クリエイターインタビュー:『テイルズオブアビス』メインシナリオ担当 実弥島巧(みやじまたくみ)さん

お話を聞いた人→『テイルズオブアビス』メインシナリオ担当 実弥島巧(みやじまたくみ)さん

 本好きなご両親の影響で、幼い頃から本に囲まれて生活してきたと語る実弥島巧さん。作家にはなるべくしてなったというその人生の裏側には、人と運を呼び寄せる類まれなポジティブさがあった! 今回は人生行路初のフリーランスでお仕事をするクリエイター。会社に勤めるのではなく、自分で仕事を取ってきて働くということについても知ろう。

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。7月は『テイルズオブアビス』メインシナリオ担当 実弥島巧さん。

第1回 ご両親と本と魚に囲まれて育った子供時代

――さっそくですが、幼稚園ぐらいから生い立ちをお話してもらえますでしょうか?

実弥島巧(以下実弥島、敬称略):幼稚園の頃は何も考えてなくて、ただ生きていただけですね(笑)。当時はいかに周囲の大人にイタズラをして困らせるかしか考えてなかったので。

――どんな遊びをよくしていましたか?

実弥島:人形遊びが好きでしたね。それでリカちゃん(※1)と、そのお友だちのなんとかちゃんが彼氏を取り合って血みどろな三角関係になったりとか(笑)。これは親の仇でとか。昼メロのようなドロドロの設定のおままごとばっかりしてました。

――オリジナル設定のままごとですか。
   シナリオライターとしてのルーツが早くも出てきましたね!

実弥島:で、リカちゃんの男の子の友だちが気持ち悪かったんですよ。なので、いつも仮面ライダー(※2)とか、ウルトラマン(※3)とか。あとウルトラマンの怪獣とかがリカちゃんの相手役(笑)。でも、よく考えると、怪獣の方が気持ち悪いですよね……。

――漫画とかアニメには、まだハマってない感じで。

実弥島:子ども向けの本は読んでましたが、漫画はまだですね。アニメはもう見てたと思います。実はアニメにハマるようになったきっかけは確実に父親で(笑)。これは小学生ぐらいの頃の話なんですが、テレビの前に正座させられて、「これから始まるアニメはすばらしいから1話からちゃんと正座して見ろ!」って言われたのが、ガンダムの再放送(笑)。だから、アニメとかを見始めたは父の影響だと思います。

――子どもの心を持った、いいお父さんですね(笑)。

実弥島:うちの父の話題はすごいですよ。紙面に載せちゃいけない武勇伝もいっぱい出てきちゃうんで(笑)。

――お父さんはオタクってわけではないですよね?

実弥島:新しいものがなんでも好きなんですよ、別にアニメや漫画に関わらず。私の子どもの頃って、まだビデオデッキが珍しい時代で。ビデオデッキが発売されたって聞いたら、買ってきて、夜、部屋を真っ暗にして、エクソシスト(※4)のビデオとか見せられて……。それ以来、私怖いのがトラウマなんですけど(笑)。その頃、うち超貧乏だったんですよ。キッチンと6畳一間しかないような、クツを脱ぐスペースすらないようなぼろっちいアパート住まいで、ビデオデッキを買えるような余裕ないのに、ビデオデッキはあったんですよ(笑)。意味わからないじゃないですか。父は破天荒(はてんこう)な人ですよ。

――今度、武勇伝も含め、お父さんに取材をしてもいいですか。

実弥島:今日インタビューされるって、父に話したら、「なんでオレに取材が来ないのか」って言ってましたよ(笑)。

――ぜひ人生行路の最終回あたりでお願いします!
   やっぱりお父さんからは影響をかなり受けてますか?

