電撃オンライン

電撃ドットコム > 電撃オンライン > 電撃ゲーム学院 > クリエイターインタビュー『人生行路』5月号 第2回

クリエイターインタビュー:『ギルティギア』シリーズの生みの親 石渡太輔(いしわたりだいすけ)さん

お話を聞いた人→『ギルティギア』シリーズの生みの親 石渡太輔(いしわたりだいすけ)さん

 英才教育や寮生活など、抑圧された環境ながらも、遊びに貪欲(いい意味で)で自分の道を突き進んできたという石渡太輔さん。その前向きな姿勢は、クリエイターを目指す人間にはなくてはならないもの。インタビューから彼の物づくりへの情熱やこだわりをひしひしと感じとってほしい。書き込まれた履歴書の好きなゲームの欄も必見!!

クリエイターの生い立ちや趣味趣向を知れば、アイデアや発想のヒミツがわかっちゃうかも…!? ゲーム業界の第一線で活躍する敏腕クリエイターに、その華麗なる生き様について突撃取材。未来のクリエイター必見のインタビュー集。5月は『ギルティギア』シリーズの生みの親 石渡太輔さん。

第2回 クリエイティブ魂が開花した浪人時代

――かなり楽しそうな高校生活を送られたようですが、その後は?

石渡:「大学受験をしろ」と親が言うわけですが、僕はもっぱら専門学校に行くつもりで。そっちに行きたいと話をしていたわけですが、どうしても大学受験をしてくれということで、2年間ぐらい浪人生活を送っていました。それで行くんだったら、映像学科のある大学をと思って受験したんですよね。そしたら、1つ以外はことごとく落ちまして……。まぁ勉強もしてなかったですし。典型的に親に対してはダメなんですけど、自分たちには充実した浪人生活を送ってまして(笑)、仲間たちと遊び歩いてましたね。親不孝だったとは思いますが……。

――どんな遊びをしてたんですか?

石渡:ちょくちょく隠れてバイトはしてましたが、お金は明らかにないんで。仲間と集まって、横浜のハンバーガーショップに入り浸って、1杯200円のコーヒーを3人で1日中回し飲みしながらダベったり、創作活動的なことを広げたり。それで仲間うちのなかで、テーブルトークゲーム(※1)みたいなものを流行らせてるヤツがいて、自分たちでなんかそういうゲームを作ろうという話になって。シナリオやゲームをよく考えたりしてましたね。

――創作活動としては、テーブルトークゲームがメインで?

石渡:そんなことはないですね。漫画だったり、小説的なところだったり、創るということにとにかく飢えてましたね。お金がないので、機材もなく、紙がリソース的にはメインで。

――小説や漫画も書かれてたんですか?

石渡:書きましたね。当時はラブコメ的な小説を(笑)。漫画も漫画用紙みたいなものは高いんですけど、買って描いてました。これが結構イタイ漫画なんですけど(笑)。

――どんな漫画を描いてたか聞いてもいいですか?

石渡:バトルものが中心でしたね。かっこいいものが好きだったんで、とにかくかっこいいものじゃなきゃイヤだというクチだったんですよ。で、典型的な車田正美(※2)で育ったタイプだったんで、男の美学的なところが強かったですね。とにかく男くさくて、かっこいいものが作りたかったんですよね。例えば、自分の分身である主人公のキャラクターは女であるわけがない! というクチだったんですよ(笑)。

――その頃の活動というのは、今現在役に立っているところもありますか?

石渡:まぁ具体的に何が役に立っているという気はしませんけど、そこでモチベーションをつなげていたんではないかなと思います。あんまり寄り道してませんからね、浪人時代もそんなことをしていたわけですから(笑)。

――浪人時代以前も、何か創作活動みたいなことはなされていたんですか?

石渡:漫画みたいなものを授業中に描いてましたね。で、中学の頃に不良に取り上げられて、「こいつ、漫画なんか描いてるぜ」、「なんだ……やめろよー」みたいな感じになってるところを、転校してきた不良の人がいまして、そいつが助けてくれたんですよ。それで最後に「おまえ、絵がうまいな」って言ってくれて(笑)。

――かっこいいー!!

石渡:そんなかっこいいヤツがいまして。まぁそいつはまたうちの中学で問題を起こして、転校して行っちゃったんですけどね(笑)。そうですね、だから、キン肉マン(※3)とか、車田正美とか、あと最初だと、ガンダムとかに影響を受け、絵を描こうと思い始めて……。ジョジョ(※4)とかを読み始めたあたりから、アイデンティティを確立してきた感じですかね。

――ゲームと平行して、中学時代から漫画にも影響を受けていたと。

石渡:そうですね……いや、でも、どうなのかな。幼稚園の時の卒業アルバムを見ると、そこの表紙にロボットとか、潜水艦の絵を描いてるんですよね。何の影響かはわからないんですけど。幼稚園児のクセに、稚拙ではあるんですけど、潜水艦の断面図とかが描いてあって(笑)。それ以前にも漫画や本にハマッてたのかもしれませんね。

――潜水艦の断面図とは本格的ですね(笑)。子供の頃から創作魂みたいなものがあって、それが浪人時代に開花したという感じですかね。では、浪人時代後は?

石渡:大学は1つは受かってたんですけど、面接官が気に入らなくて、面接の途中で出てきちゃったんで。それでやっぱり専門学校に行かせてくれよという話になって、アミューズメントメディア総合学院へ。

――アミューズメントメディア総合学院を選んだ理由というのは?

