クリエイターインタビュー:セガサウンドクリエイター 幡谷尚史 (はたや なおふみ)さん

お話を聞いた人→セガサウンドクリエイター 幡谷尚史 (はたや なおふみ)さん

 『ナイツ』や『スペースチャンネル5』などのサウンドを担当された幡谷尚史さんは、今年でセガに入社してから17年目と、人生行路の中で最も職歴が長い。そんな幡谷さんの仕事の姿勢は、目的意識やこだわりを持ちつつも、柔軟に仕事をこなす。さらにどれだけ愛を持って、タイトルに接することができるか。継続は力なり。長く続けるための極意を幡谷さんの人生から学ぼう。

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。12月はセガサウンドクリエイター 幡谷尚史さん。

第1回 音楽に少し触れつつの小中学生時代

幡谷尚史(以下幡谷、敬称略):わりとつまらない幼少を送っていたんでね……。

――大丈夫ですよ。そう、おっしゃる方の方がおもしろい人生歩まれてるんで。
   では、子ども時代からお話を聞かせいただければと。

幡谷:子どもの頃ですか。普通でしたね。割と暗いというか(笑)。兄弟に兄がいまして、兄がぜんそくだったので、1人でいることが多かったですね。それと小学校の時は、地元じゃなくて、越境通学をしていたんで、周りに友だちがいなくて。野球が好きで、団地の壁にボールをぶつけて遊んだりしてました。1人でできる野球ゲームがあったんですよ。野球盤の1人でやるみたいなやつ。それとかやって、スコアをつけたりしてましたね。

――野球がお好きだったんですか?

幡谷:そうですね。阪神ファンです。父の影響ですね。

――クリエイティブな活動とかは全然?

幡谷:そういう意味では、エレクトーンを習わされていたので、それが音楽の基礎になっていることは確かですけど、本当はピアノが弾きたかったんです。でも、ピアノは高くて買ってもらえなかったし、団地だから音がうるさいっていうのもあって、エレクトーンでしたね。先生が厳しくて、すごくイヤだったんですけどね(笑)。

――エレクトーンはご自身でやりたいと?

幡谷:そういうわけじゃないんです。うちは親バカだったので、いろいろやらされてた中のひとつだったんです。他にもスイミングスクールにも行かされてましたけど、水泳は全然続かなかったですね。エレクトーンだけですよ、続いたのは。

――エレクトーンをやっていたのは、いつぐらいの頃ですか?

幡谷:小学校1、2年の低学年の頃ですね。で、レッスンの時間になると、逃亡してました(笑)。本当に先生が怖くて。でも、エレクトーンって、ベースがあって、コードがあって、メロディがあって、1人でいろいろやらなきゃいけないんですよ。打ち込みといった、1人で作るような音楽に対する考え方の基礎にはなってますね。そういった意味では、エレクトーンは今に生きていると思います。

――今は音楽制作のお仕事をされてますが、当時の夢は?

幡谷:月並みですが、プロ野球の選手ですね。本当に平凡な少年でしたよ。

――他にはどんな習い事を。

幡谷:ちゃんとしたものは、水泳とエレクトーンかな。大人数で集まって、体操をするような教室にも通っていましたが、そういうのはまったくダメでしたね。ボクは人見知りで、輪の中に入っていけないというか。萎縮しちゃって。そういう情けない子どもでしたよ(笑)。

――習い事をされていたということですが、親御さんは厳しい感じで?

幡谷:非常に自由ですね、一貫して。子どもの頃はあんまり相手にされなくて、親の影響を受けるのはもう少し先ですね。

――習い事は普通しつけのための場合が多いんですけどね。
   親御さんはどういう意図で習い事をさせていたんでしょうね。

幡谷:可能性を見出したかったんじゃないでしょうか。うちの父が日銀(※1)に勤めていたんですが、突如フリーのカメラマンになったんですよ。兄が産まれるぐらいの時に。だから、写真というクリエイティブなものに対して情熱的で、ボクが産まれる頃は経済的にも苦しかったはずなんですが、息子にはいろいろな習い事をさせて、可能性をみつけてやりたかったというのはあったんじゃないかと思いますね。まさか音楽が仕事になるとは思ってなかったんでしょうが。

――そんな小学生時代を送っていたと。
   何か印象に残っている出来事なんかはありますか?

幡谷:そうなんですよね。あんまりないんですよね(笑)。すみません。でもね、小学校3年の時に、全寮制で親元を離れて生活する学校みたいなものがありまして、それで1年間鎌倉に行っていたことがあって。兄がぜんそくでそこに行っていたんですが、そのあとボクも自ら「行ってみたい!」と。それが初めての自発的な行動でしたね。そこがすごく楽しく、当時のボクの中ではすごく大きな出来事で、その時の音楽や流行っていたものは、今でも印象に残っています。ちょうどキャンディーズ(※2)とかが流行っていた頃で。履歴書(トップのプロフィール)にも書きましたが、昭和歌謡が好きなのはそこからきてますね。

――1年間寮におられたとのことですが、どんな生活を送ってましたか?
   土日には家に帰られる感じで?