実弥島:そうなんですね。うちは共働きで、母親が朝9時から夕方5時までの仕事。父親は魚河岸に勤めてたんで、朝早くて昼にはもう帰ってきてたんですよ。だから、昼間の時間遊ぶのは父親で、オタクなことをいろいろ教えられてましたからね。一緒にいる時間も父親の方が長かったので、イメージとしては父親が母親、母親が父親と逆なんですよ。だいたい母親の方がお酒も博打も好きだったんで。競馬を教えてもらったのも母親ですしね(笑)。

――普通、お母さんは「アニメ、見ろ」なんて言いませんからね。
   そういった意味では、お父さんだからこそ受けた影響ってのはありますね。

実弥島:でも、うちの母はアニメ見ても文句言いませんでしたね。あと文字があって、漢字にルビがふってあれば覚えるから、本なら漫画でもいいっていう人でした。そもそも両親が本を読むのがすごく好きなんで、生まれたときからその姿を見ていて。家にも本がいっぱいあったんで、そういった環境からの影響はかなりあると思います。さっきも言いましたが、うち貧乏だったんで(笑)、お小遣いもらえなかったんですが、本だけは結構買ってもらえてましたね。

――ご両親はどんな本を読まれていたんですか?

実弥島:小説がメインでしたね。ジャンルは恋愛モノも、推理小説も、ノンフィクションみたいなものも、なんでもありました。その頃はまだ私も子どもだったんで、そんな読めませんでしたけれど、子ども用の本は買い与えられて、ずっと本ばっかり読んでました。実は子どもの頃、漫画の存在を知らなくて、本屋には文字の本しかないと思っていて。その後、ドラえもん(※5)を知り、「こういう絵のついた本もあるんだぁ」と驚いて。でも、まだ単行本の存在しか知らなくて、小学生5、6年のときに雑誌で連載したものを単行本にするって知り、「えーーーー、マジでーーーー!」みたいな(笑)。そこから漫画を一気に読むようになりましたね。だから、それまでは世界名作文学的な本ばっかり読んでましたよ。ちなみに家の本棚にジャンプコミックの「男一匹ガキ大将」(※6)があって、父親がよく「これはオレのバイブル。主人公の子分の生き様にあこがれる!」と言ってて、子ども心に「バカじゃないの!」って思ってましたね(笑)。

――やっぱりナイスなお父さんですね(笑)。
   文学少女的なエピソードなんかありますか?

実弥島:私はよく覚えてないんですけど、小学校のときの夏休みの課題で、夏休みの間に100冊本を読んで感想をつけて、提出したらしいんですね。

――す、すごいですね。夏休みを40日としても、1日平均3冊弱ですか?

実弥島:今でもそうなんですけど、本を読むのが早いんですよ。普通の文庫本なら、2時間もあれば読んじゃうんで、1日3冊ぐらいなら全然余裕。さすがに京極夏彦先生(※7)とかの分厚いのだと半日ぐらいかかりますが。

――それでも十分早いと思いますよ。実弥島式速読法?
   小さい頃から本をよく読んでたからでしょうかね。

実弥島:読み方を知ってるんでしょうね。こう読むと効率がいいって。よく本を読むと眠くなるって言うじゃないですか。その経験が子どもの頃からずっとなくて、本を読み出したら、逆に寝られなくなっちゃうぐらい本が好きだったんですよ。でも、1冊だけそれを読んだら、絶対寝られるって本がありまして。中学生の1、2年のときになにを思ったのか、マルクス(※8)の経済学原論みたいな名前の本を図書館で借りて、電車の中で読もうと1ページ目を開いたきり、そこからの記憶が……(笑)。そのとき初めて「これが本を読んで眠くなるってことなのか」ってわかりましたね。この本を読んで以来、私は経済は苦手ですよ(笑)。

――貧乏、貧乏と何度もお話が出てますが……。
   失礼かと思いますが、なにか貧乏エピソードはありますか?

