくないプレイヤーも少なからずいるんですよ。頭を使って、攻略したいとうユーザーが。その2タイプのプレイヤーを満足させるためのものがF.O.Eという要素です。

攻略法をめぐって、ほかのプレイヤー(友だち)と意見交換するというのもとても大事なことで、いざ詰まったときにしゃべれないとつらいですよね。現在では、ネットでの攻略もありますし、それらを駆使して考えるおもしろさを味わってもらいたいです。

――プレイを進めてみて思ったのですが、迷宮は階層ごとにまったく異なる印象ですね。

新納:
ダンジョンRPGは何度も同じところに潜るようになるわけですから、各階に個性を付けて飽きさせないようにしようというのはありました。毎フロアを「面をクリアーする」ような感覚で先に進めるようにできればと。ダンジョンRPGが売れなかった理由の1つに、「やってることや行くところが代わり映えしない」事からくる「作業っぽさ」があったと思うんです。僕自身、ダンジョンRPGをプレイしていて、中盤くらいまで来ると飽きてくるのを身をもって経験していますし。

背景が変わったりといった小さな変化はありますけど、あくまで「石畳が神殿になった」とか、背景パターンが変わった程度だとやはり飽きてしまうんです。そうならないようには工夫しましたね。

――ダンジョンRPGといえばいわゆるワナなどの「仕掛け」が多いですが、本作にはあまり見あたりませんね。これにはどんな意図が?

新納:
やることがシステムに絡んで増えてくると、複雑になるだけだからです。本作は障害としてF.O.Eを用意したのだから、その他の仕掛けを作って散漫にするより、F.O.Eを使って仕掛けを作るのがスジだと思います。F.O.Eは経験則も生まれてきますし「4階の攻略法が、5階の攻略時に応用できる」といった、プレイヤー自信の成長で障害を突破して楽しんで欲しいと思います。なかには、F.O.E.も何もない階などもあって、そのあたり緩急もつけています。

それと、緩急といえば「隠し通路」があります。これは、各階のショートカットとなっていて、素早く街とダンジョンを行き来するのに活躍します。ゲームを進行させていくなかで普通に発見できるものもありますし、探し込まないと見つからないものがあります。これに関しては、先ほどもお話ししたように、ネット上などでユーザー同士が「ここ行けばラクだったのに~」とか、意見交換してくれればと思っています。

――ダンジョンRPGの楽しみである、プレイヤー自身の脳内リプレイ(メイキングしたキャラに設定を考え、感情移入すること)、レアアイテム収集の要素も、自己満足で終わらないと。

新納:
そうですね。ネットは、自己表現の場になりえると思います。「俺のパーティはこれだ」とか、人のパーティを知るだけでも楽しいですし、攻略にもつながります。もちろん、『Wiz』にもそういった要素はあったと思いますが、本作は、それをネットで話題にしやすいようパッキングしてあります。キャラが立った絵なんかがそれを体現していますね。

――ジョブのイラストが魅力的ですね。

新納:
女の子に見える男の子など、キャラの性別はあえてわかりにくくしています。ゲームのなかでも、その辺はあまり触れていません。そういうご趣味の方もいらっしゃるということなので(笑)そのあたりはご想像におまかせしています(笑)。キャラはゲーム中で個性があるわけではないので、脳内リプレイも楽しんで頂けると嬉しいです。

――感情移入の仕方はプレイヤー次第でかなり変わってきますね。

新納:
公式HP(※ブログ形式になる以前のサイト。公式ブログ内「過去のページへ」から )の酒場で見られるストーリーも広報展開のもので、本編には関係ないなんかリプレイっぽい雰囲気になってくれればなあと。ああいう雰囲気だよというイメージ作りのためのものです。

そもそも、キャラをつけることには抵抗があったんです。『Wiz』にはキャラがなかったからよかったというのもありますしね。『Wiz』を期待して本作を買ってくれたファンの方は抵抗があるのかと思います。ですが、現状の市場を考えれば、キャラをつけない事も、またユーザーへの障害になってしまうんです。なので、そこだけはお許し頂いて、その他の部分では一切おしつけないようにしています。

