クリエイターインタビュー:『バイトヘル2000』アシスタントプロデューサー 長井伸樹(ながいのぶき)さん

お話を聞いた人→『バイトヘル2000』アシスタントプロデューサー 長井伸樹(ながいのぶき)さん

 ゲーム開発の仕事は徹夜などもあり、キツイもの。そんな状況の中で、楽しく仕事するためには息抜きがとても大切だと語る長井伸樹さん。趣味がメインで、仕事はサブ? そんな長井さんの仕事っぷりから業界の荒波を越えていく極意を学ぼう。電撃PSPにて、好評連載中の長井さんのコラム「ちょっとヘル2007」と合わせて読めば、開発秘話の楽しさ倍増必至!

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。9月は『バイトヘル2000』アシスタントプロデューサー 長井伸樹さん。

第4回 トンチの利いたゲームを作っていきたい

――そして『ちょっとショット』(※1)になるわけですが、間にはリフレッシュで?

長井伸樹(以下長井、敬称略):いや、すごく短くて。即行ですよ、なんだこれってぐらい(笑)。『バイトヘル』の韓国版とかを作っていたので。

――北米版も出ているんですよね。日本版との違いというのは?

長井:『WTF』(※2)。これは『ちょっとショット』と平行して作ってましたね。違いは基本、言葉ぐらいですね。あとはタイトル画面でのピエールさんの歌とか。これは外国の方に入れてもらいました。で、びっくりしたのがパッケージ。ボクらも「これは売りもんなの?」って(笑)。イラストに関しては、アメリカのD3さん(※3)から送られてきたんですけど、「このゆるさ、わかってるなぁー」と。向こうのプロデューサーみたいな人が、イタリアのマフィアみたいな、60歳ぐらいのおじいさんで。「オレはこれがおもしろいから」って言ってくれて、たぶんその人がやってくれたんだと思うんですけど、雰囲気出てますよね。

――で、お話を戻しますが、『ちょっとショット』なんですが……。

長井:韓国版の『バイトヘル』を作っている時に、カメラを出すから「なんか考えてほしい」って言われて。なんかって言われたって、カメラってゲームにするのが難しいんですよ。携帯ゲーム機なので、手に持っているから『Eye Toy』(※4)みたいなこともできないし。誰かがそんなことをやりますって言ってたんですけど。それで瀧さんにもちょっと相談したりして、おもしろ映像を作るのはアリだよねって意見もあったし、単純に『バイトヘル』の「心霊写真」(※5)みたいに写真を撮ったら何か写っているってのも楽しいよねって、いろいろアリもしない夢のような話をしてたんですけど。その中で画像をいじるのをやってみようと。で、やってみるんだったら、本格的なものをやってみようということになって、生まれたのが『ちょっとショット』ですね。

――ゲームでなくて、ツールということで苦労があったと思うのですが。

長井:カメラがまだ開発途中だったりしたんで、カメラの制作チームとコラボをして作らなきゃいけない。こっちが作っている間にあそこが変わった、ここが変わったって、まずそのやりとりが大変でしたね。あと、このソフトの形に決めるのが大変でしたね。カメラを使ったゲームじゃなくて、ツールでいいですよねというコンセンサス。それを取るのにも苦労しました。そこが見えたら、あとは性能を詰めていくだけなんですが、そこも大変でしたし、開発期間が短かったので、やっぱりこのソフトも全体的にキツかったですね(笑)。

――開発中のおもしろエピソードとかありますか?

長井:おもしろエピソードですか……。メディア用に出す画面写真に自分が写るしかないじゃんってのがありまして、イヤでしたね。パッケージの写真の人物、全員うちの社員ですもん。

――ちなみに長井さんはカメラに詳しいんですか?

長井:全然詳しくないですよ。かつてデジカメ持ってて、韓国で酔っ払って失くしたぐらいで(笑)。6カ月ぐらいしか使わなかったんで。カメラってものと縁がなくて、もともと写真を全然撮らなくて、自分の写真もほとんど残ってないんですよ。だから、逆にカメラに対して、ポリシーみたいなモノがなかったのがよかったのかもしれませんね。この性能でできる範囲で、楽しいことを考えればいいじゃないですかっていう考えだったので。

――そろそろまとめに入りたいと思うんですが、
   今後こんなゲームを作ってみたいなど、夢はありますか?