実弥島:特に貧乏ネタで面白いものはないのです。ただ父親が魚河岸からタダでいろいろもらってきてたので、貧乏だったんですけど、お魚は豪華でしたね。マグロが余ったから味噌汁に入れようとか。あと冬場はよくあんこう鍋食べてたんですけど、肝ばっかりとか。でも、それを食べたら、家族全員が夜中に「かゆい、かゆい」とジンマシン(笑)。貧乏でしたが、本とお魚はいっぱいありましたね。いまだにその2つは好きですし。

――普通同じものばかりだと飽きたり、嫌になったりしますが、
   そういったことはありませんでしたか?

実弥島:本に関しては「これを読みなさい!」とか強制はされなかったので、今でも好きなんでしょうね。

――ご両親はそれほど厳しくはなかったと?

実弥島:礼儀に関しては厳しかったですね。目上の人への言葉遣いとか、ご飯は食べ残したらダメとか。今だと虐待って言われるかもしれませんが、「食べたくない……」って言ったら、お箸で頭をバーンって、たんこぶできるまで叩かれて。さらに「食べなくていい」って取り上げられて、ご飯を食べられなかったことがあって、おかげさまで好き嫌いはないですね(笑)。勉強とかはどうせ自分たちの子どもだからたかがしれてる。トンビはタカを産むわけないって言われてて(笑)。しつけは厳しかったですけど、「あれしろ、これしろ」っていうのはなかったですね。

――ホントにご両親の影響は受けてますよね。

実弥島:私、ひとりっ子なんで、他に影響を受けるところがなくて。あと引越しばっかりして……。だから、よけい貧乏だったりするんですけど(笑)、普通は学校とかで子ども同士のコミュニティができるじゃないですか。でも、中学までに5〜6回引越ししてたので、なかよくなってもすぐにお別れだったんで、昔からの友だちっていないんですよね。友だちづきあいが希薄なぶん、両親との関係は濃厚だったと思います。

【第2回(8/10更新)に続く】

【編集部注釈】

※1 リカちゃん……タカラ(現在はタカラトミー)が生んだ、日本産の着せ替え人形。人形は持っていなくても、「私リカちゃん」というリカちゃん電話の声は知っているという人も多いはず。ちなみにリカちゃんの本名は香山リカ。また ボーイフレンドは、初代はわたるくん、2代目はマサトくん、3代目は佐藤イサムくん、現在はかけるくん。

※2 仮面ライダー……現在でもシリーズ作が制作されている、石ノ森章太郎原作の特撮テレビドラマ。トレーディングカード付きのスナック菓子が爆発的な人気を呼ぶなど、社会現象を巻き起こした作品でもある。仮面ライダー1号は、せがた三四郎でおなじみの藤岡弘、氏。

※3 ウルトラマン……特撮の神様・円谷英二(つぶらやえいじ)氏監修により、制作された特撮ヒーロードラマ。ウルトラマンはもちろん、劇中に登場した怪獣の人形も数多く発売された。

※4 エクソシスト……日本では1974年に公開されたアメリカのホラー映画。少女に取り憑いた悪魔と神父との壮絶な戦いが、リアルな描写で描かれ、いまだに根強い人気を誇る傑作。

※5 ドラえもん……いわずと知れた、藤子・F・不二雄氏の漫画。ちなみにゲームだけでも50タイトル近く発売されている。


※写真は『ぼく ドラえもん』(DC)
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日
(C)2001 SEGA TOYS

※6 男一匹ガキ大将……1968年から5年間、週刊少年ジャンプで連載されていた本宮ひろ志氏の漫画で、本宮氏の出世作ともいえる作品。男気あふれる主人公・将戸川万吉がケンカを通じて仲間を増やしていき、日本を動かす男へと登りつめるという物語。

※7 京極夏彦先生……きょうごくなつひこと読む。怪奇モノや時代小説を得意とする作家。

※8 マルクス……本名はカール・ハインリヒ・マルクス。ドイツの経済学者。「資本論」などの著作が有名。

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