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2007年12月14日(金)

『ライラの冒険』原作映画の監督ワイツ氏と“ライラ”役ダコタさんにインタビュー!

 セガは、DS/PSP/PS3/Wiiの4機種で新作ソフト『ライラの冒険 黄金の羅針盤』の発売を2008年春に予定している。

 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は、2008年3月1日に全国ロードショーする同名映画を原作としたゲーム作品。もともと米国では、Sega of Americaが12月4日に『THE GOLDEN COMPASS』というタイトルで、PS3、Wii、Xbox 360、PS2、DS、PSPの全6機種で発売しており、今回日本でも発売されることが決定した。
 このたび、東京都千代田区の「ザ・ペニンシュラ東京」で、映画版の監督クリス・ワイツ氏と、ゲーム版のプロデューサー長谷川氏との対談が12月13日に行われたので、その模様を以下に掲載する。



長谷川氏:普段、プライベートでゲームを遊ばれますか?

ワイツ監督:仕事がある時はなるべく遊ばないように努力はしているんだけど、実はゲームが大好きなんだ(笑)。時として厳しい現実世界よりも楽しいことが起こるしね。ハマってしまうと仕事が進まなくなるのは目に見えているんだよ。

長谷川氏:ということは、子どものころはゲームで遊んでいたんですね?

ワイツ監督あぁ、もうそりゃあね。アタリとかインテレビジョンとか、そんな頃からずっとだよ。最近だと『HALO』が大好きで、『1』や『2』は、それこそ友だちと徹夜でハマっていたよ。

長谷川氏:相当ゲームがお好きなんですね。

ワイツ監督:ただ、ちょっとしたこだわりみたいなものもあって、例えば『HALO』だったら協力プレイはするけど対戦プレイは絶対しないんだ。負けるとすごく不機嫌になるんでね(笑)。

長谷川氏:ゲーム版の『ライラの冒険』をプレイする機会はありましたか?

ワイツ監督:実はまだ完成版では遊んだことがないんだけど、開発途中のバージョンは何度か遊ばせてもらったよ。“イオレク”がオオカミの「ダイモン」と戦うシーンとか、トロールサンドでの“ライラ”のシーンとか。“ライラ”と“パンタライモン”が協力してパズルを解くシーンはよくできているなぁ、と思ったよ。

長谷川氏:映画の初期段階からゲームのプロジェクトも同時に動いていたと聞きましたが。

ワイツ監督:その通り。そして、それはとてもよいことだと思ったよ。ゲームの開発スタッフはよく映画の撮影現場に来ていて、シナリオをチェックしたり、セットのあちこちを歩いて細かく写真を撮ったりしていた。ただ、彼らにはあまり台本にもセットにも縛られないようにしてもらった。オリジナル要素もOKにしたよ。単に映画を再現するだけのゲームなら、あまりおもしろくないからね。

長谷川氏:その話が決まった時はどのようにお感じになりましたか?

ワイツ監督:この話が決まったのは、まだ撮影も始まっていない、プリプロダクションのころだったんだ。そして、それはとてもうれしかったよ。自分の作品が多方面に広がっていくのを見られるワケだからね。それに、(かつて制作にかかわった)「アメリカン・パイ」の時は、ゲーム化なんてあり得なかったしね(笑)。セガからオファーがあった時はうれしかったよ。

長谷川氏:ゲームの制作には、ある程度かかわられたのですか?

ワイツ監督:もちろん私はゲームのプログラムはできないけど、開発スタッフと何回か打ち合わせをしたよ。さっきも話したけど、この映画の肝になる部分をキチンとゲームにも反映させてほしい、というお願いをしたんだ。映画版での“ライラ”には、機転が利いて、賢くて、そして自立心があるという、ある意味子どもにとっての1つのお手本になってほしい、という願いを込めているんだけど、その部分はしっかりゲームに反映されていると思うよ。

長谷川氏:実際にゲーム内では、“ライラ”が大人と会話するシーンでちょっとしたウソをついてみたり、あるいはわざと怒らせたりして、だけどそれによって守衛をドアの前からどけて、その間に“パン”が部屋に侵入したり、とパズル的なシーンがいくつも登場します。

ワイツ監督そこはゲーム版でとてもよくできてる、と思ったよ。実は原作者のフィリップ・プルマン氏は元教師で、子どもの行動にはとても詳しいんだ。だから彼は、子どもがいつも本当のことだけを言わないこと、時にはびっくりするくらいズル賢くなれることもよく知っている。だから、それがゲームでも再現されるのは重要なことなんだ。

長谷川氏:“ライラ”、“ビリー”、“パンタライモン”(の声)など、一部のキャラクターには映画の撮影とは別に、ゲームのための音声録音があったと聞いています。それらをディレクションされる機会はありましたか?

