

本好きなご両親の影響で、幼い頃から本に囲まれて生活してきたと語る実弥島巧さん。作家にはなるべくしてなったというその人生の裏側には、人と運を呼び寄せる類まれなポジティブさがあった! 今回は人生行路初のフリーランスでお仕事をするクリエイター。会社に勤めるのではなく、自分で仕事を取ってきて働くということについても知ろう。
――小学生の時に漫画の仕組みを知って驚かれたとのことですが、
印象に残っている漫画を教えてください。
実弥島巧(以下実弥島、敬称略):漫画雑誌の存在を知ったのは小学5、6年ですが、それ以前に読んではいて。うちにはドラえもん(※1)ぐらいしかなかったんですが、いとこの家にはいろんな漫画があって、なかでもパタリロ!(※2)が大好きで。主人公のパタリロの生き様にすごく感銘を受けて、パタリロって守銭奴なんですけど、「私もこういった人間になろう!」と思いましたね。それ以外では記憶に残っているのは、子どもの頃病気がちでよく寝込んでたんですよ。そのときも私が本を読みたがって、うちの親が頭が痛いときに文字の本を読んだら、余計頭が痛くなるからって、漫画を買ってきてくれまして。それが愛のアランフェス(※3)。少し大人の恋愛モノで、小学校2、3年の子が読むような漫画でなくて、かなりインパクト強かったですね。
――年齢を考えたら、普通はコロコロコミック(※4)の漫画とかを選ぶのに……。
何度もいいますが、いいご両親ですよね(笑)
実弥島:ですね。あとエポックメイキング的な作品は、何度か転校した先の友だちに勧められた漫画でエイリアン通り(※5)。それを読んで「おもしろいや」となって、そこから少年漫画含めいろんな漫画を読み漁るように。ちょうど少年ジャンプが盛り上がってきてるときで、キン肉マン(※6)とか、北斗の拳(※7)とか、天地を喰らう(※8)とか、あと男塾(※9)とか。男塾、好きだったぁ。月光が好きでしたね(笑)。男塾いいですよ……。本当に手当たり次第、漫画を読んでいて、あさりちゃん(※10)とか、うわさの姫子(※11)とかも読んでれば、少し世代の古い竹宮惠子先生(※12)とか、手塚治虫先生(※13)の作品とか、とにかく読みまくってましたね。
――小説を書くうえで、読んできた漫画の影響は受けていると思いますか?
実弥島:漫画からの影響はそれほどないと思います。どちらかというと、小説だと思います。
――そもそも小説を書くような仕事につきたいと思ったのはいつ頃ですか?
実弥島:作家になりたいと思ったのは、小学6年生ぐらいのときですね。それでそのときからこんな考え方をしてたのがおかしいんですけど、対象年齢が中学生ぐらいのお話を書こうと(笑)。で、自分が中学生になっても対象年齢は中学生にしよう。高校生になっても対象年齢は中学生にしよう。以降ずっと対象年齢は中学生できてますね。なぜそう思ったかはいまだわからないんですけど、きっと書きやすいと思ったんでしょう(笑)。それで現在、中高生対象の小説というとライトノベル。だから、そういったものを今書いてるんだと思います。
――昔は今ほどライトノベルというジャンルが盛んではなかったですよね。
実弥島:そうなんですよ。普通は作家になる場合、新人賞とかに応募するんですけど、私が読んでいたのは、SFマガジン(※14)とか、SFアドベンチャー(※15)とか。そんなのばっかりだったので、自分が書きたいと思っているものと、そこで求められているものが違う。コバルト文庫(※16)なのかなとも思ったんですけど、当時は恋愛小説が主体だったので、これも違う。子どもの頃は自分が書きたいものを書ける場所がなかったので、ごまかしごまかしSF小説や推理小説を書く勉強をした方がいいのかなって思ってましたね。年月が経って、電撃文庫(※17)とかスニーカー文庫(※18)とかが出てきて、今思えば私が対象に考えていた小説ってのは、この辺のことだったのかなと。
――勉強のために実際に小説を書いたりもしていたわけですか?
実弥島:小学生のときに友だちに「小説というのを書いてみよう」と誘われて、書いてみたら、意外に楽しくて、それをずっと続けちゃったと。中学生3年ぐらいのときにはなりたいではなく、もう作家になると決めてましたね。つくば科学万博(※19)で、未来の自分に手紙を送るってのがありまして、キレイに忘れてたんですけど、自分に手紙を書いてたんですよ。それで2001年のお正月にすごい汚い字の自分宛ての手紙が届いて、読んでみたら「作家になってなかったら殺す!」と(笑)。それぐらい強く作家になるんだと思ってたみたいですね。とにかく過去の自分に殺されなくてよかったと今は思ってます(笑)。
――普通、子どもの頃の夢って漠然としてたりするものなんですけどね。
実弥島:子どもの頃になりたい職業ってなんですかって聞かれて、作家か編集としか答えた記憶がないんですよ。普通お嫁さんとか、看護婦さんとかって言いますよね。そんなことを言った覚えもないし、親に聞いても一度も耳にしたことがないって(笑)。
――漫画・アニメとくれば、テレビゲームですが、テレビゲームとの出会いは?
