

両親がともに美大出身で“絵家族”といった環境に育ち、子供の頃から絵を描くことが大好きだったという横尾有希子さん。『太鼓の達人』に代表されるかわいい系のキャラクターだけでなく、『みずいろブラッド』のようなキレた世界観も想像できる柔軟な感性はどのように培われてきたのか……? 個性派クリエイターを目指すなら、横尾さんの生き様は間違いなく参考にしたいところ。
『みずいろブラッド』――最新作『みずいろブラッド』のお話をお聞かせください。まずこういうゲームを作ろうと思ったきっかけは?
横尾有希子(以下横尾、敬称略):あらかじめおおまかな企画を考えてまして。ちょうどバンダイと統合する直前、半年ぐらい前の統合前飲み会で、バンダイの人と知り合って、「一緒に何かできるといいですね〜」という話になって。そして社交辞令を超えて実践した。そのときに話をしていた人=初代プロデューサーは家が近くて、中野(※1)の居酒屋とかで話をよくしてて、「統合前に話を決めちゃって、ゲリラ的に行こう」と。かわいらしいキャラでバシュッ!とちょっと毒のある感じで行こうというのはあったので、勢いで通してしまおうというノリでやってたんですけど、実際に企画が承認されたのは統合後数カ月後、と結構かかっちゃいましたね。
――かなりキャラが全面に出たゲームですよね。
横尾:ニンテンドーDSで、最初は全部しりとりのゲームにしようという事でしたが、やっぱしりとりだけだと、遊びが広がらなくて……。文字入力系で何かできないかと。それで言葉が持つリズムを使ったゲームをいくつか考えて、ちょうど去年の今頃なんですけど、いろいろ案を出し、確実そうなものから試作したんですよ。でも、言葉を使った勉強っぽいゲームで、遊ぶ事で学習的付加価値をつけるものは今いっぱい出てますし、後発なので存在自体中途半端になりそう。せっかく独特の世界観を設定してるんだから、キャラで押した方がいいだろうって意見があって……。そこで吹っ切れて、キャラで押した方がいいということで、キャラや世界観を全面に押したゲームに。「とにかく悔いを残さないように」って言われました(笑)。ゲームには、文字入力を使った言葉のミニゲームがいろいろあるんですけど、あんまりやり込み重視にしないで、1回クリアして飽きたら、それでいいし。とにかく最後まで遊んでもらえればといったレベルになってますね。
――では、キャラありきという感じで。
横尾:そうですね。『太鼓』(※2)のときはゲームありきというか、もともとアーケード畑の出身なので、キャラとかストーリーを決めてから作るというよりは、その場のノリで必要な要素として、キャラを作るという順番で作ってましたけど。『みずいろ』(※3)の場合は、キャラや世界観があって、それにあったゲームをという形で、いつもとは逆だったんで、試行錯誤はいつもより多かったですね。

――キャラをデザインされる際にこだわったところとかはありますか?
横尾:ロボっていうのは必須でしたね。スッパリ斬られても大丈夫だというところで(笑)。あと当時のプロデューサーがガンダム系の部署だったので(笑)。ガンダムのパロディっぽいのとか入れられればと思ったんですけど、やはり一切ダメでしたね。
――ニンテンドーDSで発売するというのは最初から決まってましたか?
横尾:一番旬なハードでしたし、とにかくそのときのベストを尽くしたいというのがあって。あとDSで、ちょっとブラックなノリのゲームがなかったので、その辺りをチャレンジできればと。チャレンジかつヒールな存在でいられればなと(笑)。
――タイトルはどんなところから来てるんですか?
横尾:これは歩きながら考えたんですけど……。最初は小学生の女の子向けに考えてて、女の子に一番人気の色が水色なので、みずいろはまずあるだろうと。それで「ブシュッ」ってなるからブラッド(笑)。ただ子ども向けでは制限が多く世界観を最大限に発揮しきれないので、ターゲット層をあげてますね。トンがったものに惹かれる20前後の女性をメインに、さらに自分と同世代である30代半ばあたりの方々までをターゲットにしてます。そのぶん、のびのびと作れましたね。
――お話を聞く限り、苦労がなかったように思えるのですが、何かありましたか?
横尾:スゴイありましたよ!(笑)。まず企画を通すのが大変でしたね。時間もかかりましたし、最近の中では一番社内の審査受けてますよ。あとバンダイさんと統合して即バンダイサイドプロデュースで進めたので、手続き的にバタバタとしていました。バンダイ側もナムコ内部製作を使ってのプロデュースが殆どなかったので、それでお互い苦労した感じで。
――社内的に苦労されたと。作業的には?
横尾:作業的には絵がスゴく多かったので、こなすのが物理的に大変でした。スタッフも全部で10人いないぐらいと少なかったですし。途中で「予算ないけど、2人ぐらいスタッフ増やしてください。締め切り間に合わないので」ってお願いしたり。プログラマーの方が優秀な人だったので、その人がいなかったら、組み上がらなかったんじゃないかな。

