

英才教育や寮生活など、抑圧された環境ながらも、遊びに貪欲(いい意味で)で自分の道を突き進んできたという石渡太輔さん。その前向きな姿勢は、クリエイターを目指す人間にはなくてはならないもの。インタビューから彼の物づくりへの情熱やこだわりをひしひしと感じとってほしい。書き込まれた履歴書の好きなゲームの欄も必見!!
――ゲームと音楽の両方を学ぼうということで、アミューズメントメディア総合学院入学。そして、95年にアークシステムワークス入社ということになるのですが、入社のきっかけというのは?
石渡大輔(以下石渡、敬称略):アミューズメントメディア総合学院は本来2年間なんですが、1年就学して、途中でうち(アークシステムワークス)のバイト募集広告を見て、「行く行く」と。当時は現在の代表取締役とは違うんですけど、彼が面接官で複数での同時面接だったんですよ。そのときに僕は恐れを知らなかったのか、原稿用紙2枚ぐらいにしかキャラを描いてなくて、「これ、僕の作品」って持ってったんですよ。そしたら「お前、向こうの部屋に行ってって待ってろ」と、1人連れてかれて……。「やっぱり落ちた!」って思っていたら、ひと通り全員の面接が終わったところで、「お前、明日から来て」と代表取締役に言われて「ラッキー!」。現在に至ると。どうも、反骨精神あふれるところを買われたみたいです。
――入社したての頃はどんな作業をされてたんですか?
石渡:まず最初はツールになれる作業をしてましたね。ちょうど『ウィザーズハーモニー』(※1)というゲームの開発が始まった頃だったので、デバッグだの、ドット絵だの、着色だのってお手伝いをやってました。そして、そんなことをやりつつ、学生時代から暖めていた格闘ゲームの企画書をずっと書いてましたね。企画書は10枚前後が理想なんて理論はありませんので、商品展開にいたるまで、束になるほど書きまくってました。夢広がリング(笑)と。それが1年ぐらい続きましたね。
――その企画書というのが『ギルティギア』なんですよね? 開発することになった経緯というのは?
石渡:これが結構深い話で……。当時、企画書は何度か見せてたんですけど、「はいはい、いつかね、いつかね」という感じで。そうこうしている内に、人の出入りが激しくなってきまして。そんな状況で社長に、「僕は行くのも残るのも自由。この企画のゲームが作れるんだったら、残るよ」と言ったら、「じゃ、作れば」、「ありがとうございます!」と。それで作ることになったんですよ(笑)。
――深い話ですね……。すごく大変なことだったとは思うんですけど、そこが石渡さんにとってはチャンスになったわけですね。でも、ゲームを作ろうと思ったら、人がいないとダメですよね。
石渡:そうですね。だから、まずは人集めからでした。アミューズメントメディア総合学院の先生に頼んで、安く使えるプログラマーを探してもらったりしました。外注のアニメーターさんについては把握してないんですけど、うちのスタッフに関しては5人で作ってましたね。
――やはりつらかったですか? 何か思い出はありますか?
石渡:泊り込みの作業もありましたし、体力的にはつらかった部分はありましたが、作りたいものが作れるということで楽しかったですね。ただ当時はトンガってまして、アニメーターを起用して、キャラのパターンの原画を描いていたんですけど、そのデキが納得できなくて、非常に憤慨しながら作っていたのは記憶にあります(笑)。
――開発では何を担当されていたんですか?
石渡:デザインのすべて、ドット絵も描きました。音楽をMIDIで作曲して、音楽会社でレコーディングに、マスタリングにいたるまで管理。物語も考えて、あとシステムも。
――ほぼすべてじゃないですか?
石渡:そうなりますね。だから、スタッフロールを見るとかなり楽しいことになりますよ。曲は3分近くあるんですけど、関わってる人間が少ないので、役職だけはたくさん出てきて、出てくる名前はみんな同じ(笑)。
――ソル(※2)の声も石渡さんが担当されてますよね。
石渡:もともとは山寺宏一(※3)を起用したかったんですよ。でも、予算的な問題がありまして、他の声優さんが使えなくなっちゃうということになって、どうしてもここだけは押えておきたいという声優さんをできるだけ人数そろえる形で起用させていただいて。それで残ったキャラをスタッフでやるしかないよねという話になって、最終的に主人公のソルが残ったので、僕がやることに。
――話は前後しますが、そもそも『ギルティギア』のような格闘ゲームを作ろうと思ったきっかけは?
石渡:『ギルティギア』を作ろうと思ったきっかけは、学生時代の感性なんですけど。そもそも格闘ゲームが大好きだったんですよ。それで『ストII』(※4)や『飢狼伝説』(※5)とかを夢中でやっていて。ただ、「もっと自分好みのキャラ、世界観でやってみたい」と。そういうのをとにかく形にしたいと思ってたんですよ。そして剣と魔法の世界を舞台に、芯のあるストーリーラインの中で、ドラマを持ったキャラ同士が戦うものを表現したいというのもあって、この作品に至るといった感じですかね。あとこれは家庭用ゲームなので、やりたいことは詰め込もうということで、ずっと疑問に思っていた、なぜダウンしている相手に攻撃が当たらないのかとか。あと漫画などではキャラが空を飛んだりしますが、そういったアクションは表現できないだろうかなど、ゲームありきというよりか表現ありきで、爽快感や疾走感を前面に押し出した格闘ゲームを作りたくて作った作品になりますね。
――次に『ゼクス』(※6)へと続くわけですが、その経緯というのは?
