クリエイターインタビュー:ゲームプロデューサー 石川雅生 (いしかわ まさお)さん

お話を聞いた人→ゲームプロデューサー 石川雅生 (いしかわ まさお)さん

 いまや携帯電話で遊べるゲームも、テレビゲーム同様、見逃せないジャンルになってきています。石川雅生さんは現在、そんな業界でプロデューサーという立場でゲーム開発に日夜励まれている方。もともとはアーケードゲームやテレビゲームの開発現場で活躍されていたという石川さんが携帯電話ゲームの開発の世界へ足を踏み入れた理由とは? ゲーム業界のさまざまな現場を知る石川さんのお話は為になること、絶対間違いなし!!

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。4月はゲームプロデューサー石川雅生さん。

第3回 さまざまなメーカーを経て、ジー・モード入社

――その後はどんなお仕事を?

石川雅生(以下石川、敬称略):その後はサポートをずっとやってましたね。『ドラゴンガン』(※1)っていう、アップライトのガンSTGがあるんですけど、それのアニメーションツールみたいなのを作ったり。その辺りでいったんデータイーストさんを退社し、1年間ゲームとは違う仕事をしていました。表向きはサラリーマンでしたね。

――ゲーム業界から一度身を引いて、サラリーマンになられた理由というのは?

石川:「ボクはホントにゲーム好きなのかな?」ってところに、1回突き詰めて行っちゃって。若気のいたりで悩むことってあると思うんですけど、ゲームから身を引いてみようと。近場でお給料もそこそこいいところにプログラマーとして入社してみて、改めてゲームプログラムのレベルの高さに驚きました。ハードウェアを同じ駆使するでも、駆使の仕方が全然違って。そこでは動けばいいって感じで、コードの美しさもない。それで、これは合わないなと(笑)。そんなことを1週間ぐらいで悟りましたね。でも、何事も1年ぐらいは経験するべきと考えて、しばらくは続けましたね。

――ゲームが大好きだったということが再認識できたと。

石川:冷却期間みたいなものが1年あったというところですね。

――次はゲームアーツさんへ入社ということですが、これはどんなきっかけで。

石川:メガCD『シルフィード』(※2)の画面がスクープで雑誌に出まして、「あっ、ゲームアーツさんしかない」って。それですぐ電話して履歴書と作品を送り、めでたく採用していただいたと。

――『シルフィード』にグッときたというのは、88版からの流れで。

石川:そうですね。高校時代、ファンレターみたいな物も書きましたね。そしたら、それが入社後に会社にあったんですよ。10年ぐらい経って、その手紙に再会するとは思いませんでした。アマチュアプログラマーが抱く質問に対して、丁寧に返事をくれたりして、感動したのを覚えています。それもあって入社したんですけど…。なんでその手紙が今もあるのかなって(笑)。

――昔の自分の手紙とかは恥ずかしいですよね。ところで、『シルフィード』には関わられたんですか?

石川:ボクが入社した時にはもうマスター寸前になってたので、残念ながら『シルフィード』には関われませんでした。その時にはもう『ルナ エターナルブルー』(※3)の作業が始まってる頃で。ちょうど戦闘システムを作るスタッフが欠けていたので、その担当になりました。

――コンシューマーとしては『ルナ エターナルブルー』が初めてと。アーケードとの違いは感じましたか?

石川:感じましたね。まず100円に縛られないことかな。アーケードをやってると、100円の縛りが年々きつくなってくるんです。それがなくて、よかった(笑)。

――逆にコンシューマだと、容量による縛りがあると思うんですが。

石川:CD-ROMが主体になり、ゲーム全体の容量自体は気になりませんでしたが、容量をどう配分するかが悩みどころでしたね。アーケードの場合は全部突っ込んでおいて、毎回引き出せばいいんですが、CDの場合は引き出すごとに読み込みが入ってしまうので。そこをできるだけスムーズにさせるのは、デザイナーと一緒に悩みました。あと派手なエフェクトを求められるんですよね。それに関しては、アーケードをやっててよかったですよ。派手なエフェクトは、いろいろ研究しましたから。

――アーケードとコンシューマで求められる派手なエフェクトって違うものです?

石川:同じですよ。例えば『グランディア』(※4)で使ったエフェクトの1つは、『レイフォース』(※5)のロックオンレーザーのようなエフェクトを使おうとか。爆発のエフェクトとかも影響があったり。あと『ルナ2』のジーンの動きのひとつは『バーチャファイター』のサラの技「コンボサマーソルトキック」PPPK(※6)だったり…(笑)。ゲーム以外のメディア、アニメや映画の影響もありますね。

――ゲームの影響が一番大きいですか?

石川:そうとも限らないかなぁ。俗に言う板野サーカス(※7)という、「マクロス」(※8)のミサイルの効果とか。あれをやりたいって人は多いですからね。特にSTGをやってる人は。『シルフィード』も影響受けてるところ多いと思いますよ。『シルフィード』は、これまでのゲームにないことをやろうとしていたので、他のメディアからの影響は大きかったと思います。

――そして、次が『グランディア』。どんな形で関わられていたんですか? それにしても制作期間が長いですよね。

石川:ルナ エターナルブルーの開発が架橋の時には、すでに企画は動いてましたからね。長いですよね(笑)。ボクはグランディアの開発には戦闘プログラムで参加しています。実は『ルナEB』の時に『グランディア』のような戦闘システムをやりたかったんですよ。ただその時は『ルナ』の続編なので、あんまり大きくシステムを変えるのもどうかなってところと、メガCDじゃ、やっぱりどうにもならんってところがありまして。で、あの形に落ち着くまでは、サターンを触り始めてから1年近くかかりました。最初はゴチャキャラ戦闘をやりたかったんです。でも、ゲームとしてうまくまとまるところまでいたらず。それなら、順番がきたら、指示を出す半リアルタイムの戦闘にしようってことで、あの形になりました。とにかく派手で、それでいて操作は簡単という戦闘をやりたかった。RPGとアーケードというボクの経験をミックスさせたものになってますね。プログラム的にもアーケードのアクションゲームに近いものだったりします。

――メガCDからセガサターンへと飛躍的にマシンスペックが向上しましたが、その違いは感じられました?

