クリエイターインタビュー:ゲームプロデューサー 石川雅生 (いしかわ まさお)さん

お話を聞いた人→ゲームプロデューサー 石川雅生 (いしかわ まさお)さん

 いまや携帯電話で遊べるゲームも、テレビゲーム同様、見逃せないジャンルになってきています。石川雅生さんは現在、そんな業界でプロデューサーという立場でゲーム開発に日夜励まれている方。もともとはアーケードゲームやテレビゲームの開発現場で活躍されていたという石川さんが携帯電話ゲームの開発の世界へ足を踏み入れた理由とは? ゲーム業界のさまざまな現場を知る石川さんのお話は為になること、絶対間違いなし!!

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。4月はゲームプロデューサー石川雅生さん。

第4回 レジェンドと呼ばれる人々との出会いも!!

――いくつかジー・モードでの代表作についてお話を聞かせてください。

石川雅生(以下石川、敬称略):では、新しいところから。まずは去年『キミキス』(※1)のモバイル版の統括をやりまして、いろいろ内外の調整とかやりました。本作では久々にいくつかのスプリクトも書きましたよ。

――履歴書に好きなゲームの欄に『キミキス』とありますね。

石川:当初、この分野のゲームはそれほど好きではなかったんです。多少興味はあったけど、研究目的で軽く『ときめきメモリアル』(※2)をやったぐらいかな。モバイル版の『トゥルー・ラブ・ストーリー Summer Days, and yet...(TLSS).』(※3)の仕事をして、そこでボクは初めてギャルゲーを本格的にやってみたんですよ。そしたら、予想以上におもしろかった。TLSSのモバイル版が好評で、その流れで『キミキス』のモバイル版も担当させていただいたんですが…、原作のPS2版をじっくりプレイしてみて、よくできてるなぁって思ったわけですよ。「ここまで作り込んでいるのか!」って驚いた。更に裏側を見てみたら、もう大好きって!(笑) どっちかというと好きなゲームというよりは頭の上がらないゲームかな。ここまでクリエイターがこだわって作っているゲームは評価しないとね。

――キャラ萌えとかいう意味でなく、作品の構造的な部分が好きと。

石川:そう、なんでここまで凝るのかな、って部分とか。例えばバットエンカウントという、キスしている現場を他人に2回見られると、もうあなたとは会わないよって言われるケースがあるんですよ。多くのゲームなら、その後はもう登場しなくなるだけなんですけど、キミキスはモブとして背景に溶け込んで登場するんですよ。そういったイリーガルな処理がてんこ盛りなんですよ(笑)。

――そんなゲームを携帯に移植されるとなると大変だったんじゃないですか?

石川:さすがにその辺りの演出やイリーガル処理まではモバイル版には入ってないんです。でも、元がボイスも含めて、DVD1枚フルで入っているものを携帯に落とし込むってことで、かなり無理はしてます。物量も携帯にしては多かったですし、大変なプロジェクトでしたね。

――(実際に触らせてもらいながら)しゃべるんですね?

石川:しゃべらせるってところもこだわりましたよ。1イベントに2〜3ボイスが限界で。最初はどこまで行けるのかがわからなくて、1シーン1ボイス以上を目指そうということでやりましたね。

――コンシューマからの移植になると圧縮する作業がメインになりますか?

石川:その圧縮の方法も、このゲームのエッセンスはどこなのかってところになりますよね。まずは原作をやり込んで、やり込んで…。それで一番キモなところを探し当てることが重要で。キモになったところを抽出して、携帯用にアレンジしていかないといけないので、そこが一番難しいところで、醍醐味でもありますね。ちなみに『キミキス』(PS2版)のメインプログラマーは、ボクの弟なんですが…。

――兄弟のコラボレーション作品と!

石川:打ち合わせの時に名刺交換したり(笑)。

――(笑)。なんか恥ずかしい感じがしますね。ちょっと全体的な話になりますが、携帯電話ということで、片手で操作する、機種で操作系統が異なるなど、気を使っていることはありますか?