実弥島:中学は私立に通ってたんですよ。そこはお金持ちが通うような学校だったんですが、友だちの家に遊びに行ったら、ばあや(=お手伝いさん)とかがいるような家で。ものすごく大きなテレビの横に、もう1台テレビがあるんですよ。それが私の家のテレビと同じぐらいの大きさなんですが、ゲーム専用のテレビ! そこにファミコンがつないであって、『マリオブラザーズ』(※20)をずっとサルのようにプレイしましたね(笑)。それで「こんなおもしろいものがあるんだ」って家に帰って、「なんでもするから買って!」とねだって、ファミコンと『マリオブラザーズ』を買ってもらいました。それが中学1年のときですね。その後は微妙な小遣い制になっていたので、いろいろやりくりして、『ゼビウス』(※21)とか、『ドルアーガの塔』(※22)とかを買って、狂ったようにやってました。なんかナムコさんばっかりなんですけど……(笑)。
――人生を変えた1本ってありますか?
実弥島:ジャンプ(※23)に『ドラゴンクエスト』(※24)というゲームが出る記事が出ていて、とりあえず鳥山明先生好きだしみたいなノリで買ってもらったんですが、すごいハマッてしまって(笑)。ゲームは1日何時間とは言われてなかったんですが、さすがに夜遅くまでやってると怒られるじゃないですか。だから、深夜にテレビのある部屋に行って、光が漏れないようにテレビに毛布をかけて、ずっとこっそりプレイしてましたね。
――『ドラゴンクエスト』で、本格的にゲームにハマったと。
実弥島:そうですね。『ドラクエ』から転落人生が……いや、ゲーム人生が始まります(笑)。その後はロールプレイングからシミュレーション、アドベンチャーなど、いろいろ遊ぶようになりましたね。そして、その辺りから徐々に金遣いも荒くなってきて、アルバイトもするようになって……。でも、ただアルバイトするだけじゃもったいないなって。当時好きなアイドルがいたんですけど、「どうせなら出待ちしながらお金を稼ぎたいよね」ってことで、そのアイドルがレコーディングしているスタジオの隣のコンビニでバイト。アイドルに物を売りながら、貯めたお金でゲームを買ってました(笑)。とにかくお金が欲しくて、それ以外にディズニーランドで働いてたり、新幹線のホームでお弁当売ったり、本屋さんでもバイトしてましたね。基本仕事に対する動機は今と変わってません(笑)。
――アルバイト三昧で作家という夢がかすんだりはしませんでしたか?
実弥島:作家になりたいという夢は変わってませんでしたね。ただ作家という好きなことでお金がもらえて、好きなゲームや漫画も買えるなんて、一石二鳥!って少し動機は不純になってきてましたね(笑)。就職したのも、就職すればゲームがいっぱい買えると思ったからですし(笑)。
――作家になる前に、編集のお仕事をされていたんですよね?
実弥島:ぶらぶら怠惰な生活をしていたら、知り合いのお姉さんが心配してくれて、そのときに作家になりたいって話をしたら、「勉強のために編集の仕事をやってみたら? 知り合いが編集部にいるから紹介してあげるよ」って言われて、渡りに船だ!と。それで働くようになったのが、アニメ関係のムックとかを作っている編集部。なんの因果か、最初にやった仕事はガンダム(笑)の何周年だかの記念の本でしたね。ちなみにあとづけでどんどん年表が増えていくので、もう断念しましたが、この当時はガンダムの年表がそらで言えましたね(笑)。
【編集部注釈】
※1 ドラえもん……いわずと知れた、藤子・F・不二雄氏の漫画。ちなみにゲームだけでも50タイトル近く発売されている。

※写真は『ぼく ドラえもん』(DC)
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日
(C)2001 SEGA TOYS
※2 パタリロ!……島国マリネラ王国を舞台に、国王パタリロとそれを取り巻く側近たちとのやりとりが描かれる、魔夜峰央(まやみねお)氏のギャグ漫画。実弥島さん曰く、「Fly me to the Moon」と「忠誠の木」(ともに10巻に収録)が泣けるのでオススメとのこと。
※3 愛のアランフェス……フィギュアスケートを題材にした槇村さとる氏の漫画。主人公の森山亜季実が、パートナー黒川貢との恋愛を通じて、才能を開花させていく姿が描かれる。
※4 コロコロコミック……1977年に小学館から創刊された、小学生向けの漫画雑誌。かつてのコロコロ世代だった大人向けに、過去の名作をまとめた「熱血!!コロコロ伝説」が現在発売されたりもしている。
※5 エイリアン通り……エイリアンストリートと読む。アラブの石油王の息子・シャールを中心に展開する、成田美名子さんの青春漫画の名作。
※6 キン肉マン……1979年から週刊少年ジャンプで連載されていた、漫画家ゆでたまごのデビュー作であり、代表作。アニメやゲーム(ファミコン版ではブロッケンjrの取り合いになった)などにもなり、現在では「キン肉マン2世」が連載されているなど、未だに根強い人気を誇る。
※7 北斗の拳……原作・武論尊、作画・原哲夫による漫画。20代以降の男子なら知らない人はいないはず。「お前はもう死んでいる」や「ひでぶ」などのセリフでも有名。
※8 天地を喰らう……三国志を題材にした本宮ひろ志氏の漫画。ゲームファンには、カプコンから発売された『天地を喰らう2 赤壁の戦い』の方が有名?