石渡:初代が終わった直後は、「いずれアーケードでもやりたいね」という話は出てたんですけど、そのときは発売できてよかったよかったという話で終わりまして。その後は海外の大学生から文化祭の出演のオファーなんかあったりして出演したり、ブラブラしてたんですよ。そうしたら、アミューズメントメディア総合学院のときの友だちが会社を立ち上げて、『ギルティギア』をドリームキャストで移植するという仕事を考えてるんだけど、「くれないか」って話がきまして。その際にどうせ移植するんだったら、そのままのものをドリームキャストに移植しても、いいクオリティのものにならない。だったら、作り直したほうがいいだろうということになって、当時仲介にサミーさんがいらして、どうせだったら、アーケードでも出さない?ということになったのが『ゼクス』開発の経緯ですね。
――アーケード作品ということで開発の苦労はありましたか?
石渡:『ゼクス』では、ワンコインで人を楽しませて、さらに次へつなげていかなくちゃいけない。そういうゲーム作りを初めて考えたので、ここでひと皮むけた感じですね。『ギルティギア』の場合は家庭用なので、多少バランスが悪くても友だち同士なら「この技、禁止な!」とかで終わるんですけど、赤の他人が対戦するアーケードの場合はキャラのバランスが悪いと遊ばれなくなってしまう。それは僕らにとって不名誉なことだという話で、非常にロジックというものを意識しましたね。当時、初代の感覚を引きずっていた僕に対して、シリーズ作の音楽プロデューサーを担当している鈴木君がその辺りに非常にシビアな目を持ってまして。僕の感性と、彼のゲームというもののロジカルな思考とがぶつかり合いながら、お互いのいいところを取り合って、『ゼクス』ができたという感じですね。
――その後のシリーズ作では、どんな関わり方で。
石渡:『ゼクス』後は、『イグゼクス』と『リロード』(※7)にはバリバリ同じような形で関わってましたね。南阿佐ヶ谷に開発会社がありまして、そこへ出向という形で作ってました。1年半ぐらい入り浸りで、実家にも帰らず泊り込んでやってましたが……。それ以降の作品からはさすがにそこまで深く開発実務に携わっていません。ただ、ほとんどの作品の絵と音楽、監修業務はずっと担当してます。
――細かいモノもあわせると、13タイトルもシリーズ作が発売されてますが、生みの親として、どう思われますか?
石渡:ファッキンですね(爆笑)。正直育ったという意味では、とても名誉なことなんですけど、いかんせん引っ張り過ぎなので(笑)。ただ、こうしてシリーズが続くことで、新しい世界が広がったり、新しい世代のファンがついてくれたりすることも、誉れ高いことだとは思います。
――『ギルティ』シリーズの魅力の1つに、深い独特な世界観が挙げられると思うんですけど、世界観などのアイデアを出すヒケツというのは?
石渡:ないですね。捻出しているだけですね。とにかく考えて考えて、思いついた! といった具合ですね。
――何か影響を受けた漫画や小説を参考にしてといったことは?
石渡:一番最初の発端は学生のときなので、影響をされたものとか、当時溜め込んでいたものとかを、表に出したいという気持ちで動いてましたけど、最近は方向性がフィックスしてきて、世界観のネタとか、設定とかは後付、考証でどうにでもなる。最も大事なのは、キャラクターごとに背負っているテーマをどう分配していくか。例えば、僕自身が考えている正義というもの対して、安楽死というものがアリなのかナシなのかと考えた場合、僕はどちらも肯定できる自分がいるんですよ。そういった考え方の違いを、別々のキャラクターに分配する。で、そういったときにどういった結論をドラマで生むのかを考えて、どんな舞台が必要か、どのような容姿なのかなど、より具体的なキャラクターを作っていってます。
【編集部注釈】
※1 ウィザーズハーモニー……セガサターンやPSで発売された、剣と魔法のファンタジー世界を舞台にした、育成SLG。『2』も発売されている。
※2 ソル……『ゼビウス』の隠しキャラではなく、『ギルティギア』シリーズの主人公であるソル・バッドガイのこと。

(C)NBGI
※3 山寺宏一……山ちゃんの愛称でおなじみの人気声優。アニメやゲーム以外に、洋画の吹き替えなども数多く手掛ける。奥さんは声優のかないみか。
※4 ストII……カプコンの『ストリートファイターII』のこと。
※5 飢狼伝説……SNKがアーケードとネオジオで発売した対戦格闘ゲーム。シリーズも数多く発売されている。
※6 ゼクス……『ギルティギア』シリーズ第2作目の『ギルティギア ゼクス』のこと。
※7 イグゼクスとリロード……『ギルティギア』シリーズ第3作目の『ギルティギア イグゼクス』と、『ギルティギア』シリーズ第4作目の『ギルティギア イグセクス リロード』のこと。