幡谷:家には、一学期に何泊か帰るか程度でしたね。その学校は一学期単位で更新する形になっていて、1年間続けたんですけど、そこではずーっと野球したり、海に行ったり。材木座(※3)にありましたんでね。かなり遊びほうけていたので、成績も下がりましたね(笑)。

――人見知りだったのに、
   まったく知らない場所に行くことに対して、不安はなかったんですか?

幡谷:そうなんですよね。それまでの自分にはちょっと考えられない行動なんですけど、たまたま知っている友だちも入ったりしてたんで。でも、何なんでしょうね? のびのびやりたかったんじゃないですか。野球とか。ボクは越境通学していた都合で、小学校の野球チームにも入れなかったですし、地元の野球チームに入っていく度胸もなかったんです。団地のエレベーターホールとか、駐車場とかでボールを壁にぶつけてるだけでしたからね。

――成績はどうでしたか?

幡谷:音楽はつねによかったですね。でも、図工はダメでしたね。図画工作、まったく。

――創作という部分では、つながるところはありそうなんですけどね。

幡谷:そうなんですけどね。ホント不器用で。絵心もないし。今はわりと評価されることもあるんですけどね、のびのびと描くので(笑)。でも、その頃は全然ダメでしたね。やはり当時は音楽でしたね。さっきもキャンディーズの話題が出ましたが、思い出も音楽とリンクしていることが多いので。

――ちなみに最初に買ったレコードは?

幡谷:岩崎宏美の「センチメンタル」(※4)という曲ですね。

――レコードとかは自分から積極的に買われる方でした?

幡谷:そうでもないですね。親が買ってきたりとか、家にある物を聴くという感じですね。特にいろいろ聞き始めたのは、中学、高校の頃なんですけど、兄とは2つ年が離れてるんですが、その頃は兄の影響が大きかったですね。なので、ほとんど人の影響ですね。

――中学校に入ってからはどんな生活を?

幡谷:中学は一変して、厳しい学校だったんですよ。ホント軍隊みたいで。公立なのに、すごく進学率が高くて、予備校みたいに成績順のクラス分けとか。髪型はカリアゲで、靴下は黒じゃないとダメみたい学校で。反抗心みたいなのが芽生えましたね。

――あんまりいい思い出もなく。

幡谷:(笑)。鎌倉行って下がった成績をいったん巻き返すんですよ。それで中学に入った当初はわりと成績はよかったんですけど、右肩下がりに落ちていって。部活もブラスバンドをやってましたけど、そんなに熱心にやる方じゃなくて。ホント、ボクは会社入ってからの人なんで(笑)。学生時代はほとんど堕落してましたよ。ただ中学も高校も、どこに行きたいかと思ってからは巻き返すんですよね。中3の秋ぐらいですね。高校を下見しに行って、ここ入りたいと思ってからは頑張りましたね。

――部活にブラスバンドを選ばれた理由は?

幡谷:音楽は小学校の高学年ぐらいから、楽器の演奏会用に鼓笛隊みたいなのがあって、トランペットや木琴をやってたりしたので。それは音楽の授業の1つだったんですが、そこでトランペットもやってたということもあって、ブラスバンド部に。

――野球の方は?

幡谷:野球は全然。草野球程度です。部活がすごく厳しかったですからね。練習多いし。その頃は田無(※5)に住んでたんですけど、学校が千代田区だったので通学だけでもういっぱいいっぱいで……。

――学校以外の生活はどんなでしたか。

幡谷:新宿が通り道だったんで、友だちとずっと駅の構内で話をしてたりだとか、地下街をブラブラ歩いたりですとか。そんな日々でしたね。

【第2回(12/13更新)に続く】

【編集部注釈】

※1 日銀……日本銀行。日本銀行券、つまりお金を発行している銀行でもある。

※2 キャンディーズ……70年代の日本のアイドルグループ。ラン、スー、ミキの3人組。春一番などのヒット曲も多い。解散発表の際の「普通の女の子に戻りたい」のフレーズは流行語に。

※3 材木座……神奈川県鎌倉市の南に位置する相模湾をのぞむ地区。

※4 岩崎宏美の「センチメンタル」……岩崎宏美は70年代の歌手。センチメンタルは3枚目のシングルで、先日なくなった阿久悠氏が作詞を担当。

※5 田無……東京都の中央にある西東京市にある町。ちなみに千代田区までは電車で約40分近くかかる。

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