石川:ありますね。まずはL/Rボタンがないのが、これほど厳しいのかって思いました。基本十字キーとセンターキーと、ソフトキーが1個までと考えてまして。ソフトキーもあんまり対応しないようにしないとなと。『キミキス』とかは基本的には十字キーとセンタキーだけでいいんですけど、『ソーサリアン』(※4)とかになると、魔法発動の時にソフトキーを使う必要があって。

――アクションゲームになるとやや厳しいですよね。

石川:『ソーサリアン』の時は、攻撃も自動攻撃とマニュアル攻撃とを選べるように作りました。デフォルトが自動攻撃で、敵と接近したら自動的に剣を振る。それでなんの支障もないゲームでしたね(笑)。やっぱり『ソーサリアン』はもちろん、日本ファルコム(※5)さんのゲームは、パソコン上がりのボクとしてはこだわりがありました。

――(実際に触らせてもらいながら)音楽がなつかしいですね。

石川:サウンドありきというところもありまして、携帯だけど、サウンドだけはオリジナルに近づけるってところは一番気にしてたところです。それと、もともとの『ソーサリアン』はマニュアルがものすごく分厚いんですよ。あれがないと把握しきれないゲームなんで。でも、とてもじゃないけど、携帯だとソーサリアンの全てのゲーム性を説明しきれない。なので、冒険シナリオだけにしました。マニュアルがないと理解し辛いところ、星をかけ合わせて魔法生成するところ、1年ずつ歳をとる、寿命がある、冒険に出てない時の職業…とか。そういうところはばっさりカット。悩みましたけど、カットしました。『ソーサリアン』についてのこだわりは、ジー・モードのサイトで語っているので、そちらも読んで頂けると嬉しいです(笑)。

――ほかにはどんな作品に携わられましたか?

石川:『テトリス』関連の開発進行も担当してます。版元さんといろいろお話させていただいたりしてます。『テトリス』はいろいろ出させてもらってますね。

――プログラマー時代は内部の人とのやりとりがメインですが、プロデューサーになると、外部との方々とのやりとりがありますよね。その辺りでの苦労はありますか?

石川:緊張感がありますよね。ものすごい緊張感があるのと同時に、いろんな方と知り合いになれるのが楽しい。プログラマーの時は、どうしても携わっているゲームにしか視野がいかないんです。ところが、プロデューサーやディレクターをやっていると、外部とか、市場とかに目を向ける必要が出てくる。『キミキス』とか、『ソーサリアン』もそうですが、版元の方とも知り合いになれますよね。あといろんな話が聞けるというのも楽しいです。この間、ついにアレクセイ・パジトノフ氏(※6)に会いましたよ。

――そんな出会いもあり!

石川:あと当社には結構レジェンドの方もいます。『ゼビウス』(※7)の遠藤さんとか。あの遠藤さんとお会いできたというところは大きかったですよ。そういった意味でもモバイルの仕事をしていても、コンシューマの方々と触れ会う機会というのは、いろいろありますね。

――携帯は携帯。コンシューマはコンシューマと思ってました。

石川:ボクの上司がそういった面に積極的というのもあるのかな。この前『勇者死す。』(※8)というタイトルを配信しました。これは『俺の屍を越えてゆけ』(※9)の桝田省治さん(※10)がゲームデザイン&シナリオを担当されているんです。そういう意味では、この仕事やり始めてからいろんな人と知り合ったなぁと。

――ちなみにゲームによって大小あると思いますが、制作期間というのはどれぐらいですか?

石川:半年から1年ぐらいかかっています。最近は長くなってきてますね。あとボリュームが大きくもなってきてますね。『勇者死す。』は1年弱ですね。503(※11)の頃は1カ月で作ってたものもありますが、今ではスーパーファミコン辺りの時代のコンシューマゲームと変わりない感じですね。

――ゲームに関わらず、今後やってみたいことはありますか?

石川:そろそろもっと大掛かりなこともやってみたいなと。あとは1個オリジナルを立ち上げて、ちょっとやってみたいですね。それがどういった形になるかは、まだ漠然として見えてきてないけど。『勇者死す。』の時もそうだったんですけど、いろんなジャンルで活躍するクリエイターの方々と組んで、何かおもしろいことを仕掛けられたらいいかな、と。それがゲームという形になるか、コミュニケーションという形になるか、はたまた別のものになるか、わかりませんが。

――未来のクリエイターにメッセージを!!

