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2009年1月24日(土)

【『フラジール』インタビュー】描かれたのは、セトの失われたけど確かな記憶

文:電撃オンライン

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■猫の集会、これはいかん(笑)

『フラジール』

――ドラマについていろいろとお話を伺いましたが、皆さんのお気に入りのシーンを教えてください。

川島:んー……自分でお気に入りのシーンを言ってしまうのもアレなんですけどね。くだらないシーンは好きですよ、猫の集会してるシーンとか。あの猫の集会があまりにカワイイので、これはいかんと(笑)。

原田:シーンじゃないんですけど、個人的な好みとしてはスタッフロールです。見てて気持ちがいいんですよね。曲とすごくマッチングしていて、手嶌葵さんの曲と齋藤さんの曲が流れるのですが、あれがもっとも魅力的に聴こえる絵とはまったんじゃないかと思って。そういった意味で好きです。最後までやれって言ってるわけじゃないですけど(笑)。

川島:ぜひ最後までやってください(笑)。

齋藤:女の子が母親に再会するシーンは泣けました。あとアイテム屋は好きです。

安井:実は全シーンを見ていないんですよね。「ここ直しておけば」みたいのが見つかるとかなりアイタタタ……なので、怖くて見られないんですよ。逆に見てるシーンは何十回でも見ているのですけど。

川島:すごいウソついてほしいですよね。「そんなシーンあったっけ?」っていう(笑)。

安井:遊園地の観覧車が壊れるシーンとかですか?(笑) まあ、勘弁してくださいって言ったシーンなんですけど。

――そんな予定があったんですか!?

安井:一時期そういう話があったんですけど、その上を歩けようにするのは大変なので勘弁してくださいと(笑)。ということを考えると、遊園地のクロウを追い詰めた後、クロウが落ちてしまうシーンですかね。この辺は、大掛かりなギミックをやらなくてもちゃんとできるんだなという意味で安心しました。


■地図にまで演出のこだわりが

『フラジール』

――話はちょっと変わりまして。手帳の中の文字や地図がセトの手書きになっているのですが、何故ああいった地図にしようと?

原田:手書きにしようと思ったのは、記憶の中をもう1回ゲームで体験しているみたいなのがあるので、ああいったアイテムの確認やステータスの画面も曖昧(あいまい)な感じを出したいと思ったからです。なので、かっちりした線やフォント使うのではなく、鉛筆書きとかそういったものを採用しようというのが最初からありました。

――実際にセトの手書き地図が埋まっていくのを見るとおもしろさはあるのですが、機能性を考えると普通の地図とは……。

原田:逆に捨ててしまったというのが正直なところで、あそこは機能性とまったく関係ない地図ですね。猫のシールがはられていくとか、セトが情報を覚え書きして楽しんでいくという画面で、あとから参照する画面なんです。実際には、普通の探索の画面で左下に周辺を表示した地図が出ているので、あれでいいかなと割り切ってしまいました。


■「言いたいことが言える」がいいものを作るコツ

『フラジール』

――ところで、トライクレッシェンドさんのスタッフともご一緒に取材へ行かれたようですが、ゲーム制作でそういったことはめずしいのでしょうか?

川島:僕の見聞きした範囲では、あまりないですね。すごい細かいことまで僕らが言う、というのは完全に内製の企画でしかなくて、『フラジール』では言いたいこと言えていい作品ができたなと思います。大変だったとは思いますけど(笑)。

安井:『バテンカイトス』の時はすごく仕事がきっぱり分かれていて、こうやって組む形でやるのはこちらも初めてでした。ストレスなくやれたと言っていただけたのなら、こちらとしてもよかったです。

川島:ありがとうございます。

――開発者ブログなどを拝見しても、すごくコミュニケーションをとられていますよね。

川島:言いたいことを全部言わないと、いろいろたまっていきますし。逆に腹の中に収めて、誰かが苦労してためたままだと、その人がつぶれてしまう。「全部言ってよ、こっちも全部言うから」という状態に、いかに早く持っていくのかがゲームを作るコツかと思います。

安井:ウチとしても、本格的に動いてから週に1回ミーティングしましょうという話になって、それからすごくスムーズにいくようになりましたね。

川島:結果的に何がうれしいかというと、いいものが上がってくるのが一番うれしいので。そういった意味で、今回ご一緒させていただいたのは、すごくよかったと思います。作っている期間中はすごく楽しかったですよ。

――開発者ブログにも、お祭りみたいな時間と書かれていましたよね。

川島:好きにやらせてもらえた、というのもありますし。会社としてそういう体制を作ってくれたのもありがたかったですけど。制約なくやれたのでよかったと思います。

――安井さんは大変だった時間を思い出されているような顔をなされていますね?

川島:言ってくださっていいですよ(笑)。

安井:……はい(笑)。今回、こちらとしては結構な作業の量になったので、みんな振り返ると、大変だったなあという振り返り方なってしまうと思うんですよ。でもみんな結局乗り切れたので、これがホントにつらいだけの仕事じゃなくてよかったなと。そのモチベーションの高さが、マップとかに出ていると思うのですけど。

川島:ああいうのって、うれしいんですよね。どうでもいい部分にすごくこだわっていると、ものすごくうれしいですもん。


■「努力は絶対に裏切らない」という確信

『フラジール』

――『フラジール』の制作を終えて、ご自分の中で変わったことはありますか?

齋藤:廃墟ってすごいなと思いました。このゲームに出会うまで、あまり廃墟って意識しなかったんですが、想像したものを受容してくれるものなんだなって感じました。廃墟をテーマにして、リアルさを追求した一方で、ポーキーみたいにかわいいファンタジックなものもいて(笑)。廃墟って懐大きいなってちょっと感動しました。この『フラジール』でできなかったことを自分で吟味して、そこを勉強してみたいと思っています。

安井:こっちは仕事を請ける側として、オーバーワークだったら断らないといけない立場ではあるんです。なので最初、デモシーンとか「こんな物量請けられないよ」という話もしました。でも結局、上がってくるモーションとかもすごくて、僕も実際にデモが再生されるようになったら、すごいと思ったので、あまり断るよりもクオリティが上がるなら請けてしまったほうがいいのかなと(笑)。というわけで、わりとオーバー気味に引き受けたのでしんどかったんですが、クオリティの高いものができたのでよかったなと思っています。

原田:“妥協は死”という語句があって、トライクレッシェンドさんの開発の姿勢もそうですし、OPムービーをお願いした神風動画さんもそうですし、妥協はしないで開発をしていく姿勢にものすごく触れることができました。それで結果的に、いいものができ上がってくるというのを目の当たりしながら一緒に開発ができたので、そういう意味で自分は勉強できたなと思うし、これからもそういう姿勢でゲームを作ることができたらいいなと思いました。

川島:あまりシリアスなこと言いたくないなあ(笑)。確信したのは、ひと言にしたら「努力は絶対裏切らない」ってことです。よくしようと思ってちゃんと頑張るとか、ここであと2時間粘ったら何とかなるんじゃないかとか、そういったところで楽をしない方が、最終的には納得もできますし、自分に返ってくるのだと感じました。楽をするとそれだけ何かを損なうんだというのもよくわかって。それをいつも思っているんですが、今回は特にそれが強くて、粘って粘っていいものを作るという意味ではよかったなと思います。これからもそうやって作らないといけないな、というのは再認識&確信しました。

――ありがとうございました。

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(C) 2009 NBGI

データ

▼『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:Wii
■ジャンル:RPG
■発売日:2009年1月22日
■価格:7,140円(税込)
 
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