ワイツ監督:いや。だけど音声収録の時までに、子どもたちはそれぞれのキャラクターを自分たちで完全に理解していたので、特に心配はなかったんだ。

長谷川氏:ちなみに、先日インタビューしたダゴタさんが言っていたのですが、ゲームをプレイしていて迷ってしまった時に「右に行って」、「左に行って」と彼女自身の声に指示された時は妙な気分になった、と言っていましたよ。

ワイツ監督:そりゃそう思うだろうね(笑)。

長谷川氏:先ほどもお聞きしましたが、そうするとゲームの開発スタジオに実際に行かれたりはできなかったんですね?

ワイツ監督:残念ながら。とても行きたかったんだけどね。

長谷川氏:ゲームの中で見た要素で、映画に影響を与えたものはありましたか?

ワイツ監督:ゲームの開発スタッフが使っていた(キャラクターにアニメーションを付ける)「Massive」という群集演算ソフトがあったんだけど、これのおかげで映画の中でもとても多彩な表現ができるようになったんだ。例えば映画の中で、100体のオオカミの「ダイモン」と子どもたちの「ダイモン」が戦うシーンがあったんだけど、これをすべて手作業で動かすだけのスタッフがいなかったのが、「Massive」のおかげで実現できたんだ。これは大きかったよ。
 他にも、ゲームではNPCという存在があって、彼らは彼らなりにキチンと行動しているけど、この映画の「ダイモン」たちもそれぞれ独立してそれぞれの「ダイモン」の形に合った動きをしているし、空から降ってくる雪やアクションの時に、はじけ飛ぶ氷の粒などがそれぞれバラバラに動くのもこのソフトの恩恵を受けている。すべての雪を手で1コマずつ動かすなんて無理だよね(笑)。

長谷川氏:ちなみに、2体のクマが戦っているシーンは格闘ゲームを思い出させました。画面上に体力ゲージが見えそうでしたよ(笑)。

ワイツ監督:そうそう、あのシーンはちょっと意識してたよ(笑)。あと、さっきはゲームが映画に与えた、親和性の高い要素の話をしたけれど、映画とゲームで圧倒的に違う部分もある。映画だと、例えば5秒のカットを納得いくまで作りこもうとしたら撮影と編集に2年かかってしまう場合もありうるんだ。だけど、ゲームなら(事前に決められたアルゴリズムにそって動くだけなので)その場ですぐにできてしまうし、気に入らなければちょっとアルゴリズムを変えてやり直せばいい。

長谷川氏:個人的には、原作で読んでいてどんな映像になるのかと期待していた、“ライラ”が「真理計」を読むシーンでの演出は素晴らしいと思いました。

ワイツ監督:実は、あのシーンはもっとシンプルになる予定だったんだ。だけど編集スタッフの1人が、映像が次々にモーフィングするアイデアを出してきて、その後パーティクル(粒子)のアニメーションをさせるプログラムができて、最終的にああいった形になったんだよ。実はこのプログラムは、人間が死んでその「ダイモン」が消滅する時の演出用に作られたものだったんだけど、それがさらに強化されたんだ。ちなみに、「ダイモン」が消滅する時のパーティクルの動きは消滅する直前の動きによってそれぞれ違っているんだよ。

長谷川氏:ゲーム版で、映画ではできなかったことができて満足している部分はありますか?

ワイツ監督:もちろん“ライラ”が大人と話すときに(3択から正しい答えを選んだり、ミニゲームをクリアしたりして)うまく切り抜けるシーンもそうなんだけど、実は2匹のクマが戦うシーンも気に入っているんだ。映画だと、この戦闘のシーンの中に可能な限りのさまざまなショットを入れたり、さらにエフェクトを付けたりしたけど(そのエフェクト付けのためだけにアメリカからロンドンに飛んだCGスタッフもいたほど)、でも完成してしまったらそれまで。だけど、ゲーム版だと戦闘のたびに異なるアングルからシーンを見られたり、戦い方が変わったりするので、新鮮な気分で観られるんだ。

長谷川氏:これから映画の第2部の撮影があると思いますが、当然ゲームの第2部も作られるでしょう。次回のゲームの中でやりたいことはありますか? 特に映画ではできないようなことで。

ワイツ監督:実は第2部には、ゲーム向きの要素があるんだよ。この章には「神秘の短剣」という「今の世界」と「隣りあう別次元の世界」をつなぐ扉を切り開ける短剣があるんだけど、映画だと何回かそのシーンを使ったら終わりになってしまう。
 だけどゲームなら、プレイヤーの意思で好きなタイミングで別のステージに移動できるんだ。そんな機能をもったアイテムは今までのゲームにもないんじゃないかな?