石川:ゲーム以外にもいろんなことに、とにかく興味を持つことかな。結局ゲームを作るには他も見てないとダメなので、流行ってるモノとか、映画とか、どんな話がいいのか、どんな小説が売れているのかとか、アンテナを立てておいた方がいいですね。まずは、その辺を意識していると、いいクリエイターになれると思いますよ。そこから新しいビジネスが生まれる可能性もありますし。あとは技術者として働きたいなら、地道に数学、物理を勉強しておきつつのプログラムをやるといいですよ。

――プログラマーに向いている人というのは、どういった人なんですか?

石川:2系統いるんですよ。コードを愛す人と、動きを愛す人。ボクは後者なんですけど、コードを愛す人はコードの美しさと速さを競いますね。宮路(※12)はこっちのタイプですね。日本一速いプログラムを書くっていうプライドを持ちつつ、こんなことも作っちゃったよってことに燃えられる人。ボクはものを動かすのが楽しい。とにかくキャラが動くのが楽しい。どちらも没頭したら、寝食を忘れられる人という部分では同じですね。プログラミングの例ではないんですが、最近のエピソードとしては、『キミキス』のキックオフの際に、携帯版でできると思えることを可能な限り正確に伝えるゲームのラフ仕様書を書くのに丸一日(24時間)没頭しました。結局70枚くらいを書き上げましたね。

――すごいですね。そのモチベーションの出どころというのは…?

石川:携帯で『キミキス』が動いたら、みんながアッと思うだろうなってところですね。あとは伝えたいものを一生懸命仕様書に落としていく作業で、頭にあるものを全て書いたら仕様書の枚数も物凄いことになってました。

――こだわりや熱意から没頭できるかにつながるわけですね。お忙しい中、ありがとうございました!

石川雅生さんの格言

ゲーム以外のことにも
アンテナを立てる!!
技術者は数学、物理の勉強を

【編集部注釈】

※1 『キミキス』……2006年にエンターブレインからPS2で発売された、キスをテーマにした恋愛シュミレーション。モバイル版はi-mode用が現在配信中。


(C)2006 ENTERBRAIN, INC.
(C)G-mode

※2 『ときメモ』……コナミの『ときめきメモリアル』のこと。恋愛シミュレーションゲームの金字塔。

※3 『トゥルー・ラブ・ストーリー』……エンターブレインがPS1、PS2用に発売した、恋愛シミュレーションゲーム。現在『3』まで発売されている。『キミキス』と同じスタッフが制作に携わっている。

※4 『ソーサリアン』……日本ファルコムが発売した、名作アクションロールプレイングゲーム。豊富なシナリオが魅力で、戦国やピラミッドなどの追加シナリオも発売された。


(C)2000-2008 G-mode Co.,Ltd. All rights reserved.

※5 日本ファルコム……主にパソコン用のゲームソフトを開発、販売する老舗ゲームメーカー。『ザナドゥ』や『イース』、『英雄伝説』シリーズなど、特にRPGに定評がある。

※6 アレクセイ・パジトノフ氏……『テトリス』を制作したロシアの科学者。

※7 『ゼビウス』……ナムコが1983年にアーケードで発表した、名作と名高い縦スクロールシューティングゲーム。1000万点を目指すなど、当時のゲームファンを熱狂させた。遠藤雅伸氏が手掛けたゲームとしても有名。現在でもXbox LIVEアーケードなどで遊ぶことができる。

※8 『勇者死す。』……桝田省治氏、山下しゅんや氏、伊藤賢治氏といったら有名クリエーターが手掛ける携帯用のロールプレイングゲーム。魔王を倒す際に死んだ勇者が5日間だけ生き返り、恋人を捜すという物語。


(C)G-mode
(C)Shoji Masuda / Pyramid Inc.

※9 『俺の屍を越えてゆけ』……1999年にSCEがPS用のソフトとして発売した、ロールプレイングゲーム。開発はアルファ・システム。PSPのゲームダウンロードサービス、ゲームアーカイブで現在配信されている。

※10 桝田省治さん……ますだしょうじと読む。『天外魔境II 卍MARU』や『リンダキューブ』、『我が竜を見よ』などを手掛ける個性派ゲームデザイナー。

※11 503……正式には503iで、NTT Docomoの携帯電話の型番のこと。Java機能を搭載し、初めてiアプリが使えるようになった機種でもある。

※12 武さん……株式会社ジー・モードの社長である宮路武さんのこと。

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