石渡:僕はゲームを作るのなら、1人で全部作りたいとずっと思ってまして。それで絵を描いて、音楽を作って、プログラムを組むことを目標にしようと思った時に、そのすべての項目をカリキュラム的に教えてくれるのが、アミューズメントメディア総合学院だったんですよ。特に音楽の道も同時に目指したくて、音楽があるのはいいなと。でも、僕、一期生なんです。今は、しっかり教育も確立していて、入社してくる後輩や先生たちもしっかりしてるんですけど、僕は一期生なわけで(笑)。つまり創立まもなかったので、講師陣も少し模索しているような段階だったんですよ。それで行ってみたら、音楽の授業がなく……。プログラムの授業も習ってみたものの、カレンダーのプログラムを渡されて「打ち込め」と。「打ち込むと何かいいことがあるのか?」、「とにかく打ち込まないと話が始まらないから」。考えがあってのことだったんでしょうけど、そのときの僕は自分がやりたいことをどうやれば実現できるかのルートをとにかく知りたかったので、そんな授業に悩みながら学生生活を送ってました。ただそのなかで、すごくいい友だちができまして、非常に絵のうまい子で、その彼にいろいろ教わったんですよ。絵って何かというものを。そのとき、僕はとにかくかっこよくて、既存のあの作品に近い絵が描きたいという考えだったんです。でも、その彼は自分の絵っていうものを大事にしようとするクチで。「何でこう考えるだろう」ってところから興味をひかれて、いろいろ勉強させてもらいました。だから、1年間はほぼ彼から学んだようなものでしたね(笑)。あと当時スキルは認めてなかったんですけど、独創的なドット絵を描く人がいまして。彼は、僕の目指すかっこいい絵柄ではないタイプだったんですよ。でも、どうみてもうまい。「こいつにも負けたくない!」と。会社に入ってから『ギルティギア』を作るまで、僕は物事は白黒をつけないとすまないB型だったんですよ。口論でもつねに僕が優位に立った状態で終わらないと気がすまない(笑)。専門学生時代は、そんな仲間に勝ちたいという気持ちを力に、切磋琢磨しながら学んだといった感じですかね。

――話が重複してしまうかもしれませんが、ゲームを作ろうという気持ちがあって、アミューズメントメディア総合学院を選んだのですか?

石渡:先ほどもいいましたが、もちろん、ゲームを創りたいと言う気持ちは強くって、さらに音楽の授業があるというのがポイントで。ゲームを作るという作業工程の中で音楽の勉強もして、ひと通りスキルが身についたところで人生の岐路をみつけようと考えていたんですよ。でも、残念ながら、音楽の授業がなくて……(笑)。それで「ひどいじゃないか!」「なんとかしてくれ!」と、、毎日職員室に押しかけてましたら、先生が哀れに思ってくれたらしく、僕がX68000(※5)を持っているのは知っていたので、それ用の音楽作成ソフトをくれまして。それで作った曲が初代『ギルティギア』の曲に使われてますね。

――音楽制作の活動というのは、これ以前にはやられていたことはあったんですか?

石渡:いわゆる楽器を学んでとか、音符を読んでというのはなかったですね。ファミコンの『デザエモン』(※6)というソフトがありまして、あれでずっと曲を作ってためてたんですよ。12小節ぐらいしか作れないんですけど(笑)、「音楽最強に楽しい!」って。

【第3回(6/7更新)に続く】

【編集部注釈】

※1 テーブルトークゲーム……テーブルトークRPGのこと。対話式のゲームで、実際にコマやサイコロなどを使って遊ぶ。テレビゲームのRPG同様、架空の世界を舞台に各プレイヤーになりきりプレイするのだが、ゲームを管理するGM(ゲームマスター)と対話。プレイヤーが考えたキャラクターの行動が実現したか否かをGMが判定するため、ゲームの展開の自由度が高い(例:テレビゲームでは氷の壁を物語の流れ上、炎の魔法では溶かせないが、テーブルトークRPGではGMが可能と判断すれば氷の壁を炎の魔法で溶かすことができる)。あらかじめパッケージングされたタイトルを遊ぶ以外、自分たちでシナリオや設定などを考えて遊ぶのもテーブルトークRPGの魅力の1つと言える。

※2 車田正美……くるまだまさみ。「リングにかけろ」や「聖闘士星矢」などで知られる漫画家。作品はもちろん、ギャラクティカ・マグナムやペガサス流星拳といったキャラが使う技名なども社会現象となる。

※3 キン肉マン……1979年から週刊少年ジャンプで連載されていた、漫画家ゆでたまごのデビュー作であり、代表作。アニメやゲーム(ファミコン版ではブロッケンjrの取り合いになった)などにもなり、現在では「キン肉マン2世」が連載されているなど、未だに根強い人気を誇る。

※4 ジョジョ……漫画家・荒木飛呂彦の「ジョジョの奇妙な冒険」の作品のこと。緻密な描き込みや物語はもちろん、キャラクターの独特なポーズなどでも人気。

※5 X68000……1987年にシャープが発売したコンピューター。美麗なグラフィックの『グラディウス』に当時多くのゲームユーザーが驚いた。

※6 デザエモン……ファミコン用ソフト『絵描衛門』のこと。スーパーファミコンやPSなどでもシリーズ作が発売された、シューティング作成ソフト。自機や背景などのグラフィック以外に、音楽も作成することができた。