長谷川氏:最後に、このゲームをプレイしてくれる日本のゲームプレイヤーのために、一言メッセージをいただけますか?

ワイツ監督:皆さんこんにちは、監督のクリス・ワイツです。この『ライラの冒険 黄金の羅針盤』のゲームを皆さんに遊んでいただけるのを楽しみにしています。私自身は開発途中のバージョンを遊んだのですが、とてもよくできていましたよ。

長谷川氏:本日はどうもありがとうございました。

ワイツ監督:どうもありがとうございました。(日本語で)


 またこの対談に先立って、“ライラ”役のダコタ・ブルー・リチャーズさんへのインタビューも行われたので、その模様もあわせてお届けする。



――ふだん、友だちや家族などとゲームで遊びますか?

ダコタさん:私はあまりゲーム好き、というわけではありませんが、(ニンテンドウ64の)『ゴールデンアイ』だけは友だちとよく遊びます。

――どんなジャンルのゲームが好きですか?

ダコタさん:具体的に好きなジャンルというのはありませんが、最近だと脳をトレーニングするタイプのゲームはおもしろいと思いました。あと、Xbox 360の『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』も遊びましたよ。

――ゲーム版の『ライラの冒険』をプレイする機会はありましたか?

ダコタさん:はい、少しだけですが遊びました。イギリスでセガ主催のプレスイベントがあったので、そこで。でも、あまり上手にはプレイできませんでした(笑)。

――ゲームの中で自分が登場しているのを見てどのように感じましたか?

ダコタさん:自分自身が画面の中にいるのは奇妙な感じでした。そして、しばらく迷っていたら、ゲームの中から自分の声で次に何をするべきかの指示が出て、これも不思議な感じがしたけれど、おもしろかったです。

――映画の撮影とは別に、ゲームのための追加録音やゲーム中の“ライラ”のモデルを作るための撮影があったと聞きましたが?

ダコタさん:はい、映画の撮影が始まる前でした。特殊なボディスーツを着て、カメラの前でいろいろなポーズを取ったりしました。あと、座っている私の顔の周りを大きな機械がグルッと回って、何かを撮っていたみたいです。顔の撮影が終わってからデータを少しだけ見せてもらいましたが、何だかとても奇妙なものが見えました。
 そして、それが終わってから音声の収録もしました。セリフのアテレコとか、「右に行って、左に行って」などの(プレイヤーに対する)ガイド音声とかです。

――では、ゲーム用素材の収録と映画の撮影はあまり時期が離れていなかったのですね。映画の撮影の一部のような感じだったのですか?

ダコタさん:はい、ゲーム素材の収録からそのまま映画の撮影に入った感じでした。ただ、映画の撮影とゲーム用素材の収録はまったく異なる体験でした。

――ゲームの開発スタジオを訪れたり、開発スタッフと会う機会はありましたか?

ダコタさん:ゲームが半分ほど完成したころ、セガが私と友だちをスタジオに招待してくれたことがありました。開発スタッフがゲームを作っている様子を見ることができましたし、その時はまだ未完成でしたが少しだけゲームを遊ぶこともできました。

――これから映画の第2部の撮影があると思いますが、当然ゲームの第2部も作られるでしょう。映画ではできないようなことで、次回のゲームの中でやってみたい、と思うことはありますか?

ダコタさん:原作では、“ライラ”は異世界への扉を探すのに苦労していたので、自分で自由に作りだせたら楽しいと思います。

――最後に、このゲームをプレイしてくれる日本のゲームプレイヤーのために一言メッセージをいただけませんか?

ダコタさん:このゲームを楽しんでくれたらうれしいです。


(C)SEGA

データ

▼『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
■メーカー:セガ
■対応機種:DS/PSP/PS3/Wii
■ジャンル:ACT
■発売日:2008年春
■価格:未定

■関連サイト
映画「ライラの冒険 黄金の羅針盤」公式サイト
セガ