また、本作には『Wiz』のようなキャラメイキング時のステータスへのポイント振り分けがありません。これは本当に迷いました。でも、詰つまるところ、プレイヤーは最高ポイントがでるまでやってしまう事が多いので、何度もサイコロふらせるよりは、そこにかける時間を、実際にプレイしてレベル上げに費やすほうが建設的だろうと。もちろん、ポイントの振り分け自体にロマンはあるので、自分としは勿体なくも思いました。

――絵だけにひかれて、バランスを考えないかなり個性的なパーティが生まれてくることもありそうですね。

新納:
もちろん、そういった事態も想定しています。一応、それなりのパーティならクリアはできるようになっていますが、無理な組み合わせは当然あります(笑)ただ、キャラにはパラメータのふり直しができるといった救済措置がありますので、そこはセオリーからはずれて、自分好みのパーティを作って挑戦してもらいたいですね。

パーティ選び以外でもそうなんですが、「失敗すること」を楽しんでもらいたいんですよ。それは友だちとの話題にできますし。なにより、そんな失敗を乗り越えることっていうのは大事なことです。

昔のゲームって、失敗を含めて遊んでいたと思うんですよね。それが、今は成功して当たり前みたいな。5時間、10時間遊んできてそれでゲームオーバーになるとムダになってしまったと言われてしまうんですよ。5時間、10時間と遊んでいた間は「楽しんだ時間」があるはずなのに。僕は、そんな時間が人生においてゼロになるとは思っていないんです。結果を求めるだけならゲームをやること自体疑問に感じます。

――本作は、ユーザー同士が情報交換しながら進めるのに適したゲームだということでしょうか。

新納:
はい。それを前提として本作は作られています。今の世の中で、ゲームで遊んでいる人は、大半がネットをしています。ネットのことを想定しないと、ゲームの底がすぐに尽きてしまうんですよ。僕の経験からいっても、ゲームっていうのはゲームそのものを楽しむより、ゲームの体験を人と話すのが楽しいんです。それができるようなゲーム内容にはしています。ヘンなキャラの組み合わせでも、自分のパーティだとカンタンにボスを倒せたとか、逆に苦労した話とか。そういった経験をすると、誰かに言いたくなるじゃないですか。そんな気持ちが起きるゲームが、今の世相にはあっているのかなと。もう、「1人でゲームやって、クリアして、おもしろかった」という時代は終わったと思います。

そんな観点から行くと、言い方は悪いですが、いわゆる「クソゲー」もアリだと思うんです。『たけしの挑戦状』の衝撃って、プレイした人なら一生忘れないでしょう? 5年、10年経って、覚えていられるゲームであることはとても大事なことです。

本作も、「昔、『世界樹』あったよなー! アレは何回も死んだよ~」とか、思い出したように語られる作品でありたいですね。すべての作品がそうであれとは決して思いませんが、現在、ゲームが目指すべきなのはここなんじゃないかなと。だからこそ、突き放している部分もあります。隠し通路なんて通常のゲーム進行ではほとんど関係ないですし。みんなで、攻略してほしいですね。プレイヤー1人だけで完結するゲームではありません。

あ、念のため、ひとこと断っておくと本作はクソゲーではありませんよ!(笑)

>>後編へ

新納 一哉 氏

KAZUYA NIINOU

 本作の企画・開発を担当。このほか、DS『超執刀カドゥケウス』のディレクションを手がけた。

世界樹の迷宮

『世界樹の迷宮』

■メーカー:アトラス
■対応機種:DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2007年1月18日
■価格:5,040円(税込)
■関連サイト:公式サイト/アトラス
ソフト紹介ページ

(C)ATLUS CO.,LTD.2007 ALL RIGHTS RESERVED.