長井:作りたいゲームというのはあるんですけど、売れなさそうなんで(笑)。ボードゲームみたいなのを作りたいとかになってしまうので、時流にはちょっと合わないんですよ。『信長の野望』(※6)でも、姉小路みたいな武将でちまちま生き延びたら勝ちみたいな遊び方が好きなんで、そういうゲームを作りたいんですけど、絶対売れないじゃないですか、地味で。ただまぁ、今後作るとするとPS3の時代になってきたので、ちょっと……なんていうのかな。PS3のスゴイ面ってあるじゃないですか。それを真っ当な形じゃないんだけど、こりゃスゴイって思わせるようなゲームを作りたいですね。『KILL ZONE』(※7)みたいな、「ガチンコでやったるぜぃ!」みたいなゲームもスゴイじゃないですか。でも、あれだと疲れるんで、向いてないんで……。ハイスペックなところは使ってるんだけど、こういう使い方もあるのかって思わせるような、トンチで行けるようなゲームを作りたいですね。

――まだまだ今からでも、ぜひ大作を作ってくださいよ。

長井:今から先発型に戻れって言われても体力ないんでムリムリ。リリーフですよ。もっと若いうちに大作を作ればよかったんですけどね。確実にユニークなゲーム担当みたいな。プレゼンしに行くと、笑わせなきゃいけないみたいな雰囲気になってて。芸人じゃないのに。いまさら真面目なゲームが作れない、そういうキャラ付けなんですよね。奇ゲー担当(笑)。最初に配属されたところって結構でかいんですよね。そこで経験したことで、系統が決まっちゃいますね。

――最初となると『モンスターファーム』チームになりますよね。
   そこでよかったと思います?

長井:よかったと思いますね。当時の先輩や後輩が今でもつながってますし、わりとおもしろいことをやりたいって人たちが多くて。ゲームは好きなんですけど、ゲームゲームしてない人ばかりで、こんなくだらないこと考えてるんだって、おもしろかったですね。なので、性格には合ってたと思ってますね。あと前の会社にいた時からずっと思ってたんですけど、モテたい。「ゲーム作ってるんですか? キャー」みたいな(笑)。SCEとかはモテそうでいいなぁって思って、SCEに来たけど、全然モテなくて、どうしたものかなと。今後の夢としては、モテる人になりたいってのも加えておいてください(笑)。とはいえ、育ちの面で負の面しかないので……。履歴書、最初ウソ書こうと思ってて、バンド、サーフィンやってますとか、最近ワインのテイスティングを始めましたとか(笑)。

――自己PRがどこでもすぐ寝られますですもんね。

長井:これは重要ですよ。ゲーム制作は体力勝負なので。

――(笑)。では、最後に未来のクリエイターたちにメッセージを。

長井:社外活動でのつながりが、ゲームにフィードバックできたりもします。もちろんゲームはやらなきゃいけないんですけど、映画でも、刺繍でも何でもいいので、それ以外の活動を大事にしてほしいですね。そうしないと、引き出しっていうのが出てこないと思うので。あと精神安定的にも社外の活動、息抜きがあるといいです。真面目にやるのはもちろんなんですけど、そればっかりではつぶれてしまいますし。つぶれられちゃうと、周りも困りますしね。それと社外の活動では、普段接点のないような人との出会いもありますから。ボクの場合は、追っかけで杉作J太郎さん(※8)と仲良くなりましたし。その際に心掛けたいのが、悪い人はあんまりいないという点。怖がらずに誰とでもコミュニケーションを図れると、公私ともに役立つと思いますよ。

――お忙しい中、ありがとうございました!

実弥島巧さんの格言

仕事は90%ぐらいがコミュニケーション
積極的に話かけるように!

【編集部注釈】

※1 ちょっとショット……2006年11月にPSPで発売されたソフト。PSP用のカメラのほかにエディットソフトが同梱されており、撮影した写真に新聞風にしたり、モザイクをかけたりと、さまざまな加工を施すことができる。また15秒の動画の撮影も可能。

※2 WTF……北米版の『バイトヘル2000』で、Work Time Funの略(なんじゃこりゃといったような意味)。ちなみに発売元はディースリー・パブリッシャー。

※3 D3さん……日本では『SIMPLE2000』シリーズで有名な、ディースリー・パブリッシャーのこと。

※4 Eye Toy……PS2用のカメラのこと。カメラ対応のソフトを使えば、カメラを通して、テレビに自分の姿を表示。体を動かすことで、テレビの画面上の自分の姿もリアルタイムで動かすことができ、飛んでくる敵を払い落とす、ボールをリフティングするなどのアクションを実際に体を動かして楽しめる。

※5 心霊写真……『バイトヘル2000』のミニゲームの1つで、正式名称は「心霊写真鑑定人2」。表示された写真が心霊写真かどうかを鑑定するというミニゲーム。


(C)2005 Sony Computer Entertainment Inc.

※6 信長の野望……コーエーの看板タイトルとも言える、歴史シミュレーションゲーム。ちなみに姉小路は、飛騨の大名。武田信玄、上杉謙信、織田信長といった強力な大名に囲まれており、シリーズ通して最弱大名と言われている。

※7 KILL ZONE……海外で人気を博した、近未来を舞台にした3Dアクション。PS3で『2』の発売が予定されており、緻密に描き込まれたグラフィックなどで話題を呼んでいる。

※8 杉作J太郎さん……俳優、タレント、ミュージシャンなど、さまざまな分野で活躍しており、現在は映画監督という肩書きも持つマンガ家。モーニング娘。とエヴァンゲリオンのファン。

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