(C)本宮ひろ志/モト企画
(C)集英社
(C)CAPCOM CO.,LTD.1992,1996 ALL RIGHTS RESERVED.
※9 男塾……週刊少年ジャンプで連載されていた、宮下あきら氏の魁!男塾のこと。熱い名言の数々や架空の出版社・民明書房の書籍による破天荒な解説などにより、多くのファンに愛されている作品。ちなみに月光は三面拳最強の男。
※10 あさりちゃん……小学生・浜野あさりの日常を描いた、室山まゆみさんのギャグ漫画。パタリロ!同様、長寿漫画で2007年7月現在で83巻まで発売されている。
※11 うわさの姫子……主人公・梅宮姫子とその友だちとの青春を描いた、藤原栄子さんの学園コメディ漫画。
※12 竹宮惠子先生……現在アニメにもなった「地球へ…」や少年同士の恋愛を描いた「風と木の詩」などの作品で知られる漫画家。
※13 手塚治虫先生……数々の作品を残し、多くの漫画家や作家に影響を与えたマンガの神様。ちなみに氏にちなんで命名された小惑星が存在する。
※14 SFマガジン……早川書房から発売されている、サイエンス・フィクション専門の月刊誌。
※15 SFアドベンチャー……1979年に徳間書店から刊行された、サイエンス・フィクション専門誌。93年に廃刊。ちなみに80年代はSFブームだったため、数多くのSF雑誌が発売され、キティちゃんなどで知られるサンリオも、サンリオSF文庫という文庫レーベルを発売していた。
※16 コバルト文庫……集英社から発売されている少女向けの小説のレーベル。
※17 電撃文庫……1993年にメディアワークスより創刊した、ライトノベルを中心としたレーベル。

(C)高橋弥七郎・いとういのぢ・メディアワークス/『灼眼のシャナ』製作委員会
※18 スニーカー文庫……正確には角川スニーカー文庫。角川書店から刊行されている文庫レーベル。
※19 つくば科学万博……正式名称は国際科学技術博覧会。1985年3月から半年間、現在の茨城県つくば市で開催された。マスコットキャラクターは、コスモ星丸(ほしまる)。記念の500円玉も発行された。
※20 マリオブラザーズ……マリオと弟のルイージが下水道にわいたカメやハエ、カニを倒していく、画面固定型のアクションゲーム。現在ではゲームボーイアドバンスのファミコンミニシリーズや、Wiiのバーチャルコンソールで遊ぶことができる。
※21 ゼビウス……1983年にナムコがアーケードで発表した、名作シューティングゲーム。ファミコン版は1984年に発売されている。WiiのバーチャルコンソールやXbox 360のXbox Live Arcadeなどで現在でも遊ぶことができる。
※22 ドルアーガの塔……1984年にナムコがアーケードで発表した、アクションゲーム。これまでになかった宝箱からアイテムを入手し、主人公のギルを成長させるというロールプレイング的な要素などで人気を博す。ファミコン版の発売は翌年の1985年。
(C)NBGI
※23 ジャンプ……週刊少年ジャンプのこと。ちなみにテーマは、友情・努力・勝利。
※24 ドラゴンクエスト……ドラクエと略される、日本のロールプレイングゲームのパイオニア的ソフト。第1作目は1986年にファミコンで発売されており、スーパーファミコン版やゲームボーイ版、パーソナルコンピューターのMSX(エムエスエックス)版も存在する。開発はチュンソフト