――かなりご苦労があったようで……。少しお話が戻るんですが、キャラを作る際のこだわりなどはありますか?
横尾:自分の好みも入れつつも、誰が見てもひと目でパッとわかるような説明の少なくてすむモノにしないとなぁとは思ってます。由来がわかりやすいものにしても、形がプリミティブ(単純、シンプル)で、要素を細かくそんなにいれないで、色なんかもシンプル。複雑でなく、パッと見てわかるモノを目指してますね。ごちょごちょしてるのは嫌いですね。
――昔からごちょごちょとしたモノはあんまり好きでなかったですか?
横尾:好きであったような気もするんですけど、そんな熱心に好きでもなかったような気が……。大学のときに「ウゴウゴルーガ」(※4)が始まって、それ、結構カルチャーショックだったかもしれない。影響受けてるかと。あと「ゴールデンラッキー」(※5)。
――「GOLDEN LUCKY」はわかりやすいかもしれませんね。セリフがまったくないやりとりとか。
横尾:あの間とか、アニメーション的な手法とか。入社仕立てのときに「GOLDEN LUCKY、好きでしょ」って言われましたもん。
――さて、そろそろお話をまとめていきたいのですが、ゲームに限らず、今後やってみたいこととかはありますか?
横尾:世間をざわざわさせるようなモノを作りたい。万人受けするようなものではなくて、「えっ? マジで?」みたいなモノを。『みずいろ』で自分の特性というか、自分の役割として、そっちかなってのがわかったので。子どもの頃からの情報発信型というのもあるんですけど、自分から世間へアプローチする立場になりたいなぁと興味が沸いてます。今やネットで世界とも繋がっていますし、主に絵的な部分で世界の人々を驚かせるように、「なんだろうコレ!」と思わせられるようになりたいですね。
――最後に未来のクリエイター、デザイナーを目指す人にひと言。
横尾:「好きにして良い。」ですかね。基礎であるデッサン力や色のセンスが磨か
れていれば。なんかしなきゃとか考えない方がいい。それさえ身についていれば、結構どうにでもなるし。それよりも、そのときにしか体験できない充実した素晴らしい日々を送ってください。うちの採用の人たちも言ってるんですけど、別にCGの知識とかなくってもいいって。入ってから覚えられるから。実際うち(ナムコ)は油絵出身の人が多いですね。後輩の女の子なんかは、モニターの横にポストイットで「IEはインターネットエクスプローラーのこと」って書いてるような子もいましたし(笑)。そんな子が来てるぐらいなんで、ゲーム好きであってほしいですが、自然と好きであってほしいですね。
――お忙しい中、ありがとうございました!
基礎をかためて
あとは気の向くまま自由に!
【編集部注釈】
※1 中野……東京都の街。コンサート会場として有名な中野サンプラザや、まんだらけといったオタク的なお店が集まった中野ブロードウェイなどがある。

※2 太鼓……2000年にナムコがアーケードで発表した和太鼓をモチーフにしたリズムゲーム。バチで太鼓をタイミングよく叩くだけとシンプルなルールで、幅広い年齢層に人気がある。通常は1人1つの太鼓を叩くのだが、1人で2つの太鼓を叩く(2Pモード)強者も秋葉原などには存在する。
※3 みずいろブラッド……6月14日に発売された横尾さんがキャラクターデザインなどを手掛ける、即死系ハチャメチャラブコメディゲーム。
※4 ウゴウゴルーガ……1992年10月から1994年3月まで、フジテレビ系列で放送されていたテレビ番組。当時としては珍しいCGを多用した番組で、シュールなギャグやミカンせいじんといった個性的なキャラなどで人気を呼んだ。
※5 GOLDEN LUCKY……ゴールデンラッキー。週刊モーニングで連載されていた榎本俊二さんの4コマ漫画。シュールな世界観と、独特なテンポでカルト的な人気を誇る。