石川:感じましたね。特に擬似3Dの表現ができるようになって、マップにキャラを表示するという概念から、カメラを動かすという概念に変わったところが大きいですよね。『グランディア』の戦闘でも、コマンドが回ってきたキャラにカメラを寄せるという動きをさせていますが、2Dでずっとやってきたボクにとってはまったく新しい概念でしたね。それなりに3Dの勉強もしなくちゃいけませんでしたし。数学とかテキトーにやっていたので、ベクトルの勉強とか泣きながらやりましたよ(笑)。プログラマーを目指す人は、数学は勉強しておいた方がいいですね。

――そして、『グランディア デジタルミュージアム』を経て、ジー・モードさんに入社とのことですが、経緯というのは?

石川:その間にSCEさんに行ったりもするんですが、既にジー・モードに入社していた先輩から誘われました。携帯電話のゲームというものに興味があったので、話を聞きに行ったら、現社長の宮路(※9)とその先輩に熱く語られましてね。「携帯、おもしろいぞ!」と。ちょうど、コンシューマはハードの高性能化に伴ってゲーム開発が大規模化し、自分で携われる部分がだんだん少なくなってきて、おもしろくないなぁと思っていたのもあって。それに今までの経験も活かせるだろうと思い、入社しました。

――携帯電話というものに抵抗はありませんでした?

石川:携帯だと規模も小さいし、逆にいろいろ作れて楽しそうかなと。あと宮路から「ユーザーからの反応が早い。今日どれだけの人が遊んだとか、ダウンロードしたとかがすぐわかるから面白い。」とも聞いていましたので。手の平で遊ぶゲームというのがおもしろそうという考えが昔からあったので、特に抵抗はありませんでしたね。

――関わられている作品の数はすごい多いんですよね。

石川:当社で出してるタイトルの約1割ぐらいは関わっているかな。タイトル数だけでいえば、100以上。ただ関わる度合いがそれぞれ違います。実は、この会社に来てしばらくしてから、ジョブチェンジしました。プログラマーからプロデュース業務の方に仕事を変えていったんですよ。なので、しっかりコードを書いてたのが最初の半年ぐらいかな。そのあとはもう基本的に進行管理とサポートとかをやってました。

――プロデュースの際に、プログラマーとしての経験というのは生きてますか。

石川:生きてます! これは大きいです。ディレクターや、プロデューサーの人はそれぞれの持ち味ってあると思うんですけど、ボクの武器の1つですね。今ではプログラマとしては第一線を引いてますから、技術的に深い部分はわかりませんが、浅いところでは理解できるので。今開発を委託している会社さんと、内部の技術チームとの橋渡しみたいなことをやっていますが、これは技術の話ができないと、話が通じない部分が出てくるんです。あと工程を読むにも、だいたいこれぐらいで組めるかな、という目安がわかるので、いいですね。そのほかではデバッグから上がってきた不具合についての原因と対策の予測ができます。これはこの辺がヤバイんだろうって。これはホント大きいと思いますよ。

【第4回(4/16更新)に続く】

【編集部注釈】

※1 『ドラゴンガン』……1992年にアーケードで発表されたファンタジーガンシューティング。なお、劇中のボイスは野沢雅子さんが担当。

※2 『シルフィード』……PC8801用に発売されていた、ポリゴンを使ったシューティングゲーム。それを新たに作り直したメガCD用のソフト。ポリゴンで描かれたオープニングに、多くのメガドライブユーザーが狂喜した。


(C)1993 GAME ARTS

※3 『ルナ エターナルブルー』……1992年にゲームアーツがメガCDで発売したロールプレイングゲーム。ハイクオリティなアニメーションや豪華声優陣を起用するなどで人気を呼んだ作品。


(C)GAME ARTS/STUDIO ALEX
キャラクターデザイン/窪岡 俊之

※4 『グランディア』……1997年にゲームアーツがセガサターンで発売した、大作ロールプレイングゲーム。PSへの移植や新作がPS2で発売されるなど、根強い人気を誇る。

※5 『レイフォース』……タイトーが1994年にアーケードで発表した、縦スクロールシューティングゲーム。ショット以外に、敵をロックオンしてレーザーで倒すことができ、レーザーでまとめて倒す爽快感と戦略性の高さで人気となる。写真は続編の『レイストーム』。


(C)TAITO CORP.1978-2005

※6 PPPK……パンチ、パンチ、パンチ、キックという意味。

※7 板野サーカス……アニメーター・板野一郎が描く、スピーディーでアクロバティックな戦闘シーンのこと。アニメ「超時空要塞マクロス」の煙を出しながら、複雑に飛び交うミサイルなどが代表例。

※8 「マクロス」……異性人との戦いを描いた、名作アニメ「超時空要塞マクロス」のこと。

※9 宮路武さん……ゲームアーツを創設した宮路兄弟の弟さん。

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