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2005年2月24日(木)

教育現場でのオンラインゲームの可能性を探る。東京大学で日韓共同研究が始動

 本日2月24日、東京大学大講堂にて「オンラインコミュニティの教育目的利用のための研究」計画説明会が開催された。

 この研究は、市販のオンラインゲームを教育現場でプレイするという実験を通じ、オンラインゲームの教育目的利用の可能性を検証するというもの。研究は日韓共同のプロジェクトとして行われ、日本国内での実験および検証は、東京大学大学院情報学環助教授の馬場章氏が担当する。研究に使用するゲームは、コーエーのMMORPG『信長の野望 Online ~飛龍の章~』が候補に挙がっており、説明会には同ゲームのプロデューサーを務める松原健二氏が出席していた。

 馬場氏によると、現在日本国内でブロードバンド環境が普及している中で、オンラインゲームプレイヤーの増加が注目され始めているという。また、各メディアでは「ネット中毒」など、ゲームやインターネットの負の影響は論じられているが、ゲームの「正の効用」の研究は行われていない。今回の研究では歴史MMORPGが実験に使用されるが、その際に期待できる教育効果としては「歴史学習への意欲の向上」や「オンラインコミュニティ内でのコミュニケーション力の向上」が仮説として挙げられている。馬場氏の研究は、教育現場での実験、結果の検証を通じて、これらの仮説を証明していくことが目的とのことだ。

 具体的な実験方法は、高等学校の学生をいくつかのグループに分けてオンラインゲームをプレイさせるという。オンラインゲーム普及率の高い韓国でも同様の実験が行われ、韓国側の結果との比較なども行われる。日本でのスケジュールとしては、今年10月までには使用するゲームや実験期間などの詳細を決定し、2006年4月以降には本格的な検証実験を開始。2007年10月頃には研究成果の発表が予定されている。

 本日会場には、韓国側の研究者代表として韓国中央大学経営学科助教授の魏晶玄(ウィ・ジョンヒン)氏も出席。韓国との共同研究として進められる今回のプロジェクトは、昨年9月に開催された「CESAゲームディベロッパーズカンファレンス(CEDEC)」において魏氏から提案されたアイデアだという。魏氏は「教育者側が目的意識を持たせてオンラインゲームをプレイさせることで、学生側に明確な効果が出ている」と語り、今回の研究に対しての自信をのぞかせた。韓国では、魏氏の指導の下でパイロットテストが既に開始されている。

 また、コーエーの松原氏は、「オンラインゲームがパッケージソフトと違う点は、その世界の中で“暮らす”ということ。今回、コーエーのゲームが研究に使われるということは、大変ありがたい機会だと思っています。いろいろなゲームを通じて、この研究に協力していきたい」とコメント。コーエーでは、『信長の野望 Online』の他にも多くのシリーズをリリースしており、中国、韓国でのサービス展開が予定されている『大航海時代Online』も研究候補に挙げられているとのことだ。

日本側の研究を担当する馬場氏。研究に市販のゲームを使用することで、オンラインゲーム市場の開拓も視野に入れているという。

魏氏は「ブロードバンド推進協議会」の副部会長も務めており、アジア圏のオンラインゲーム業界についての講演なども行っている。「将来的には、この研究を東南アジアでも行ってみたい」と語っていた。

コーエーの松原氏は「ゲームの影響はネガティブな面が語られやすく、ゲームをプレイして良い刺激を受けたという経験はなかなか認められなかった」とコメント。馬場氏らによって開始される研究に期待を寄せた。


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